どこか懐かしい物語。
ストーリー
1979年、台北。中華商場の魔術師に魅せられた子どもたち。現実と幻想、過去と未来が溶けあう、どこか懐かしい極上の物語。現代台湾を代表する作家の連作短篇。単行本未収録短篇を併録。
かつて実在した台湾の中華商場を舞台に描かれる連作短編集。
タイトルにもある通り、どの話にも歩道橋の魔術師が登場するけれど、不気味な存在であったり、どこか憎めない愛嬌のある存在であったりします。彼のマジックが本物かどうかはわかりません…。
当時の子供たちが見て経験した商場の雰囲気は、今となっては私たちは話を聞いたり写真や映像でしか知ることはできないのだけれど、この物語を読み進めるにつれて、ファンタジーのようなマジックにかかったような不思議な余韻に包まれていきます。商場という生活感溢れる舞台と、子供たちから見た世界(喪失、性、冒険、など)との対比もまた面白くて。
思い返してみると、自分も子供の頃の記憶は現実なのかどうかも曖昧だったりする。大人になって懐かしむ時にまるで物語のように思い出されるってこともある。
台湾文学にもっと触れてみたいと思わせられた作品。
「中華商場」についてはほとんど知識はなくて、どんなものかもわからなかったのでググってみまして。この本を読む人はまず当時の写真などを見てみると、頭の中にイメージがぐんっと広がるのでおすすめ。
ドラマ化されているようだけど、日本では配信されていない模様。えー、見たかったー。残念。。。