新しいiPhone を手に入れて次女はルンルンで帰ってきます。今日も夕食は私が作ります。娘らは自室でイソイソとスマホのセッティング。真恵子さまは仏頂面でテレビを見ています。やはりご機嫌は悪いようですね。
こんな時は近寄らない事です。黙って夕食の準備に取り掛かります。今日のメインはすき焼き。手早く済ませたいのでフライパンです。あとはサラダ、みそ汁、枝豆、残り物の小鉢。いつものように特に楽しくもない夕食が始まります。
すると真恵子さまが口を開きます。どうも娘らにスマホを買って上げたのが気に入らないらしい。
「あたしには化粧水買ってといっても買わないくせに、なんで買って上げたのよ。」
「買わないとはいっていない。自分で手続きしろといっている。誰が買ったって所詮、私が稼いだ金だ。」
「あんたが稼いだとか言わないで!」
私にとっての伏線はある領収書を見つけた事だった。出窓に積みあげて放置されているレシートや郵便物から、私に関連するものを選別している時(この真恵子さまの性癖のおかげで、いくつも重要な書類をなくしている)、ドライヤーの領収書が紛れ込んでいた、2万円もする高級品だ。
「なに、これ?」
「コロナの補助金が私に出たから買ったのよ!あんたの金じゃないわよ!!」
私の稼ぎではないが、家計に入れるべき金だろうが、そんな事を真恵子さまに言っても無意味。不快な思いをするだけなので、そこで引き下がった。しかし事程左様に真恵子さまは金を自由にお使いになるので、上記の化粧水の話になった訳だ。
で、真恵子さまの攻撃の矛先は長女に向かった。ちゃんと働いてもいないのに、まだ父親にスマホをねだるのか、と。正確に言えば長女にはまだ買って上げていない。手続きが済んでいないのだ。そんな事にはお構いなく「ちゃんと働け」だの「早く家を出ていけ」だのが始まった。バイトをしている娘らと違い、ず~っと家でゴロゴロしているのが一人いるのだが、そこはお構いなし。で、長女が黙っていると
「返事くらいしなさいよ!腹が立つ!!」
ちょっと私がムッとしたので、よせばいいのに口をはさんだ。
「ちっとも働きもせずに口だけなのはあなたでしょ?自分がちゃんとしたら?」
「働けないのはあんたのせいでしょ!あんたが働くなって言ったんでしょ!!」
おぉ、久しぶりに聞いたな、そのせりふ。この時点で娘二人は居たたまれなくなってリビングから二階の自室に移った。真恵子さまの攻撃は続く。
「あんたなんかお母さんの所に住んで世話でもしてやればぁ。いつでもいいわよ!」
あまりに腹が立ったので聞いてやった。
「この先、あなたが言うように娘二人が独立したら、あなたどうするつもり?ここで私と暮らすのか?」
「あんたが出て行けばいいじゃない!」
正直、ホッとしました。真恵子さまと二人だけでこの家に暮らすのは、思い描いただけでも苦痛でしかない。「離婚」とは言いませんでしたが「別居」の可能性はある。私にとっては未来への光明です。
もちろん離婚がベストですが、働く気がなく何の取り柄もない、生活スキルもマルでない真恵子さまが一人で生きていける程、社会は甘くない。仮に真恵子さまが働きたいと望んでも、とてもじゃないがあんな老女を雇う所はないでしょう。すると実家に転がり込むか、あるいは離婚ではなく別居して私に寄生し続けるかでしょう。それを真恵子さまは自分で感じ取っているのでしょう。そこはもう生存本能ですかね。
さて物語は佳境を迎えます。あの言葉を吐いた後、真恵子さまは「キ~~」と言うような奇声を発しながら、すき焼きの入っているフライパンをテーブルに叩きつけたのです。飛び散るすき焼き。そしてテーブルの上のサラダの皿を払い落としました。
私はすんでの所ですき焼きを逃れ、2階に避難しました。その後、真恵子さまがどうしたか、知る由もありません。翌朝、起きてリビングに降りた時には、すき焼きは掃除されていましたが、臭いが残って酷い有り様でした。
次女が大学を卒業するまであと3年たらず。それが別居のタイミングでしょう。
待ち遠しくて仕方ない。
こんな時は近寄らない事です。黙って夕食の準備に取り掛かります。今日のメインはすき焼き。手早く済ませたいのでフライパンです。あとはサラダ、みそ汁、枝豆、残り物の小鉢。いつものように特に楽しくもない夕食が始まります。
すると真恵子さまが口を開きます。どうも娘らにスマホを買って上げたのが気に入らないらしい。
「あたしには化粧水買ってといっても買わないくせに、なんで買って上げたのよ。」
「買わないとはいっていない。自分で手続きしろといっている。誰が買ったって所詮、私が稼いだ金だ。」
「あんたが稼いだとか言わないで!」
私にとっての伏線はある領収書を見つけた事だった。出窓に積みあげて放置されているレシートや郵便物から、私に関連するものを選別している時(この真恵子さまの性癖のおかげで、いくつも重要な書類をなくしている)、ドライヤーの領収書が紛れ込んでいた、2万円もする高級品だ。
「なに、これ?」
「コロナの補助金が私に出たから買ったのよ!あんたの金じゃないわよ!!」
私の稼ぎではないが、家計に入れるべき金だろうが、そんな事を真恵子さまに言っても無意味。不快な思いをするだけなので、そこで引き下がった。しかし事程左様に真恵子さまは金を自由にお使いになるので、上記の化粧水の話になった訳だ。
で、真恵子さまの攻撃の矛先は長女に向かった。ちゃんと働いてもいないのに、まだ父親にスマホをねだるのか、と。正確に言えば長女にはまだ買って上げていない。手続きが済んでいないのだ。そんな事にはお構いなく「ちゃんと働け」だの「早く家を出ていけ」だのが始まった。バイトをしている娘らと違い、ず~っと家でゴロゴロしているのが一人いるのだが、そこはお構いなし。で、長女が黙っていると
「返事くらいしなさいよ!腹が立つ!!」
ちょっと私がムッとしたので、よせばいいのに口をはさんだ。
「ちっとも働きもせずに口だけなのはあなたでしょ?自分がちゃんとしたら?」
「働けないのはあんたのせいでしょ!あんたが働くなって言ったんでしょ!!」
おぉ、久しぶりに聞いたな、そのせりふ。この時点で娘二人は居たたまれなくなってリビングから二階の自室に移った。真恵子さまの攻撃は続く。
「あんたなんかお母さんの所に住んで世話でもしてやればぁ。いつでもいいわよ!」
あまりに腹が立ったので聞いてやった。
「この先、あなたが言うように娘二人が独立したら、あなたどうするつもり?ここで私と暮らすのか?」
「あんたが出て行けばいいじゃない!」
正直、ホッとしました。真恵子さまと二人だけでこの家に暮らすのは、思い描いただけでも苦痛でしかない。「離婚」とは言いませんでしたが「別居」の可能性はある。私にとっては未来への光明です。
もちろん離婚がベストですが、働く気がなく何の取り柄もない、生活スキルもマルでない真恵子さまが一人で生きていける程、社会は甘くない。仮に真恵子さまが働きたいと望んでも、とてもじゃないがあんな老女を雇う所はないでしょう。すると実家に転がり込むか、あるいは離婚ではなく別居して私に寄生し続けるかでしょう。それを真恵子さまは自分で感じ取っているのでしょう。そこはもう生存本能ですかね。
さて物語は佳境を迎えます。あの言葉を吐いた後、真恵子さまは「キ~~」と言うような奇声を発しながら、すき焼きの入っているフライパンをテーブルに叩きつけたのです。飛び散るすき焼き。そしてテーブルの上のサラダの皿を払い落としました。
私はすんでの所ですき焼きを逃れ、2階に避難しました。その後、真恵子さまがどうしたか、知る由もありません。翌朝、起きてリビングに降りた時には、すき焼きは掃除されていましたが、臭いが残って酷い有り様でした。
次女が大学を卒業するまであと3年たらず。それが別居のタイミングでしょう。
待ち遠しくて仕方ない。