恋しくて

　私の携帯に電話をかけた人はいきなり「恋しくて～♪」という歌を聴くことになる。いわゆる待ちうたというやつである。大好きなアンジェラ・アキの曲「サクラ色」のサビの部分だけが流れる仕組みである。いろいろと設定の仕方があるのかもしれないが、よく分からないので、誰がかけてきても同じようにアンジェラの綺麗な歌声が流れる。だから仕事の関係者からは「ビジネスでかけているのに、ちょっと。」などと、苦言を呈されることがないでもないが、別に会社が電話代を払ってくれているわけでもないので、馬耳東風と言ったところである。それに、私のことを知っている人の多くは「またウケ狙っているでしょう。」などと愉快そうに話をしてくれるし、そもそもおじさんたちの90%は待ちうたなるものの設定の仕方が分からないのでうらやましいのではないかと個人的には推測している。ただ、どうしてこの曲を流しているのか、本当のところは誰も知らないのである。

この曲をみんなに聴いてほしいわけではない。
想いをこめて、大切な人に聴いてほしいと思って設定しているのである。
それが誰なのかは言えないけれど、自分の想いと気持ちがかぶる曲だから、
自分の想いをストレートに出しすぎない曲だから、
だからこの曲でなくてはいけない。
そんな気持ちが込められている。
　
待ちうたで曲の全部は聞けないけれど、歌詞全文はこうである。

○サクラ色

　川沿いに咲いてたサクラ並木を
　共に生きていくと　二人で歩いた
　世界に飲み込まれ　吐き出されても
　ただそばにいたくて　もっともっともっと

　時間の流れと愛の狭間に落ちて
　あなたを失った　

　恋しくて目を閉じれば
　あの頃の二人がいる
　サクラ色のあなたを忘れない　ずっとずっとずっと

　あなたから離れて　自分を知った
　夢に近づきたくて　もっともっともっと

　否定の言葉に押しつぶされても
　這い上がり戦い続けた

　苦しくて目を閉じれば
　あの頃の自分がいる
　サクラ色の私を忘れない　ずっとずっとずっと

　「ふるさと　心の中で今でも優しく響くよ」そんな歌が聴こえる

　恋しくて目を閉じれば
　あの頃の二人がいる
　サクラ色のあなたのことを
　サクラ色のわたしのことを
　サクラ色の時代を忘れない　ずっとずっとずっと
　ずっとずっとずっと

いつかはこの曲を変更する時がやってくるだろうと思う。
ただ想いを抱え続けたまま、時代の流れに押し流されて変えるようなことにならなければいい。
そんなことを思っている。