城所龍磨(ソフトバンク・外野手)の突然の成績上昇が大きな話題になっている。昨年まで13年間の通算打率.166や通算48安打をみれば“突然変異”と言われても仕方ないが、溌剌とした高校時代のプレーや鮮烈だった1年目のキャンプの印象からすると遅すぎる素質の開花である。
鮮烈だった1年目のキャンプの印象とは、04年の宮崎・生目の杜運動公園・第二野球場で行われたフリーバッティングのことである。新人の明石健志、榎本敏孝、金子圭輔や2、3年目の若手がほとんど柵越えできない重苦しい雰囲気の中、城所は絶妙のタイミングでボールを捉えるとポンポンという形容がぴったりするような軽快さで柵越えを連発したのである。
自分の持ち味は長打力ではないという思い込みと二軍指導者のスモール重視のコーチングで長打を捨てたわけだが、金本知憲・阪神監督が口癖のように言う「強く打つ」ことまで捨てることはなかった。今の活躍は確かに驚きだが、“超高校級”と評価された高校時代を振り返れば全然不思議ではない。ダイエー・ソフトバンクという屈指の指導力をもってしても城所の素質開花には13年も費やしてしまったのかという無念の思いのほうが強い。
城所以外ではロッテの細谷圭も太田市商時代は“上州のゴジラ”の異名を取る強打者で、私は高崎城南球場で強烈な打球のホームランを見ている。素質の開花を遅らせたのは指導者の「足と守りなら一軍でも使える」という可能性を小さく推し量る思い込みのせいだと思う。阪神の原口文仁にもそういうものを感じてしまうのである。
<城所龍磨>上段 07~15年成績、下段 16年成績
◇試合 打席 打数 安打 HR 打点 盗塁 四球 死球 三振 打率 出塁率 長打率
589 320 290 48 1 21 51 14 2 105 .166 .213 .259
41 101 92 33 6 18 6 8 0 23 .359 .630 .410
<細谷 圭>上段 07~15年成績、下段 16年成績
◇試合 打席 打数 安打 HR 打点 盗塁 四球 死球 三振 打率 出塁率 長打率
212 329 296 56 5 25 3 21 1 98 .189 .243 .270
53 202 188 56 3 24 7 10 1 44 .298 .337 .452