◇8月30日(金曜日)/西武ドーム
オリックス6-2西武
オリックス先発・前田祐二(左左・27歳)に魅了されました。富田林高→龍谷大→BCリーグ・福井ミラクルエレファンツ(独立リーグ)という陽の当らない野球人生を歩いて、09年ドラフト4位でオリックス入り。この直後に発売された専門誌の寸評には「今季は北信濃BCリーグに所属し奪三振王に輝く。右打者の内角をえぐる度胸とコントロールを持ち合わせている」とあります。
この試合でも6回投げて10奪三振と、BCリーグ時代のよさを持続させています。確認できたストレートの最速は138キロ。速くはありません。それでも腕を振って投じる110キロ台のカーブと、120キロ台のフォークボールのキレが素晴らしく、西武打線は手も足も出ません。
最も見どころがあったのは2回裏。西武は浅村栄斗、秋山翔吾の連続ヒットで無死一、三塁のチャンスを迎えます(1死後、秋山が二盗して二、三塁に)。ここからが前田の真骨頂で、米野智人、木村文紀、炭谷銀仁朗を連続三振に斬って取ります。配球は次の通り。
◇米野→①内角低めフォーク(見逃し)、②外角低め134キロストレート(ボール)、③外角低め114キロカーブ(ボール)、④外角低め135キロストレート(見逃し)、⑤内角126キロフォーク(空振り三振)
◇木村→①外角137キロストレート(ボール)、②内角125キロフォーク(空振り)、③外角125キロフォーク(ボール)、④内角114キロカーブ(見逃し)、⑤真ん中低め127キロフォーク(空振り三振)
◇炭谷→①内角137キロストレート(ファール)、②外角高め135キロストレート(ボール)、③外角138キロストレート(ボール)、④外角高めフォーク抜け(ボール)、⑤内角低め116キロカーブ(ファール)、⑥127キロフォーク(空振り三振)
フォークボールはチェンジアップかもしれませんが、いずれにしても腕がよく振れて、ブレーキがよくかかり、落ち方も鋭角に“カックン”という感じでよく落ちます。昨日で15試合に登板して1勝2敗、防御率2.06は来季に期待をかけるのに十分。大げさでなくチームの大先輩、星野伸之を思い出しました。利き腕を後ろで巻きこむような動きこそありませんが、オーバースローや、前肩がしっかり閉じた投球フォームなど似た部分が少なくありません。
それにしても4位と6位の試合とは思えない熱戦で、延長10回を堪能しました。前田以外では野手転向1年半の西武・木村文紀(右翼手・右右・25歳)がよかったです。6/3の巨人との交流戦でも思ったことですが、始動やステップを急がない。つまりタイミングの取り方がゆったりしている。これが得難い長所です。この打ち方で5回裏には前田の117キロカーブをおっつけてセンター右を越える三塁打を放っています。このときの三塁到達が11.10秒。私が計測した中では今季プロ3位の好記録です。こういう選手がどんどん輩出されるところがパ・リーグというか西武の魅力です。
投手では大石達之(右右・25歳)に注目しました。この日のストレートの最速は147キロ。プロ入り後、何試合か大石を見た中で最速です。ストレートは145キロ以上がほとんどで復活気配濃厚と書いていいと思います。一番いいのはステップに向かったときの体の“強い割れ”。これが今までありませんでした。来季は数年来の課題だった「守護神不在」が解消されると思いました。