徳平(笹野高史)の子孫は上京し、やがて鈴木建設社長の運転手へ・・・
山田洋次監督が描く藤沢周平作品の三作目。前二作とは違って屋内セットでの撮影が中心となった。そのため鶴岡の風景や四季を映像化したものはありませんが、それを補ってお釣りがくるほど音響効果や小道具が秀でていました。ホタルのCGや落ち葉が舞う様子などは、室内セットだと感じさせないほどこだわりあるものだったし、蛙、蜩、ミンミン蝉、そして秋の虫の声など、むしろ目を閉じていたほうが四季を感じさせるかのような細かな演出。また、三村邸内部を中心としたことによって、主人公三村新之丞(木村拓哉)の盲目であるための閉塞感が伝わってきて、心理描写も手に取るようにわかる工夫があったように思います。
カメラの構図は新之丞と妻の加世(壇れい)を中心に捉え、その奥には必ずといっていいほど徳平を捉えている。中間徳平は新之丞の親の代から仕えているため、夫婦双方の気持ちを知っているし、孤児であった加世の生い立ちも知っていて、いわば三村家の歴史を知る人物。この三者の映像が絶妙なアンサンブルを形成し、奥行きのある立体的構図を感じさせるのです。そして、波多野以寧(桃井かおり)らの親戚の登場で幅を広げ、一族と海坂藩の関係などのイメージが膨らむほどの世界を与えてくれました。
決闘のクライマックスまでは時代劇アクションというダイナミクスは感じられないのですが、毒見役である新之丞が貝の毒で失明する事件を境目に大きく揺れる心理劇を堪能できました。もちろん、それを支えるキムタクの演技は予想以上に良かったし、献身的な壇れいの可憐さや一途な想いに心打たれたおかげです。キムタクの目力というのも話題になっていますが、離縁を申し渡すときの彼の形相、そして鬼のように光る目がとても恐ろしかったですよ。
プロットとしては単純で、下級武士夫婦の愛の物語と復讐劇の2本線。タイトルになった武士の一分という意味にも惹かれるところはあるのですが、初稿の段階で「愛妻記」としていたタイトルからしてもこの作品の重要なテーマは「愛」なんだとうかがえます。そして、責任をとって切腹、生きている価値がないから切腹、決闘で上司を殺して切腹、などと侍の自害のことがかなりウェイトを占めている。簡単に死を選ぶ事件が多い現代において、子供が観たらどう感じてしまうのか気にはなるのですが、「死を選ぶのなら“一分”を理解してからにしろ!」と子供に教えなければならないのかもしれません。
今の公務員は侍と同じ立場にあるはずなのに、崇高な志を持っている人が少なくなっているのでしょうか、事件が多すぎますね。大きなミスをしたり、事件を起こしたら切腹しなければならないと公務員法を改正しなければならないのかもしれません(冗談です)。
★★★★★
山田洋次監督が描く藤沢周平作品の三作目。前二作とは違って屋内セットでの撮影が中心となった。そのため鶴岡の風景や四季を映像化したものはありませんが、それを補ってお釣りがくるほど音響効果や小道具が秀でていました。ホタルのCGや落ち葉が舞う様子などは、室内セットだと感じさせないほどこだわりあるものだったし、蛙、蜩、ミンミン蝉、そして秋の虫の声など、むしろ目を閉じていたほうが四季を感じさせるかのような細かな演出。また、三村邸内部を中心としたことによって、主人公三村新之丞(木村拓哉)の盲目であるための閉塞感が伝わってきて、心理描写も手に取るようにわかる工夫があったように思います。
カメラの構図は新之丞と妻の加世(壇れい)を中心に捉え、その奥には必ずといっていいほど徳平を捉えている。中間徳平は新之丞の親の代から仕えているため、夫婦双方の気持ちを知っているし、孤児であった加世の生い立ちも知っていて、いわば三村家の歴史を知る人物。この三者の映像が絶妙なアンサンブルを形成し、奥行きのある立体的構図を感じさせるのです。そして、波多野以寧(桃井かおり)らの親戚の登場で幅を広げ、一族と海坂藩の関係などのイメージが膨らむほどの世界を与えてくれました。
決闘のクライマックスまでは時代劇アクションというダイナミクスは感じられないのですが、毒見役である新之丞が貝の毒で失明する事件を境目に大きく揺れる心理劇を堪能できました。もちろん、それを支えるキムタクの演技は予想以上に良かったし、献身的な壇れいの可憐さや一途な想いに心打たれたおかげです。キムタクの目力というのも話題になっていますが、離縁を申し渡すときの彼の形相、そして鬼のように光る目がとても恐ろしかったですよ。
プロットとしては単純で、下級武士夫婦の愛の物語と復讐劇の2本線。タイトルになった武士の一分という意味にも惹かれるところはあるのですが、初稿の段階で「愛妻記」としていたタイトルからしてもこの作品の重要なテーマは「愛」なんだとうかがえます。そして、責任をとって切腹、生きている価値がないから切腹、決闘で上司を殺して切腹、などと侍の自害のことがかなりウェイトを占めている。簡単に死を選ぶ事件が多い現代において、子供が観たらどう感じてしまうのか気にはなるのですが、「死を選ぶのなら“一分”を理解してからにしろ!」と子供に教えなければならないのかもしれません。
今の公務員は侍と同じ立場にあるはずなのに、崇高な志を持っている人が少なくなっているのでしょうか、事件が多すぎますね。大きなミスをしたり、事件を起こしたら切腹しなければならないと公務員法を改正しなければならないのかもしれません(冗談です)。
★★★★★
私には撮影意図もCASTの選択もよくわからないまま見終わりました。
「たそがれ清衛兵」から下り坂を落ちている気がしますのは、私の感性ですけど、意図はわかるけれど、キャスト選択は私には感性が合わなかった作品でした。
この映画って、だめな人はだめみたいな・・・
キムタクに関して、俺は以前から好きなんです。さすがに『2046』ではたいしたことなかったけど、しっかり演技すればいいかなぁ~なんて・・・
ただ、三部作で一番好きなのは「たそがれ~」かな。
三部作は最後まで普通の俳優さんを使ってくれればと願っていたのですが・・。
キム様は顔が華やか過ぎますよ~(笑)
俺も「たそがれ」が一番かなぁ~でも、この「武士」と同じ位。
たしかにここにきて冒険しているような気もしますが、それでもちゃんとまとまっているところが山田監督ならでは。
顔に関しては、たかだか百数十年前の話ですから・・・
あたしは先日試写会で観ました。
確かに目を閉じると感じる季節感とかありましたね!!
蛍もそうでした==!!
キムタク、最初はスマスマの余興っぽい雰囲気で(袴姿が微妙で・・・笑)どうかなと思ったんですけど、物語が進むにつれてだんだん良くなんていきましたね!!
顔つきが変わったっていうか・・・それだけ入り込んだんでしょうね!!
島田の「じょうしに逆らうのか!」というセリフにビックリ。
「じょうし」って「上司」じゃなくて「上士」のことだったんですねw
映画ブログの人の感想が実はすごく気になって。
失明してからは木村拓哉ではなく、三村新之丞として
見てました。こんな木村君見たことないので、感動しちゃった。
目の見えない動きが素晴らしかった。
派手さはないけど、後からじわじわくる作品だった。
嬉しいような、こそばゆいような。
どうも元鶴岡市民としては、自分のことを評価されてるような妙な気分になるのがこの3部作でございました。
なので、やはり鶴岡ロケがなかったのが不満かなあ。
私はあの閉塞感に違和感を感じました。盲目の世界だと言われればそうなのでしょうが、妙に狭さと広さがアンバランスだった。なんでだろう?
まあよく作ってくれたと。こうやって山田洋次作ってもらわなければ、鶴岡なんてほとんどマイナーもマイナーな一地方都市でこれからも行ったでしょうからね。
ちなみに本では切腹はないです。やたら腹を切らせたことがちょっと不満かな。
今回は徳平に持っていかれましたね。
まんずありがとがんした。
TVのCMもどんどん流れていますね~かくいうこの俺も「目が見えねぇんだぞ」という声が裏返るキムタクの予告編だけでウルウルしてしまった1人です。暇と金があればリピートするかもです・・・
>よしえさん様
「目を閉じると」などと書いてしまいましたが、実際に目を閉じたわけじゃありません(汗)あの蝉の声なんて、蜩→ミンミンゼミ→蜩と実際に夏の初めと終わりに鳴く蜩を上手く入れたもんだと感心させられました。
キムタクの演技は、目が見えるときには普通だったのに、失明してからが凄かったですね。いやはやビックリです。
>あむろ様
そうっかぁ~上司ではなく上士でしたか。なんの違和感もなく受け入れてしまいました。やっぱり俺って日本史が苦手なんだなぁ。
>アンナ様
キムタクファンならずとも、彼の演技は評価しちゃうと思います。
目が見えない演技を目を開けたまましなくてはならない難しさ。これを見事に克服しましたよね。
>sakurai様
元鶴岡市民でしたか。
鶴岡ロケは前二作でしっかり行われていたんだし、今回は大目にみなければいけないのかもしれません。セットにした理由も、音を大切にしたからだと思うのですが、その点では成功しています。その「山田組のこだわり」を肌で感じることができたような・・・そんな気さえいたしました。
山形県に関していえば、『スウィングガールズ』でもかなり盛り上がりましたが、ほんとに最近は多かったですね。新幹線のおかげなのでしょうか。
切腹に関しては意図がはっきりしませんが、子供が鑑賞するときには大人がちゃんと教えてあげなければ危険なのかもしれませんね・・・