先日、AmanonさんのブログやTwitterで「魔法のミニカー」を使用した、カードを使わないマジック「セーフティドライブ」が紹介されていました。
「セーフティドライブ」マジシャンはミニカーを観客に渡し自由に動かしてもらいます。次に道路が描かれたマスキングテープをテーブルに貼り、その上にミニカーを置き指で押してもらいますが『止まれ』と書かれた位置までくると突然動かなくなります。他の絵の道路で試しても必ず交通ルールを守ります。 pic.twitter.com/ymlGFTQEfp
— Amanon (@cacaobrown) March 2, 2023
ブログ「Hey presto!」
いつもいいマジック創られるよなぁと見てましたら、「このマジックには、テンヨーの「魔法のミニカー」を使用しています。すでに製造中止になっていますが」と書かれており、「あれ?そうだっけ?(世の中に全然ついていけてない)」とググってみると確かにだいぶ前に生産終了したのか「売り切れ」「在庫なし」でした。国内での購入は難しそう…マジックショップでは逆輸入バージョンが売られてたりする…。まだ海外のお店には残っていますが、製造を中止したなら、そのうち入手困難になるに違いない…。というわけで、カップ&ボール以外は久々ですが、オリジナルの「The Koornwinder Kar」を中心に紹介させて頂くことにしました。何回か演じた事はありますが、レパートリーと言えるほどは演じていません、やはり上手く止まらなかったりした経験で頻度が減ったのかもしれません😅
私がこのマジックを知ったのは、恐らく多くの方がそうだと思いますがタマリッツ氏のビデオでした。20年以上前ですね。A-1 Multimedia だったかL&Lだったか…。もちろん現在も入手可能で、Lessons in Magicという3枚組のDVDのVol.2に収録されています。マジックのタイトルは「El Cochecito」です。スペイン語で「玩具の自動車」即ちミニカーという意味だと思います。例えばフレンチドロップさんで購入できます。
また、このマジック単体の映像も販売されており、例えばストリートマジシャンさんでダウンロード販売をしています。
El Cochecito video DOWNLOAD (Excerpt of Lessons in Magic Volume 2) by Juan Tamariz
この商品ページでも見れますが、演技の映像を示します。
8分を超える実演ですが、見ていてとても不思議で、とても楽しく、是非やって見たくなるマジックではないでしょうか?まあタマリッツ氏のキャラクターが際立っているのでこれをそのまま行うのは無理というものですが(;^ω^)
このマジックはタマリッツ氏お気に入りのマジックで多くのテレビ番組で実演してるそうです。また、氏の著書 Sonataでも実演するのが好きなカードマジック8つに含まれています(私の持っているSonataでは、p270)。さらに、氏の集大成とも言われる「The Magic Rainbow」でも3章で出てくるそうです(この本は持っていません…)。
と、これだけタマリッツ氏に気に入られているこのミニカーを作ったのは、オランダのマジシャンで1970年のFISMのカード部門3位を受賞しているDick Koornwinder氏です。Dick氏は1971年、オランダで行われたコンベンションにおいてこの「車」で発明部門の賞を受賞しています。これが、この車、「Koornwinder Kar」の始まりです。友人だったFred Kaps氏の紹介で「Koornwinder Kar」はKen Brooke氏が販売権を得て商品化されます。しかし製造権はDick氏が持ち続けたため、氏が作った車以外は模倣品となります。赤い木でできた車で本当に玩具としてありそうな車です。仕掛けがあるように見えません。赤という色もいいですね。黒や緑のマットとも合いますし、ブルーバックのカードとも合いますね。
Dick氏の実演映像です。何故か日本語の訳が入っていますので、日本で放送されたテレビ番組か何かでしょうか…タマリッツ氏の手順と比較してみるのも良いと思います。
タマリッツ氏とのいい感じの写真もあります。
https://www.instagram.com/p/la-7ezvrji/
ちなみに、この赤い車を使ったカード当て、日本の有名マジシャンもテレビ番組で実演されてました。そうです。前田知洋氏ですね。実は私はこの映像を見ていないのですが知人からテレビ映像のキャプチャ画像を1枚頂きました。恐らく「Koornwinder Kar」だと思います。
Ken Brooke氏が販売されていたと思われるこの車ですが、一時期販売されて無かったのではないかと思われます。(恐らく)2004年にHocus Pocusが「Original Koornwinder Kar」として、発売を開始しています。価格は約150ドルという高額でした。車はDick氏が1台1台作成し、正規品として番号を付けました。といっても、車体に番号があるのではなく(どうせなら焼き印を入れればよかったのにと個人的には思います)、付属するKen Brooke氏が書いた解説冊子に番号が振られています。また入れ物の巾着にも同じ番号の紙が巻いてあります。
私が持ってる冊子の番号のページの写真です。car numberの上にメッセージとDick氏のサインと思われるものが書いてあります。そこには車のとてもかわいいイラストもあり、これが特別なものか多くの冊子に書いたのは不明です。
さて、このマジックはテレビなどの影響もあり、とても(マジシャンにとって)人気商品となり、模倣品が販売されるようになりました。それらが本当に法的に問題あるかと言えばちょっと専門ではないのでわかりませんが、実際いくつかのバージョンが販売されていました。私も普通にマジックショップで販売されていたのでいくつか購入しました。
・モデル・カー
UGMさんで購入しました。車体が透明なタイプです。クリスタル・カーと呼ばれることもあります。UGMさんの解説書には「UGMがスペインのセレクトシオネス・マヒカスとの契約に基づいて…」と書かれているので、ある意味きっちりしてそうですが、Dick氏無許可品です…。私は自分が実演するときはこの車を使っています。それは、透明だからではなく、この車がもっともタイヤの幅が広く摩擦力が大きいため「ピタッ」と止まるからです。(ちなみに、透明であることがさらに不思議を作っているとか、イヤ逆に良くない、と言ったディスカッションがネットではされてました)。会社名からして下記の商品だと思います
Morlas Car (Crystal Car) by Selecciones Magicas, Morlas
さらに、この商品のコピー品として下記のものもあります。先のはホイールが白でしたが、こちらは金ですね。
Crystal Car Buggy by Mak Magic
リアルマジシャンRYOTAさんがテレビでこれらと同じ商品かは不明ですが、これらのように透明な車を使ってマジックをされてました。
・Cesaral Lego Car by Cesar Alonso (Cesaral Magic)
Hank Leeのお店で購入しました。レゴのタイプです。アイディアとしては非常に良いと思いました。人(人形)を乗せることが出来るのでいろいろなストーリーが作れそうですし、上側の作りを変えれば、様々な種類の車、いや、車だけでなく、電車や飛行機なども作れるため、これまたいろいろなストーリーのマジックできると思いました(行きたい国の国旗カードの上で止まるとか…)。さらに、ギミック部分と同じ(もしくは似た)ノーギミックのタイヤに付け替えればプレゼントもできてしまう…。ただ、ちょっとMorlas Carに比べると止まりが悪いです…
マジックカフェに書かれていた内容で信憑性に乏しいので話半分だと思いながら書きますが、そこでは、Dick氏もレゴバージョンを考えていたが広めたくなく、リリースしなかったとのことです。で、先に他から商品化されてショックだったとか…また、作ったレゴバージョンをタマリッツ氏の娘にプレゼントしていたとも書かれていました(間違っていたらご指摘ください)。ちゃんとDick氏に許可をもらって高精度のものを作ったらいいのにと個人的には思ったりします。
ペンギンマジックでは販売が止まってますが作成元のCesaral Magicでは購入できそうに見えます(本当にできるかは不明)
・Car Buggy by Mak Magic
タネンで販売されていたようにに記憶しています。購入しましたが作りが良くなかったため今は手元にありません。値段が安かったのでこれを購入した人も多かったと思われます。無許可バージョンです。
・New Koornwinder Kar(魔法のミニカー) by Tenyo
テンヨーがWorld Greatest Magicシリーズとして2007年、Dick氏の許可を正式に得て製造・販売を始めたギミックの車です。日本では「魔法のミニカー」という商品名ですが海外では「New Koornwinder Kar」という名前で販売されています。赤にしたのはやはりDick氏のオリジナルを意識したのでしょうか...。そして、テンヨー独自の機能として、これまで難しかった手渡しできる機能を搭載しました(まあオリジナルでも大丈夫だと思うんですけどね)。さらにこの機能を実装することでメモリー機能も追加されました。素晴らしい機能なのですが、これら新機能についてはその操作性や操作時の音なども含め賛否両論あります。また、プラスチックという素材や止まり具合に関してもいろいろ意見があります。テンヨー・イズム(TENYO-ISM)では、カードの上や横を走らないこの車を使ったマジックが解説されていました(まあ、通常の使い方の方がいい気がしますが(;^ω^))。
I-MAGICさん販売されていたこの車とカーニバル・アサシンデックを組み合わせた手順もあったので撮影しました😊
https://youtu.be/hprMuas4_f4