古事記 上つ巻 現代語訳 四十七
古事記 上つ巻
国譲り
天若日子の葬儀
書き下し文
故、天若日子の妻下照比売の哭く声、風と響き天に到る。是に天在る天若日子の父が天津国玉神及其の妻子聞きて、降り来て哭き悲しぶ。其処に喪屋を作りて、河鴈を岐佐理持と為、鷺を掃持と為、翠鳥を御食人と為、雀を碓女と為、雉を哭女と為、如此行ひ定めて、日八日夜八夜を遊ぶ。
現代語訳
故に、天若日子(あめわかひこ)の妻・下照比売(したでるひめ)の哭(な)く声が、風とともに響き、天に到りました。ここに、天に在た、天若日子の父が天津国玉神(あまつくにたまのかみ)及びその妻子が聞いて、降り来て、哭き悲しみました。其処(そこ)に喪屋(もや)を作って、河鴈(かはかり)を岐佐理持(きさりもち)とし、鷺(さぎ)を掃持(ははきもち)とし、翠鳥(そにどり)を御食人(みけびと)とし、雀を碓女(うすめ)とし、雉(きぎし)を哭女(なきめ)とし、その通り、行い定めて、日八日夜八夜(ひやかよやよ)を遊びました。
・喪屋(もや)
1 ・墓の近くに造った、遺族が喪中を過ごす家。 2 ・本葬まで死体を安置しておく所。もがりのみや。あらき
・河鴈(かはかり)
雁の一種
・岐佐理持(きさりもち)
葬送のとき、死者への供物をささげ持って従う者
・掃持(ははきもち)
けがれを払い除くため、また墓所を清掃するためともいう
・翠鳥(そにどり)
=カワセミ。水辺に生息する小鳥。鮮やかな水色の体と長いくちばしが特徴
・御食人(みけびと)
死者に供える食物を調理する役目の人
・碓女(うすめ)
米をつく女。舂女(つきめ)
・雉(きぎし)
キジ
・哭女(なきめ)
葬式のときに、儀礼的に泣く女性
・遊ぶ
音楽を奏でて、舞うこと。遊離した霊魂を遺体に戻す復活の儀礼
現代語訳(ゆる~っと訳)
こういうわけで、
天若日子の妻・下照比売の泣き叫ぶ声が、
風とともに響き、
天に届きました。
これを天にいる、
天若日子の父・天津国玉神と
その妻子が聞いて、
降り来て、
泣き叫び悲しみました。
そこに喪屋を作って、
河雁を
死者への供物をささげ持って従う役目とし、
サギを
箒でけがれを掃き清める役目とし、
カワセミを
死者に供える食物を調理する役目とし、
スズメを
米をつく女の役目とし、
キジを
儀礼的に泣く女性の役目とし、
儀礼の次第を定めて、
日八日夜八夜にわたって
音楽を奏でて舞い、
死者を弔いました。
続きます。
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ありがとうございました。