ネタバレ映画館

映画ドットコムに記事を移行してます!

アルゼンチンババア

2007-03-29 05:52:54 | 映画2007
 堀北真希の怪力、役所広司のコントロールのよさに驚いた。

 『奈良美智との旅の記録』を見逃してしまい、タイトル画はどこかで見たような記憶があったのに、誰が描いているのかわからなかった。堀北真希のこねるパンも美味しそうだったので、とりあえず頭の中は“不二家のペコちゃん”でいっぱいになってしまいました。また、悪臭を放っているかのようなアルゼンチンババアと彼女の住む建物からは、なかなか臭いを感じ取ることができず、むしろパンとハチミツからイメージされる味覚のほうが勝ってしまったようです。

 風変わりな女性アルゼンチンババアことユリを演ずるのは鈴木京香。手入れをしてなさそうなほどぼさぼさに伸ばした白髪まじりの髪。たしかに世捨て人であるかのようなその風貌からはババアと呼ばれるにふさわしいエッセンスが詰め込まれているのですが、設定では50歳くらいなのに、やはり若さは隠しきれない。それもハチミツ効果だと言われればそれまでなのですが、顔全体や唇の艶と髪がアンバランスなのです。それでも役所広司と並ぶと妙にマッチしていたため、よき熟年カップルぶりを堪能(?)できました。

 よしもとばななの原作は読んだことないのですが(というより、彼の作品は一冊も読んだことがない)、この映画に関しては設定だけはとても個性的で、慣れてくると平凡な家族愛としてしか感じられなくなってしまう。そんな中でも、一人の人間が生きていくことの大切さと子は親があってこその存在であることが感じられる。それは鈴木京香の言葉でも感じられるし、田中直樹の言葉からも感じられ、堀北真希をほったらかしにした役所広司の態度はそれを弁証法的に検証しているかのようでもあった。妻を亡くしたばかりの男がすぐに別の女性を愛することができるかという心理にしたって、森下愛子が自分の浮気癖を棚上げした再帰的検証によって納得させられている。

 などとわけのわからぬことを考えるよりも、身内の死から逃げ出したかった男にありがちな弱さを見せつけられただけ。「わかる、わかる」と共感して、独特な雰囲気を持った映像を楽しめたので満足です。カメラワークでは特に4人で囲んでラーメンを食べるシーンなんてのは印象に残りますし、舞台となったあの屋敷が脳裏に焼きついてしまいました。アルゼンチンタンゴを踊るシーンもよかったのですが、役所広司のダンスをメインにしなかったのは『Shall We ダンス?』とダブってしまうからなのか・・・音楽も周防義和だし。

★★★・・

コメント (19)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アンフェア the movie | トップ | ホリデイ »
最新の画像もっと見る

19 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ご無事でなによりでした (PGM21)
2007-03-29 07:25:13
何時もお世話になっております。
震源地に近かったので心配しておりましたが大丈夫で何よりです。
この作品なんですけれど・・・今季最悪の作品でした。
堀北真希さんに何てことさせてるねん!とハッキリ言って怒り心頭です。
これが原作通りだったら地下鉄に乗って以来の愚作ですね。とにかくあの脚本何とかならなかったのでしょうか・・・
返信する
よしもとばなな (ベータ)
2007-03-29 11:56:52
よしもとばななさんは「彼」ではなく「彼女」ではないでしょうか?

私もよしもとばなな初体験でした。
この作品賛否両論あるみたいですね、私は大人の童話という感じで結構気に入りました。
返信する
アルゼンチンババア (かのん)
2007-03-29 22:22:30
鈴木京香さんもヨカッタのですが、あらためて考えると中島みゆきさんが似合いそうかなと思ったんだけど、それじゃ役所さんが惚れないかもしれないと思い直して即却下しました(笑)。

もっと毒があっても良さそうな雰囲気だったのでちょっと期待とズレてしまいましたけど、なんだか不思議な物語で見入ってしまいました。
返信する
堀北真希さんの怪力 (bakabros)
2007-03-29 23:34:14
には驚きました。でも、おかしいのを通り越してそれが自然でリアルに見えてしまうのことが不思議でした。
アルゼンチンババアが50歳過ぎの役というのは噂で聞いていたのですが、あまり年は意識しないようにして観ていました。
はちみつとマテ茶、焼きたてパンの香りが香ってくるようでしたね。
返信する
ばなな (kossy)
2007-03-29 23:37:19
>PGM21様
あらら、最悪でしたかぁ~
まぁ、俺はそれほどでもないけど、細かいところの脚本はダメダメですよね・・・金子ありさって『ナースのお仕事』とか、ダメダメ脚本家の一人?
堀北真希ちゃんは何でもこなす女優になると思いますよ。ちょっと前まで小学生役だったんだし・・・

>ベータ様
が~ん、そうだったのか。
女性だったのですね・・・それにしては男の心理をよく掴んでると感じたもので・・・
大人の童話ととらえると何でも許せちゃうところですけど、後半がちょっと現実的だったかなぁ。

>かのん様
鈴木京香と中島みゆきだったら、後者を選んでしまうkossyです(汗)でも、中島みゆきが汚い格好してたら俺でも惚れないかなぁ・・・よーわかりませんわ。

アルゼンチンババアが何歳なのかさっぱりわからなかったので、なぜああいう展開になるのかも理解不能でした。
返信する
石屋 (kossy)
2007-03-29 23:49:04
>bakabros様
怪力は凄かったですよね~
石屋さんの娘だから、当然なのかもしれないけど、大人が数人でやっと運べた墓石を一人で運んだんですもんね。
マテ茶ってどんな香りだったか思い出せないので、口の中にハチミツを含んでることを想像しながら観ました(笑)
悪臭よりもパンの匂いが漂ってくるような・・・
返信する
Unknown (Ageha)
2007-03-30 00:52:44
原作のほうがダメダメでした。
はじめて読んでこれでは
よしもとばななそのものが合わないかも。(泣)

妻の死がうけいれられへんからって
逃げ出された日には化けて出たる。(ノ*゜▽゜)ノ

んでお母さんの死に目に立ち会ったことで
「大きな力」を手にいれた娘は
ババアのことも父のとった行動も受け入れてしまう。
魔法のハチミツよりもありえない
ものわかりのよさについていけなかったから
映画ではそれで当たり前やろっていう
ジタバタぶりにすっきりしたという・・・。
まあ掘北真希に何させんねんっていうのは
あるでしょうけどね・・。
返信する
こんにちは♪ (ミチ)
2007-03-30 09:38:38
石川県にこんな大きな地震が起きるとは思ってもいませんでした。
県民全体の防災意識も低いでしょうね。
阪神大震災を教訓にして緊急避難袋を作ったのですが、それもいまはどこへ片付けたのか忘れてしまったほどです(汗)
映画の上映が中止されたりして映画ファンにもしんどい数日間でした。
先日映画を見に行った時にも余震があってビビリました。

あ、映画の話してませんね~。
タイトルが一番面白かったかな~ってかんじです。
返信する
義務放棄 (祐。)
2007-04-01 21:21:40
どうも映画の評価が悪いですね。
公序良俗に反している法律違反のシーンが多かったのが要因かも。
未成年の飲酒やタバコ。 ノーヘルメットでのバイクの二人乗りとか。。

妻の死を受け入れずに現実逃避をする父親の心境は理解できるのですが、子供まで出来てしまう展開に、ついてはいけませんでした。人生波乱万丈ですが、生きていくことは難しい物ですね。
返信する
Unknown (アルデンテババロア)
2007-04-03 15:09:47
アルゼンチンババアの住家がタイドランドを思い起こし少し抵抗があるのですが、この記事読んで観てみようかと思いました。

音楽好きですし。
返信する
こんばんは (とらねこ)
2007-04-04 02:00:00
アルゼンチンタンゴの曲が、とても良かったですよね。
アコーディオンのオルガンの音かしら?
とても温かくて、素敵な感じですね。
映画は、自分にはちょっと・・・でしたが、言いたいことは、分かりましたけど。

ところで、私の『1周年』の記事のところで、リンクを貼らせていただきました。
事後報告、すみませんです。
返信する
自分だけの命じゃない。 (たいむ)
2007-04-05 19:28:34
こちらにも。。
わかるわかる・・と共感できればもう少し楽しめたのでしょうが、いまひとつノリ切れず・・・
唯一、鈴木京香の言葉が心に残りました。
が、なんとも時間のかかるお話で。。。
もっとファンタジーとして寛大な気持ちで観ればよかったと思ってます。
返信する
原作 (kossy)
2007-04-06 20:32:51
>Ageha様
原作もお読みになってたんですね!
たしかに女性から見たら男の身勝手さばかりが強調されていたような気がする・・・でも、死のショックというのもそれほどショックだったのかなぁ~と受け止めました。
堀北真希になんであんなことを!というご意見が多いですけど、これからの女優でもあるし何でも体験させなきゃですね~

>ミチ様
映画の上映中止だなんて知りませんでした。
俺は地震の直後に何事もなかったかのようにパチンコ屋へ直行・・・不謹慎だなぁ~と思いつつも人はいっぱいでした(笑)
たしかにこのタイトルはインパクトありすぎ!
ついつい観てしまうという人もいそうですね。

>祐。さま
なるほど・・・法律違反はかなりありましたね。
まぁ、青春映画だったらそれくらいはいっぱい出てくるけど、最近の純愛ブームから比べるとがっかりするかもですね。
女と一緒に暮らせば子どもができちゃうんだよ。などということを娘に教えたかったのか。生きることの大切さとかは無縁の映画だったのかもしれませんね。

>アルデンテババロア様
音楽はよかったです。さすが周防さん。
問題は、酷評が目立つなかで現実逃避するおっさんのファンタジーについていけるかどうか。
かなり評価はわかれてますです。

>とらねこ様
音楽はいいですよね~
アルゼンチンの映像をもっと取り入れたらよかったかもしれませんね。タンゴを聞いても想像できないし・・・
むしろ役所さんがダンスしているところを想像しちゃいました。

>たいむ様
俺もまさかファンタジーだとは思わずに・・・
家族ドラマ?を期待していたのが変な方向に行っちゃったりして・・・海にいるかのお墓を沈めるところなんてほわ~んとしてしまいました。
寛大な気持ちになれるかどうか・・・難しい問題ですよね。
返信する
弱虫 (Aki)
2008-01-13 21:15:54
おっさんファンタジー!寛容に!男の弱さ身勝手さを観るぞ!と身構えましたが・・。



吉本ばなな初期作品4・5冊を読みました。



その後、作風がどう変わったのか、知りません。本作の原作も読んでいません。



でも、本作は、初期作品によく似たプロット。

特に『キッチン』・・『キッチン』+『ショコラ』かな。



緊急避難場所。

ソコには生命力と不思議な魅力のアル人がいて、救われ、癒され、再生し大切なモノを託され、亡くなる。



『キッチン』を読んだのは、20年前。

20年間を経て、あってほしい場所、いてほしい人と思う。



分かり過ぎるほどワカル。



親放棄はダメですが、半年で再生は奇跡です。
返信する
ばなな (kossy)
2008-01-14 05:52:39
>Aki様
再生というのも助けてくれる人がいたからこそなんですよね。まぁ、ほとんどの再生ドラマはそうなんでしょうけど。
親をやめるというのは「幸福な食卓」でもあったし、去年の映画の流行りだったのかな。
それだけ世相を反映してのことだろうけど、面白いものですよね。
返信する
世相 (Aki)
2008-01-14 19:07:14
『幸せな食卓』も『待合室』も本作も、死の回避術。



人生をオウカする作品よりも、大人も子供も逃げ出したい世相って、殺伐としていますよね(涙)



再生モノが好きな私自身、作品からパワーや希望を得たい状態・バッテリー切れランプが点滅し、充電が必要かもしれません。



人には治癒力・再生力があるけれど、自力ではどうにもならないことがある。



生命力って、今、流行りの鈍感力(未読)か?とも思いますが、鈍感にはなりたくない。



骨折した骨は、以前より太く強くなるというけれど、シンドイ挫折や痛みを伴わず、適度に生命力鍛える方法ないものですかね。(怠惰)



返信する
生命力 (kossy)
2008-01-15 08:36:45
>Aki様
充電ですかぁ~
俺なんていつも充電中で蓄電池が傷んできていますよ。雨降って地固まるなんて、最近は通用しないのかもしれませんね・・・

骨折した骨が太くなるって話も老人には当てはまらないだろうし、骨を折らないために努力する必要があるのかもしれません。などと考えると、自分もずいぶん年をとったものだと・・・あぁぁ。
返信する
痛み (Aki)
2008-01-17 03:39:54
本作は、最愛の妻との死別が、最大の引金なので、回避(愛さないこと)は、勧められません。



痛みを知ると、臆病になるし、慎重になることはあるけれど、人を愛することは素晴らしいことだからです。



けれど、働きざかりの年代が、仕事も親も放棄するような精神状態にあったり、将来のある若者や少年の自殺が増加している現実。



心が弱いのか・・現実が辛いすぎるのか・・。



避避難所や休息地があり、

保護してくれる人がいて、

悲しみや辛さや苦しさを経験しなくても、

乗り越える精神的力・治癒力・再生力・生命力を鍛える方法があればいいのにナと思いました。
返信する
愛だなぁ (kossy)
2008-01-17 10:21:16
>Aki様
人を愛すること、いいですよね。
最近の俺には縁のない話・・・(涙)

現実からの逃避。映画だけで世相は語れないけど、最近は結構目立ってるのかなぁ。色んな事をあきらめざるをえない社会がいけないのかもしれないけど・・・
俺も逃げ出さない、強い精神力を持ちたいものです。
返信する

コメントを投稿

映画2007」カテゴリの最新記事