『ありがち日記』

黒澤はゆま『小説で読む名作戯曲 曾根崎心中』

文楽が観たくなる!!
原作/近松門左衛門


ストーリー:
元禄時代、難波の街。物心ついたころから、廓という特殊な世界で生きてきたお初。醤油屋の手代・徳兵衛に惹かれ、愛し合うものの、途絶えた二人の未来。向かった先は、曽根崎の森だった。

華やぎと活気、そして死を縁取る闇。騙り、憎しみ、絶望、そして愛。
すべてを呑み込む大坂の街で、「恋の手本」となった二人の物語。
元禄文化を代表する近松作品の最高傑作を、気鋭の歴史小説化が描く。 

文楽や歌舞伎などでは有名な近松門左衛門の戯曲、曾根崎心中。それを歴史小説家の黒澤はゆまさんが我々現代人にも馴染みやすく小説という形で描いている本作。たぶん、集中して2~3時間くらいで読み終わるくらい、コンパクトにまとめられているかなと。だからと言って、物足りない感じは全くないのがすごいなぁ。メインのお初と徳兵衛を中心に、どの登場人物も人間らしく悩み動き喋る。

文楽でしか観たことはないけれど、そこには描かれていない部分も黒澤さんならではの解釈(多くの文献に裏打ちされた確かな解釈)もあって興味深い。死を前にした2人がどんな気持ちでどんなふうに最期を迎えたのか。なるほどな~と思わず唸ってしまった。生々しく頭の中にその光景が浮かび上がって、まるでその場に自分がいるかのような。

これを読んだ後に、実際に作品を観たらまた面白そう。いつになるかわからないけれど、今度舞台で観ることになったら、またこの本を読んでから臨みたいものだわ。古典に馴染みが無いという方にもお勧めできるかもしれない。

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