主文、評価は満点とす。日本の裁判制度の矛盾点と冤罪事件で被疑者とされた者と弁護士による国家権力に抗う姿、それによって正しき主張をも蔑ろにしてしまう社会の醜さをも描いた本作は大いに評価できるものである。
折りしも1月19日富山県では2002年に強・姦罪で懲役3年の判決を受けた男性が無実だと分かったと報道されました。本人が自供しないのに状況証拠のみで公判を維持してきた愚行により一人の男性の大切な時間が奪われたのです。自供しなくても有罪になるなんて、恐ろしい現在の司法制度。この映画の趣旨のひとつと同じように、裁判所はとりあえず有罪・無罪を決めるだけの機関であることが浮き彫りにされた事件でした。
映画では大森裁判官(正名僕蔵)が無罪病だと言われ、無罪判決を出すこと裁判官が官僚側から見て厄介者として扱われていることも注目すべき点。「疑わしきは罰せず」の精神という根本的な考えを持ってる裁判官は昇進もできないし、下手すると左遷させられる。一体誰のための裁判なのかという問題点も提示しています。警察も検察も起訴したからには被疑者を有罪にすることに躍起になる。彼らにとって不利益な証拠は不見当として提出しなくてもいいという問題点もあった。民間企業で「その資料は不見当です」なんて言ったら即刻解雇されてもおかしくないのに・・・
この不条理な司法制度を家族ドラマを敢えて一切排除して、監督の言葉にあるように「裁判が主人公」として描いたことは潔かった。そのおかげで家族に感情移入することなく公正な目で裁判そのものを見ることができました。時間は多少長くも感じられるものの、公判の冷たい空気がそのまま映画館の観客席にまで伝わってきているように思えるほどでしたし、舞台もとてもシンプルだったので、裁判の臨場感がまるで傍聴席にいるかのような気分にさせられ、「起立っ」の号令では思わず立ってしまいそうになったくらいです。
月刊シナリオを映画を観る前に読んでいたので、とてもわかりやすかった。鑑賞中はむしろ俳優の演技に釘付けになり、いつもは穏やかな小日向文世の憎たらしさにむかつき、光石研の演技力にほれぼれさせられました。そして、加瀬亮や瀬戸朝香の演技ももちろんよかったのですが、山本耕史演ずる現代の若者の姿がとても眩しいほどでした。さらに、「痴漢の真犯人はお前だろ」と言いたくなるような田口浩正や、傍聴オタクという今まで映画やドラマでは登場したことのないようなキャラの山本浩二も印象に残ります。
それにしても取調官の作文能力は見事でしたね~ブログ記事を代わりに書いてもらいたくなったほどです。自白供述書はこんな風に作られるのかと空恐ろしくなりました。そんなこんなで寒々とさせられることばかりでしたが、観終わって帰ろうとしているときに観客の一人にヤクザっぽい男が腕を組んで考え込んでいる姿を発見して、ますます寒くなりました・・・
★★★★★
折りしも1月19日富山県では2002年に強・姦罪で懲役3年の判決を受けた男性が無実だと分かったと報道されました。本人が自供しないのに状況証拠のみで公判を維持してきた愚行により一人の男性の大切な時間が奪われたのです。自供しなくても有罪になるなんて、恐ろしい現在の司法制度。この映画の趣旨のひとつと同じように、裁判所はとりあえず有罪・無罪を決めるだけの機関であることが浮き彫りにされた事件でした。
映画では大森裁判官(正名僕蔵)が無罪病だと言われ、無罪判決を出すこと裁判官が官僚側から見て厄介者として扱われていることも注目すべき点。「疑わしきは罰せず」の精神という根本的な考えを持ってる裁判官は昇進もできないし、下手すると左遷させられる。一体誰のための裁判なのかという問題点も提示しています。警察も検察も起訴したからには被疑者を有罪にすることに躍起になる。彼らにとって不利益な証拠は不見当として提出しなくてもいいという問題点もあった。民間企業で「その資料は不見当です」なんて言ったら即刻解雇されてもおかしくないのに・・・
この不条理な司法制度を家族ドラマを敢えて一切排除して、監督の言葉にあるように「裁判が主人公」として描いたことは潔かった。そのおかげで家族に感情移入することなく公正な目で裁判そのものを見ることができました。時間は多少長くも感じられるものの、公判の冷たい空気がそのまま映画館の観客席にまで伝わってきているように思えるほどでしたし、舞台もとてもシンプルだったので、裁判の臨場感がまるで傍聴席にいるかのような気分にさせられ、「起立っ」の号令では思わず立ってしまいそうになったくらいです。
月刊シナリオを映画を観る前に読んでいたので、とてもわかりやすかった。鑑賞中はむしろ俳優の演技に釘付けになり、いつもは穏やかな小日向文世の憎たらしさにむかつき、光石研の演技力にほれぼれさせられました。そして、加瀬亮や瀬戸朝香の演技ももちろんよかったのですが、山本耕史演ずる現代の若者の姿がとても眩しいほどでした。さらに、「痴漢の真犯人はお前だろ」と言いたくなるような田口浩正や、傍聴オタクという今まで映画やドラマでは登場したことのないようなキャラの山本浩二も印象に残ります。
それにしても取調官の作文能力は見事でしたね~ブログ記事を代わりに書いてもらいたくなったほどです。自白供述書はこんな風に作られるのかと空恐ろしくなりました。そんなこんなで寒々とさせられることばかりでしたが、観終わって帰ろうとしているときに観客の一人にヤクザっぽい男が腕を組んで考え込んでいる姿を発見して、ますます寒くなりました・・・
★★★★★
今後裁判制度が日本で行われますが、刑事事件をおおせつかったら、逃げたくなりますよね。
タダでさえ、刑事事件弁護士が少ないのと、無罪判決=国家反逆になりそうですから。
「赤信号みんなで渡れば怖くない」という事にならなければいいのですが。
冤罪事件の作り方!
いつまでたってもなくならない冤罪、多分微罪事件にはもっといっぱいあるんでしょうね。
事実を認めればすぐ釈放だなんて甘い言葉をささやかれたら、誰だってそうしちゃいますよね。
新しい裁判員制度になっても裁判員の中には裁判官が含まれ、反対意見を裁判官が支持しないと却下されるらしいです。結局は裁判の迅速化のためだけの制度なんですよね。
国家権力にも屈しない良識ある裁判官が増えることを祈りましょう。
言葉のあげ足とり合戦が裁判でしょうか。
いかに言葉の使い方一つで印象や心象どころか、本来の意味すら変わってしまうか恐ろしくなります。
役者さんたちはどの方も良かったですね。
小日向さん、憎かった~(笑)
>「痴漢の真犯人はお前だろ」と言いたくなるような田口浩正
私も「コイツか!」と。絶妙なタイミングで現れ、きっと大半がそう思ったのでは?(笑)
昔、自転車の盗難に遭った時、警察へ行ったら、
簡単な事情を聞かれ、被害届を出せと言われた途端、
わたしが言葉にした覚えのない、一人称の文章の被害届が目の前に出され、
署名すれば文書が完成するようになってました。
自転車と盗った犯人よりも、盗られた人間に如何に落ち度があったか、といわんばかりの文章で、
ムカッとする内容でした。
今なら余裕で「勝手に作文しないでください」とか
「その割りには文章が下手だ」とか言ってやるんですけど、
若かったし、釈然としないままだけど、
要するに盗られたことに変わりないか、と仕方なく署名しましたが…
でもね、警察官も、まずはこの「作文」の書き方を習うんだそうです。
文章に不備があったら、「添削」が入るんだって。
何もかも、「ほんまかいな」と耳を疑うことばっかりです…
調書にしてもなんにしても、サインだけでなく
文章もちゃんと本人に作らせてほしいよねー
どこかで主人公同様、裁判官を信じている自分ありましたが
嘘か真か?なんて本人にしかわかんないことだし、
鼻っから疑ってかかっている人間、そうそう考えはかえられないってことよね。
脚本・構成も見事で、キャストも皆好演だったと思います。
観終わってからも、いろいろと考えさせられました。
コメント・TBありがとうございました。
本当に怖い映画でしたね。
まるで現代社会の病巣ですね。
特に判決が昇進の基準になっている事自体間違っていますよね。
「とりあえず猶予付きの有罪にしとけばいい。」という考えがありそうで怖いですね。
期待どおりの良い作品で多くの人に観てもらいたいですね。