古事記 上つ巻 現代語訳 四十九
古事記 上つ巻
国譲り
建御雷神と天鳥船神
書き下し文
是に天照大御神詔りたまはく、「また曷れの神を遣はさば吉けむ」とのりたまふ。尓して思金神及諸神たち白さく、「天安河の河上の天の岩屋に坐す、名は伊都之尾羽張神、是れ遣はすべし。若し亦此の神に非ずば、其の神の子、建御雷之男神、此れ遣はすべし。また其の天尾羽張神は、逆に天安河の水を塞き上げて、道を塞へ居り。故他神は得行かじ。故別に天迦久神を遣はして問ふべし」とまをす。故尓して天迦久神を使はし、天尾羽張神に問ひたまふ時に、答へ白さく、「恐し。仕へ奉らむ。然れども此の道には、僕が子、建御雷神を遣はすべし」とまをすすなはち、貢進(たてまつる)る。尓して天鳥船神を建御雷神に副へて遣はしたまひき。
現代語訳
ここに、天照大御神が仰せになられ、「また、いずれの神を遣わしたら吉いだろう」とおっしゃられました。しかして、思金神及び諸神たちがいうことには、「天安河の河上の天の岩屋に坐(いま)す、名は伊都之尾羽張神(いつのをはばりのかみ)、これを遣わすべきです。もし、またこの神にあらずは、その神の子、建御雷之男神(たけみかづちのをのかみ)、これを遣わすべきです。またその天尾羽張神(あめのおはばりのかみ)は、逆に天安河の水を塞き上げて、道を塞ぎ居ます。故に、他神は行くことができません。故に、別に天迦久神(あめのかくのかみ)を遣わして問うべきです」といいました。故に、しかして天迦久神を使わし、天尾羽張神に問う時に、答えていうことには、「恐(かしこ)し。お仕(つか)えしましょう。然れども、この道には、僕(やつかれ)が子、建御雷神を遣わすべきです」といいました。すなはち、貢進(たてまつ)りました。しかして、天鳥船神(あめのとりふねのかみ)を建御雷神に副(そ)えて遣わしました。
・天安河(あめのやすのかは)
高天原にあるとされた川の名
・貢進(たてまつる)
=(こうしん)推薦して送り出すこと
現代語訳(ゆる~っと訳)
ここに、天照大御神は、
「また、
いずれの神を派遣したらよいでしょうか?」
といいました。
そこで、思金神と諸神たちは、
「天安河の上流の天の岩屋にいる、
名は伊都之尾羽張神、
これを派遣べきです。
もし、
この神でない場合は、
その神の子、建御雷之男神、
これを派遣するべきです。
また、
天尾羽張神は、
逆に天安河の水をせき止めて、
道を遮断しています。
こういうわけで、
他神は進むことができません。
そのため、
天迦久神を派遣して
問い尋ねるのがよいでしょう」
といいました。
そこで、
天迦久神を派遣して、
天尾羽張神に問いになった時に、
答えて、
「恐れ多いことです。
お仕えいたしましょう。
しかし、
葦原中国への道には、
私の子、建御雷神を派遣するべきです」
といいました。
直ちに、
推薦して送り出しました。
そこで、
天照大御神は、
天鳥船神を建御雷神に付けて派遣しました。
続きます。
読んでいただき
ありがとうございました。
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