見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

街中が、小コンサートホールのプラハの夏

2007-08-26 01:27:35 | 欧州
プラハの夏は街中が小コンサートホールになる。毎日夕方から夜にかけて、街の各所でコンサートが開かれ、人々は弦楽を中心とした古典音楽の調べに酔いしれる。会場となるのは、街に点在する重厚な教会やホールなど。ツーリスト・インフォはもちろんのこと、専用のチケット売り場も観光地随所にあり、曲目は子ども知る名曲ばかり。ターゲットが観光客であるのは明白だ。

ここ数日間に行われるコンサートのチラシを広げてみたところテーブル一杯になってしまった。ちらしには、鑑賞料が明記されていない。ツーリスト・インフォで聞いたところ「このコンサートは450CZK、でも会場の入り口ではもっと安く買えますよ。」と言った。プレイガイドと会場でのチケット料金が違うのだ。例えば、ツーリストインフォで450CZKで販売しているチケットが、会場入り口で400CZK。さらに、当日の開始直前になると、スタッフがちらしを前に通りかかる観光客に声をかける「今、この会場でビバルディの四季とモーツアルトのコンサートが始まります。今なら、学生価格で100CZK値引くので、ぜひ聞いてください。名曲ばかりですよ」という風に。

昼間は歴史的建造物の観光で満喫し、夜は幻想的な音響効果のある教会で、バロックや名曲に酔う。スメタナ、ドボルザーク、モーツアルト、ビバルディ・・・魅力的な作曲家の名ばかりがプログラムに並ぶ。ちらしにも『ベスト・オブ・クラシック』『世界の名曲集』『チェコ・ベスト』などと、にわかクラシックファンを作るに十分な謳い文句を並べている。
どうして毎夜これほど多くのコンサートが開かれるのか。それほど演奏者がいるのか、と訊いたところ、ツーリスト・インフォの若い男性は言った「各オーケストラは夏休み中で演奏会もありません。団員やセミプロにとっては、いい小遣い稼ぎの時期なんです」と。

どれも4~15人の小編成、確かに1時間のミニコンサートにしては、入場料2400円~6000円は安くない。それでも、この夏の時期、バロック建築の教会に響き渡る弦楽器やパイプオルガンの音に全身を包まれるのは悪くない。「かのモーツアルトがプラハを訪問した際、ここで作曲をし、このバロックオルガンで演奏しました」などと但し書きがある由緒ある教会で、モーツアルトが使ったというパイプオルガンの音を聴くと、罪深い自分が洗われたような気分になるのが不思議だ。
夏休みが終了する今月末からスタートするプラハ・フィルハーモニーの公式コンサートより、街角コンサートの方が高かったりするのだが、教会の前で誘われると観光客は足を止める。プラハの観光戦略の勝ち、と感心するしかない。
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