古事記 上つ巻 現代語訳 十九
古事記 上つ巻
天照大御神と須佐之男命
宇気布・三女神の誕生
書き下し文
(天照大御神と須佐之男命)故尓して各天安河を中に置きて宇気布時に、天照大御神、先づ建速須佐之男命の佩ける十拳剣を乞ひ度し、三段に打ち折りて、奴那登母母由良爾、天之眞名井に振り滌ぎて、佐賀美邇迦美て、吹き棄つる気吹の狭霧に成れる神の御名は、多紀理毘売命。亦の御名は奥津嶋比売命と謂ふ。次に市寸嶋比売命。亦の御名は狭依毘売命と謂ふ。次に多岐都比売命。三柱。
現代語訳
天照大御神と須佐之男命
こういうわけで、各々天安河(あまのやすのかは)を中に置いて、宇気布(うけひ)の時に、
天照大御神が、まず先に、建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)の佩(は)ける十拳剣(とつかのつるぎ)を乞ひ度(わた)し、
三段に打ち折って、奴那登母母由良爾(ぬなとももゆらに)、天之眞名井(あまのまない)に振り滌(すす)いで、
佐賀美邇迦美(さがみにかみ)て吹(ふ)き棄(う)つる気吹の狭霧に成れる神の御名は、
多紀理毘売命(たきりびめのみこと)。またの御名は奥津嶋比売命(おきつしまひめのみこと)といいます。
次に市寸嶋比売命(いちきしまひめのみこと)。亦の御名は狭依毘売命(さよりびめのみこと)といいます。
次に多岐都比売命(たぎつひめのみこと)。
三柱。
・天安河(あまのやすのかは)
高天原にあるとされた川の名
・奴那登母母由良爾(ぬなとももゆらに)
「ぬ」は、璦(たま)のこと。「な」は助詞の「の」。「と」は音。もゆらにとは、玉が揺れ動き、触れ合って鳴る音を表す語。
・天之眞名井(あまのまない)
高天原にある神聖な井
・佐賀美邇迦美(さがみにかみ)て
がりがりと噛む。しきりに噛む。
現代語訳(ゆる~っと)
天照大御神と須佐之男命
宇気布・三女神の誕生
こういうわけで、各々天安河を真ん中に置いて、誓約(うけい)をする時に、
天照大御神が、まず先に、建速須佐之男命が腰に帯びていた十拳剣を求め受け取り、
それを三段に打ち折って、剣の玉の音が揺れ動き、触れ合って鳴る音を響かせて、天の眞名井に振りすすいで、
三柱。