#能登大震災 #国の政 #精神障害者の人権
能登大震災・厚生労働省への申入れと回答【対照表】
一般社団法人人権精神ネット
【1】厚生労働大臣 武見敬三 宛 申入れ書 2024年1月24日
【2】厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課からの回答
2024年2月7日
【3】厚生労働大臣 武見敬三 宛 能登大震災に際し、厚生労働行政に関する再質問
2024年2月14日
【4】厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課からの再回答
2024年3月5日
【要望事項①】
1995年阪神淡路、2011年東日本大震災と比して、今どのような状況にあるのか?
<回答>2024/2/7【要望事項①について回答】
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課長が、本件震災後に被災地へ視察に行ったという事実はございません。
【当団体からの質問①に関する再質問】
当団体は、別件で同課長との交渉を約束していたところ、同課長が同震災のための対応に手を取られていて交渉ができないという貴省からの応答をいただき、課長が率先垂範して現地対応をしていると誤解しました。行っていないならばそれを前提に状況報告を求めたい。
【再回答】
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課長は、必要な震災対応を厚生労働省内において発災直後から行っております。
【要望事項②】
「福祉避難所」というもの自体の悲惨さ。「ソマリアの難民キャンプよりひどい」と言われた避難所の現状について
テレビ放送にて、震災後2週目に作られた福祉避難所の映像が放映されましたが、それらの映像によれば悲惨な状況でした。
【要望事項②について回答】
災害時に特別な配慮や支援が必要になる要配慮者に対する福祉避難所の確保は重要であるものと承知しています。内閣府としては発災直後から、仮設トイレ、マスク、暖房器具、消毒液、段ボールベッド等の必要な機材・物資等のプッシュ型で支援しています。また、避難所における健康管理や感染症対策を進めるため、厚生労働省がDMATやDHEAT、保健師等のチームを派遣していると承知しています。
また、内閣府としては、福祉避難所における良好な生活環境を確保するため、
・指定福祉避難所における必要な物資・器材の備蓄を図ること、
・当該施設が指定福祉避難所として機能し、要配慮者が避難生活を送る上で良好な生活環境を確保するための必要な施設整備を行うことを市町村に対して促してきています。
【当団体からの質問②に関する再質問】
週刊新潮2024年2月1日号掲載記事によれば、被災地における当初の避難所の状況は、「ソマリアの難民キャンプよりも酷い」と外国記者に言われているとのことでした。精神障害者は環境に影響されることが多く、環境の悪さから調子を崩し、精神科病院への入院になってしまいかねません。私たちは、精神障害者を希望すれば家族ごと二次避難所(ホテル・旅館等)に早急に避難できる体制を、日ごろから築いておいていただきたいと考えています。
【再回答】
災害派遣精神医療チーム(DPAT)については、1月2日に石川県庁にDPAT調整本部を立ち上げ、令和6年2月20日までに県内外から延べ160隊以上のDPATを派遣し、急性期の精神科医療ニーズへの対応や、避難所巡回等を通じた専門的な心のケア活動を行っております。
また、避難所の生活環境の確保は重要な課題であることから、平時からの備えを充実することも含め、引き続き自治体とも連携しながら取り組むことが重要であると考えます。また、ホテル・旅館等への避難についても、平時から協定等を結ぶよう、内閣府から自治体に対して促していくものと承知しています。
【要望事項③】
その人の障害に合わせた対応が必要である
【要望事項③について回答】
「障害の等級によって機械的に対応」を行っているものではないと承知していますが、引き続き、障害者の状況に照らし、必要な支援が行われるよう対応を進めます。
【当団体からの質問③に関する再質問】
例えば、精神障害2級、3級、あるいは、障害者との認定がなくとも、普段から精神的不調を感じている人に対し、ご本人の同意が原則ですが、日常の精神障害者の状況を把握している保健所等が避難所等と協力体制を築いておく方策を提案したいと考えます。貴省において、自宅避難している場合の救援物資の配給にも配慮していただければと思います。
【再回答】
発災後、避難所等における健康管理等に関しては、保健師等が精神的不調を感じている人等も含めて行い、支援が必要な方について、適切な関係機関等につなげる等の対応を行っています。
また、社会福祉法第107条において、市町村は、地域福祉の推進に関する事項を一体的に定める「市町村地域福祉計画」の策定に努めることとされています。
さらに、自治体宛ての通知により、同計画には、障害者をはじめとする地域の災害時要援護者に係る情報の把握・共有及び安否確認方法等について盛り込むこととしており、具体的には、
・ 市町村の福祉関係部局において、適切かつ漏れのない要援護者情報を日頃から把握しておくための方法や、把握した情報の集約と適切な管理の方法
・ 要援護者の安否確認情報を集約する市町村の連絡担当者を明確にする等、安否確認情報が各市町村の担当部局に円滑に報告されるための役割分担と連絡体制
等について明記することを求めています。
内閣府では被災した自治体に対して通知を発出し、個々の事情によりその地域において在宅等で避難生活を送ることを余儀なくされた避難所外被災者に対しても、必要な物資・情報等の提供を依頼しております。
【要望事項④】
精神障害者・精神的不調を訴える人には優先的にホテル・旅館への避難をさせて欲しい
④避難が必要な精神障害者や精神的な不調を訴える人に対しては、優先的にホテル・旅館等への避難を進めていただきたいのですが、貴省のお考えをお聞かせください。
【要望事項④について回答】
ホテル・旅館等での被災者の受け入れについては、宿泊施設の協力のもと地方公共団体において進められているものと承知しています。
障害者等の、災害時に特別な配慮や支援が必要になる要配慮者に対して、福祉避難所での受け入れを行っており、引き続き、関係省庁や地方公共団体と連携し、福祉避難所を含めた避難先の確保に取り組んでまいります。
【当団体からの質問④に関する再質問】
2024年2月7日時点において、現在、ホテル・旅館等の二次避難所に避難できている人は約5100人しかいませんでした。厚労省は具体的に精神障害者で二次避難所に避難できている人の数と、精神障害者でありながら二次避難所には避難できていない人の数を把握されているでしょうか。少なくとも5000人強が入れるだけの仮設住宅・みなし仮設を確保するのでなければ、全壊・半壊・一部損壊の自宅へ帰宅するか、あるいは悲惨さゆえに二次避難していたのに、元の悲惨な避難所や福祉避難所に帰るしかなくなります。
【再回答】
二次避難した精神障害者の人数や、福祉避難所に避難した精神障害者の人数等については把握しておりません。
なお、厚生労働省においては、高齢化が著しく進んでいることに加え、半島という地理的制約から地域コミュニティの再生に特に大きな課題を有する能登地域6市町については、住宅半壊以上の被害を被った高齢者・障害者世帯や、若者・子育て世帯を含め、資金の借入や返済が容易でないと見込まれる世帯を幅広く対象とし、住宅や家財等の再建支援のために最大300万円を給付する「地域福祉推進支援臨時特別交付金」を創設することとしています。
【要望事項⑤】
精神障害者の個々の特性に応じた対応をしていただきたい
【要望事項⑤について回答】
一般的に、災害等によるストレスや様々な要因により精神的な症状や身体的な不調が出現する場合があるものと承知しています。
メンタルヘルス対策については、都道府県や指定都市に設置されている精神保健福祉センター等において、精神障害者も含めて相談対応を行っており、精神科医療機関等につなぐなどの対応が行われています。
お尋ねのような場合に、症状の悪化や不安に思うことがあれば、「石川こころのケアセンター」等に気軽にご相談頂きたいと考えており、県においても周知に努めているところです。
【当団体からの質問⑤に関する再質問】
私たちは二次避難を求めているのであって、悲惨な状況にある「福祉避難所」があるからいいではないかと言われたようで、言葉を失います。回答では最終的には精神科病院への収容体制があるからいいではないかと言われているように感じます。私たちの考えとは真逆です。
【再回答】
二次避難については、家族と一緒に避難する等、それぞれの避難者の事情に応じて避難先となる宿泊施設とのマッチングを行っているものと承知しております。今後も丁寧なマッチングが行われるよう、県の取組を支援していくことが重要であると考えます。
【要望事項⑥】
被災した精神科病院には、相応の支援をお願いしたい
【要望事項⑥について回答】
被災地にある精神科病院においては、基本的に入院医療機能は失われておらず、現状としては県外避難が必要な状況ではないと認識しております。
【当団体からの質問⑥に関する再質問】
当団体理事が、2024年2月8日、被災地にある単科精神病院、七尾松原病院の事務次長みのり氏に尋ねたところ、以下のような回答を得ました。・地域は断水しているが、受水槽があり2日目から自衛隊による給水を受けている。ただし当初は量に制限あり。・トイレは当初一部制限したが今は制限なし。・風呂は当初1週間から10日間は入れなかったが、今は良い。・グループホームの建物が壊れ、居た人は避難所(福祉避難所ではない)に行っていた。・訪問看護の建物は全壊、車も壊れた。今は別建屋で車は融通して稼働している。
【再回答】
前回の回答は、「県外避難はどのような状態にあるのか」とのご質問に対してお答えしているものです。お尋ねの法人が運営するグループホームの中には、建物等に被害を受け、業務の継続が困難となった事業所があり、当該事業所の利用者は、避難所への避難や、他のグループホームなどへ転居されたと承知しています。なお、避難所へ避難された方に対しては、利用していた事業所の職員が避難所を訪問されるなど、引き続き支援が行われているものと承知しています。
【要望事項⑦】
「私たちぬきに私たちのことを決めるな」
⑦今般、障害者運動・施策においては、「私たちぬきに私たちのことを決めるな」ということは通念となっておりますところ、貴省における被災地に対する長期支援計画作成については、この原則・通念に則り、精神障害者の全国団体である当団体を含めた精神障害当事者の団体からメンバーを入れて検討をしていっていただきたいと考えます。このことに関しての貴省のお考えをお聞かせください。
【要望事項⑦について回答】
厚生労働省においては、これまで、被災自治体や関係団体と連携し、被災地支援に取り組んできたところです。引き続き、幅広く関係者のご意見を伺いながら、必要な支援を行ってまいります。
【当団体からの質問⑦に関する再質問】
「連携している関係団体」に精神障害当事者団体は含まれていますでしょうか。含まれているならばその団体名を開示いただきたいと思います。当団体は、精神障害者の全国的当事者団体としての実体を持つ一般社団法人人権精神ネットを、貴省との連携に加えていただきたいと希望しております。
【再回答】
被災地支援に関しては、引き続き、必要に応じて当事者団体を含め、被災自治体、関係団体と連携をし、ご意見を伺いながら、必要な支援を行うこととしております。
【2024/2/14付け追加申し入れ】
- 処方箋無しで薬を欲しい
1月12日付けの貴省、精神・障害保健課長宛て申し入れを再度お尋ねします。
(1)大震災被災の際には、処方箋無しでもお薬手帳を示せば薬局等で(DPAT等でも)従来のものか同等の薬が出る制度が、阪神淡路大震災の経験から創設されています。一般の精神障害者にはこの制度を知らない人が多いので、制度の周知徹底を図っていただきたい。
【回答】
医療機関が被災し、医療機関の受診や医師等からの処方箋の交付が困難な場合、例外的に薬局が処方箋を持参していない患者に対して処方箋医薬品を交付することを可能としていますが、医師・医療機関が対応可能な場合には処方箋を交付しているほか、事後的に処方箋を交付する場合があります。
このため、ご指摘の取扱いはあくまでも処方箋に基づく薬剤の交付が困難な場合に行われる例外的な対応であり、かつ、現場の医療機関等の状況にも影響されるものです。
したがって、被災して患者の方の手元に必要な医薬品がない場合には、まずは服用している医薬品について医師、薬剤師等の関係者に相談いただけるよう周知することが重要と考えています。
②初動の遅れが指摘される中、DPATは機能したのか
(2) 大震災被災地では薬局自体が被災していて上記のことができない場合が多いと思います。DPAT等の早期活動と被災全域への派遣が必要になります。今回の被災では、初動の遅れが各方面で指摘されていますが、DPATの活動についてはどのような状況であったのか教えてください。
【回答】
災害派遣精神医療チーム(DPAT)については、1月2日に石川県庁にDPAT調整本部を立ち上げ、令和6年2月20日までに県内外から延べ160隊以上のDPATを派遣し、急性期の精神科医療ニーズへの対応や、避難所巡回等を通じた専門的な心のケア活動を行っております。
③「災害関連死」は国による殺人である
(3) 2024年2月7日時点において、能登半島大震災の災害関連死は既に15人出ています。東日本大震災では災害関連死者の内の4人に1人が障害者であったと言われます。とりわけ精神障害者は避難所での生活に適応困難であり、避難所で孤立したり排除されたりして症状を悪化させて、精神科病院への入院となることが阪神淡路大震災時からありました。災害関連死は、国と行政の対応によりその多くが防止できるのではないでしょうか。
【回答】
避難所においては、DWATやDPATといった福祉や心のケアの専門職チームが福祉的な支援を実施しております。この他、在宅の障害者の方については、被災高齢者等把握事業等を活用して、相談支援専門員等が状況把握を行い、適切な支援への繋ぎを行うなど災害関連死の防止に努めております。
厚生労働省としては、災害関連死の防止を含めた被災地支援に関して、引き続き、今後も必要に応じて被災自治体や関係団体と連携をし、当事者を含めた関係者のご意見を幅広く伺いながら、必要な支援を行ってまいります。
【まとめ】
★≪重要≫ホテル・旅館等への避難につき「平時から協定を結ぶよう、内閣府から自治体に対して促していく」とされていることを重視する必要があると思います。内閣府への要求と、各市町村等において「平時から協定を結ぶよう」に要求する必要があります。
★「ソマリアの難民キャンプ以下」という現状への言及がなく、「避難所の生活環境の確保は重要な課題」と言われても空々しい。次の大震災時においてもほとんど改善はないであろう。
★自主避難所への物資等の配布が2月中に終了している中で、今後も「避難所外被災者」に「必要な物資・情報の提供」が行なわれるとは考えにくい。自力更生を求めるのが国の姿勢なのか。
★驚くべきことに、二次避難者や福祉避難所に避難した精神障害者の人数を国は把握していないとのこと。「特別交付金」がたったの300万円⇒棄民化・廃村化の攻撃ではないのか。
★「私たちぬきに私たちのことを決めるな」について、すでに私たちと対話をしており、それは評価する。しかし「要望を聞きおく」態度が垣間見える。民主主義の原理は「当事者が決定に参加することだと強調しておきたい。
★処方箋無しで薬がもらえる制度は制定後非常に役に立ってきました。それを「例外」にすることで縮小される扱いはおかしい。結局、医師を頂点とする精神医療体制の護持に歴史逆行するものではないか。
★「災害関連死は国による殺人である」点について、「引き続き、当事者を含めた関係者のご意見を幅広く伺いながら、必要な支援を」していくということは当然であり、まさに、当事者・当事者団体の意見をもっともっと言って制度に反映させたい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます