sinnkaさんの「平成16年度財務ファイナンス戦略事例」の添削です。
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【sinnkaさんの解答】
第1問
(a)売上高対経常利益率
(b)0.12%
(c)
12345678901234567890
売上総利益率が低い従来型製品の継続生産、
借入金に頼った資金調達による利子負担の増
加により、収益性が悪化する問題がある。
(a)総資産回転率
(b)0.81回
(c)
12345678901234567890
従来型製品のラインナップの多様化への対応、
現在の向上除却後の土地を売却せず保有する
ことにより、資本効率が悪化する問題がある。
(a)自己資本比率
(b)25.55%
(c)
12345678901234567890
短期借入金の増加による短期支払い能力の悪
化、固定資産の増加による投資の健全性の悪
化により財務の健全性が悪化する問題がある。
設問2
1
従来型製品に対する投資を見直す。売上総利
益率の高い新型製品中心の設備投資を行うこ
とで、収益性の向上と投資額の圧縮を図る。
2
現在の工場除却後の土地を売却する。そこで
得られた資金を工場移転・設備投資にあてる
ことで、借入金の増加を抑えるべきである。
第2問
(設問1)
12345678901234567890
本社と工場の間を、インターネットV P Nで
接続することが適切である。理由は導入・運
用費用が低く、費用負担が少ないからである。
(設問2)
公衆網を利用したネットワーク接続であり、
情報の暗号化、アクセス時の本人認証、ファ
イヤーフォール設置等を、行うべきである。
第3問
設問1
(a)143百万円
(b)93百万円
設問2
X 社の買収金額1.500百万円は、D社の企
業価値2.353百万円を下回っており、D社
にとって妥当ではない。
設問3
(a)利益還元方
(b)
12345678901234567890
1株当たりの税引後利益を見積もり、業界平
均の自己資本利益率で還元する方法である。
(a)類似会社比較方
(b)
評価会社と類似する数社の上場会社の平均株
価に比順割合を乗じて評価する方法である。
第4問
設問1
18百万円
設問2
分割投資を1年目のみ行うことが望ましい。
理由は、期待値が24百万円となり、投資
案の中で期待値が最大となるからである。
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kurogenkokuの添削です。
【総評】
・非常にレベルの高い解答である。
・事例企業の問題点と改善策がほぼ的確に抽出できている。
・文章表現力が高く非常に読みやすい。
【解答の論理性】
・特に問題なし
【解答の問題点】
以下に記述。
第1問の経営指標については、池乃堀さんやパヤシさんが指摘しているとおり、もう少し問題点を具体的に示す指標を選定したほうがいいと思います。
参考までに私の第1問に関する考え方は以下のとおりです。
第1問(設問1)
【与件から抽出された問題点】
①従来型製品は納入先からの価格値下げ圧力が強い
②従来型製品ラインナップはさらに多品種化が求められる。
③新工場は多額の設備投資額が必要(土地1億5千万円、工場4億円)
④設備投資計画はなぜか従来型製品への投資額が大きい
⑤現在の工場は除却するも土地の売却は考えていない(借入れ依存?)
↓
結果、5年後の当期利益は現在より減少してしまう。
【問題点を3つに集約】
(1)①④より粗利益率の低い従来型製品を主力とした設備投資計画
(2)②より従来型製品の多品種化に対応するために棚卸資産が大幅増
(3)③⑤より多額の資金調達源泉を短期・長期の借入金に依存
【集約した3つの問題点を経営指標に】
(1)売上高総利益率
実はD社の損益計算書と製造原価報告書を分析すると、D社全体の売上高総利益率低下要因は減価償却費率の増加しか読み取れない。
材料費率や労務費率は悪化していないのである。
製品別売上総利益を見るとそれぞれの売上高総利益率は、従来型製品(H16年18.6%→H21年12.0%)、新型製品(H16年40.0%→H21年41.9%)である。
つまり仮に従来型製品への投資をやめて新型製品への投資のみ行っていれば売上高総利益率が向上する可能性は高い。
材料費率や労務費率も向上するかもしれない。
「粗利益率が低下する従来型製品への重点投資により売上高総利益率が悪化した」と考えることができる。
(2)棚卸資産回転率
従来型製品の多品種化に対応するために棚卸資産が大幅に増えたのだからこれについては異論はないと思う。
(3)自己資本比率 (or 売上高対営業外費用比率)
ストック面から借入金の増加を指摘するならば「自己資本比率」。ただし安全性指標の「自己資本比率 25.55%」が中小企業の経営指標として憂慮すべき数値かどうかはわからない。
ここで、多額の資金調達源泉を短期・長期の借入金に依存しているので「金利負担」の面から「売上高対営業外費用比率」などの指標を指摘することも出来ると思う。
第3問(設問1)
パヤシさんが「85百万円」ではないですかとの指摘をしていますが、私はsinnkaさんと同じく「93百万円」を支持します。
簡便法では『フリーCF = 営業CF - 投資CF』
として計算するのが普通なのでしょうが、与件に「当分の間は毎年5千万円の維持的投資 ・・・可能である」とあること、また問題文中に「今後工場を移転せずに平成16年度の経営状態が続くと仮定して」とあることから
『フリーCF = 営業CF - 維持的投資』で計算するべきだと思っています。
参考までに試験委員の菊井高昭氏の著書「企業ファイナンス入門」の中にはこの点についての記述が見られます。
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フリーキャッシュフローの計算方法については、いまだ確定的なものはないが、日本経済新聞社が採用している公式、つまりキャッシュフロー計算書上の「営業活動によるキャッシュフロー + 投資活動によるキャッシュフロー」という公式がよく使われる。
しかし、投資活動によるキャッシュフローの中には、投資有価証券や子会社株式の取得・売却による収入・支出のように事業活動とは直接かかわりのないものも含まれており、このような収入・支出はフリーキャッシュフローの計算から排除すべきという考え方もある。
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第3問(設問2)
計算ミスですね。←入力ミスとしたほうが無難かな。
企業価値2.353百万円 →企業価値2.325百万円 じゃないでしょうか。
第3問(設問3)
利益還元方式と類似会社比較方式で正解です。
参考までに第1次試験の受験要綱「財務の出題範囲」には「純資産方式」「市場株価比較方式」の2つがあがっています。
第4問
計算、論述ともに文句のつけようがありません。
sinnkaさんのおかげで充実した1ヶ月をすごさせていただきました。
あとはTKPのメンバー全員が結果を出すだけですね。
本当にありがとうございました。
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