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鳥羽水族館(三重県鳥羽市)は3月17日から、ラッコの見学時間を1分間に制限することを決定した。これは、福岡市の水族館で飼育されていたラッコが1月4日に死亡し、鳥羽水族館が国内唯一のラッコ展示施設となったことによるもの。予想される混雑への対応として、人数制限と時間制限が導入される。
ラッコファンにとっては、「国内で唯一のラッコ」となるこの機会に、ぜひその愛くるしい姿を目に焼き付けておきたいところ。しかし「1分で何が見られるのか?」と疑問の声も上がりそうだ。そもそも、ラッコが寝ていた場合はどうするのか。運が悪ければ、ラッコの背中だけを見て終わる可能性もある。さらに、1分間の間にラッコがエサを食べる、毛づくろいをする、水中でくるくる回るといった「ラッコらしい」動きを見られるかどうかは完全に運次第だ。
一方、鳥羽水族館側も苦渋の決断だったようだ。ラッコの人気は高く、多くの来館者が長時間水槽前に滞留すれば、混雑が悪化し、他の来館者の見学機会が奪われる恐れがある。また、ラッコ自身のストレスを考慮する必要もあるだろう。つまり、見学時間制限は、ラッコを「じっくり観察したい」という来館者の思いと、「ラッコに負担をかけない」という動物福祉のバランスを取るための措置なのだ。
それにしても、ラッコが国内でこれほど貴重な存在になってしまうとは、時代の流れを感じる。かつては全国の水族館で見られたラッコも、今や鳥羽水族館のみに。もはや「ラッコ詣で」として参拝レベルの価値を持ちつつある。いずれ、「ラッコを見たことがある世代」と「見たことがない世代」で価値観の違いが生まれる日も近いかもしれない。
そして、最終的に「ラッコは動画で見るのが一番」という結論に至るのかもしれない。高画質な映像と解説付きのYouTube動画なら、好きなだけラッコを楽しめる。いや、そもそもラッコが国内で見られなくなったら、バーチャルラッコが開発されるのかもしれない。未来の水族館は、VRゴーグルを装着して「好きなだけラッコを観察できる」時代になるのではないか。
ラッコを「1分間」見学するか、それとも未来に期待するか。どちらにせよ、今この瞬間、鳥羽水族館のラッコたちは、全国のラッコファンの視線を一身に集めている。
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