あの花が咲くたび
あの花が咲くたび、子供の頃を思い出す。
私は病気がちでひ弱な子供だった。食べ物の好き嫌いも激しく、母はずいぶん苦労しただろう。
食べられたのは青い葱の入った玉子丼だけだった。
ある日、それを食べた時ひどく苦く感じた。吐き出したがほとんど飲み込んだ後だった。
母に訴えるとご近所からいただいた花をキッチンに置いたままで料理をしたらしい。葱によく似たその葉を間違って入れてしまったのだという。
その後、私は気を失い病院に運ばれた。しばらく生死をさ迷ったが、その時のことは覚えていない。
だが、あれからなぜか病気もケガも一切しなくなった。
あの花が咲くたび、長じてから知った花の特性について考える。あの花には葉にも茎にも致死性の毒があるのだという。
あの時母は本当に間違えたのか――
あれからずっと怯えた目をして見るのはなぜなのか――
いったい私は何になってしまったのか――