手話通訳者のブログ

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「さん付け」の理由

2016-05-24 12:07:34 | 手話
わしらの地元には、すごい手話通訳者が二人いる。

一人は、「カリスマ手話通訳者」と呼ばれているSさん。
10年以上活躍している手話通訳者なら、知らない人はいない、というほどの有名人。
手話通訳者の卵たちが使っているテキストの多くは、カリスマ手話通訳者が著者であったり、監修者であったり、なんらかの関わりを持っている。

もう一人は、「手話世界の聖人」と呼ばれているWさん。
ろう者たちからの信頼は絶大。
「たいし、W先生みたいにならないかん。まだまだやで」
と何度ろう者に言われたことか。
こう言われても、悔しい思いは全くない。

あのなあ、比べるの、やめてくれ。
どう逆立ちしたって、Wさんには敵わない。

完全に、白旗を振っている。それでいいと思っている。

お二人とも、地元を代表する手話通訳者。
俺も古株だから、お二人と一緒に手話通訳したこともある。

手話通訳者たち、このお二人と一緒に手話通訳の現場に出ることを、極度に嫌う。
自分の未熟さが明確にわかってしまうからだろうか。

しかし、通訳を受ける立場である聴覚障害者には、そんなこと、関係ない。
「手話通訳者」として認識している。
実力に天地の開きがあろうとも、同じ、「手話通訳者」なのだ。
尻込みしていて、どうする。

手話通訳者として資格をいただいた時に、決めた。
このお二人と通訳現場に立った時、「先生」と呼ぶのはやめよう。
同じ「手話通訳者」なのだ。

「私は新入りなので、ミスが多いと思います。すみません」

こういうセリフを吐く手話通訳者が多かったが、こういうセリフは絶対に言ってはならない、と思った。
有資格の手話通訳者として現場に立つ以上、プロフェッショナルなのだ。
言い訳してどうする?

こういう思いから、手話通訳現場では、どんなに偉大な先輩であっても、「先生」とは呼ばないことにした。
それぞれ、Sさんであり、Wさんである。

こういうスタンスが「生意気」とか、「自惚れ」などと批判されてきたが、「さん付け」の姿勢はずっと崩していない。


もちろん、TPOは心得ているつもり。
手話通訳者研修の場で、このお二人が講師の場合、当然、「先生」と呼ぶ。



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