久々の「My Repertoire」です。私の数少ないレパートリを紹介させて頂く記事ですが、もしかしたら今年はじめてかもしれません…もう、今年終わりですけど(;^ω^)。今回はいわゆるクロック・マジックです。クロック・マジックというのはトランプを時計の文字盤のように並べて行うマジックで非常に多くのバージョンがあります。私が行っている手順もそれほど変わったものではありませんので、「普通だね」と思われるかもしれませんが、ほぼセルフワーキングで効果的なマジックでありますので紹介させて頂きます。
多くの入門者向けマジックの本にクロック・マジックは解説されてますので、それまでも目にしたことがあったかもしれませんが、私がはじめて自分で演じてみたいと思ったのは、ゆうきともさんの「ワイズワークス3」の「オーバータイム」を観たときでした。このビデオでは、実演のみで解説は無かったのですが、不思議なことはもちろん、観客との
やり取りもしっかりできる素晴らしい手順でした。
解説が無いので、当時正確なやり方はわからなかったのですが、この手順を見よう見まねで少し演出を変えた手順を演じるようになりました。クロックマジックのマジックの良いところは観客が選ぶカードは時間によらず決まっていますので、単にカードは当てるだけでなく「予言」することができます。また、マジシャンは時計の文字盤のようにトランプを並べる時に、観客が決めた時間を知ることができます。ですので、後ろを向いて観客が時間に対応するカードを覚えている間にちょっとしたことならできます。
私がやっていた手順のアウトラインを示します。はじめに何かが入った布袋をテーブルに置いておきます。そして、手順を進めてカードを時計の文字盤のようにカードを並べたらポケットから鍵を出して時計の針のように置きます。「これで時計っぽいですよね」という感じです。そして、決めた時間と対応するカードを観客とのやり取りで当てた後、「実はこの袋の中には南京錠をかけた木箱がありましてね...」と木箱を取り出し(マギーボックス)観客に南京錠を開けてもらいます。するとその箱の中には写真のようなテントウムシの形をした時計が入っていて、握ると羽が開いて時計が見えますといって、観客に羽を開けてもらいます…すると確かに中に時計があり、その針は先程観客自信が決めた時間を指しています!さらにテントウムシの羽にはハートのシールが2枚貼ってあり、先程選んだカード、ハートの2を示しています。「このテントウムシはあなたの時間とカードを知っていたみたいですね。」という感じで終わります。
最近はこの演出ではなく、袋の代わりに写真のようなボックスを置いておき、時間などを当てた後で「実はこの中にはおじいさんの形見の懐中時計の写真が入ったアクリル製のフォトフレームが入っているのですよ…。何時を指した写真だったかな…」といい、2重になっている箱を開もらうと観客の決めた時間を指す写真が入っています!また、箱には裏向きのミニカードが入っており、これは?とめくると、時間に対応したカードである!という演出です。単純すぎる発想でお恥ずかしいですが、見てお分かりのように「Frozen in Time(あなたの好きな時間) - ハイテクバージョーン」を使っております。今は販売されていませんが、まだページがありましたので示します。
Frozen in Time(あなたの好きな時間) - ハイテクバージョーン |メーカーから探す,益田克也(ATTO)や手品グッズ揃うマジックショップ|セオマジック
この商品非常にいいのですが、2点ほど気になるところがありました。1つは「音」です。結構振動音が響くので箱をそのまま机の上などに置くと正直厳しいです。そこで、もう1重箱を増やし、中にスポンジを入れることで、音の問題を無くしました。もう1つは木箱の外観です。和な感じが強く、「へその緒の箱みたい!」と言われてしまったこともあります(;^ω^)。そこで、せめてもということでビンテージワックスで色を付けました。本当はもう少し「古い」感じを出したいのですが…
演じてるマジックについては以上なのですが、関連情報を少し述べます。先に述べましたように私が最も影響を受けたのは、ゆうきともさんのワイズワークスの演技でした。
ゆうきとも「ワイズ・ワークス4」(DVD)
ゆうきとも氏のレクチャー・ビデオ・シリーズ「ワイズ・ワークス / Wise Works」の第4巻です。(発売元はUGM)制作年度の表記はありませんが、2004年にリリースされた模様...
その後、ゆうきさんはご自身の手順をさらに改良され、「ゆうきとものカードミラクルズ・第3集」で実演・解説されています。このマジック単独ではなく、前のマジックとうまくつながり、エンディングとしてふさわしいインパクトのある手順に仕上がっています。
【大注目シリーズ!】ゆうきとものカードミラクルズ・第3集〜オリジナル作品集としてのレクチャーDVD!〜 [monthly Magic Lesson Shoppers]
流石だと思ったのは、このクロック・マジックで、面倒なところ、ちょっと引っかかってしまうところに、きっちり改善策を施しているところです。このマジックを実際にされたことがある方なら共感頂けると思いますが、このマジックでは基本的な演出にしても以下の点が少しストレスになります。
1.特定のカードを特定の位置にセットする必要がある
2.観客にカードをポケットに入れてもらうと、曲がってしまうかもしれない
3.12枚から決めた時間分取り除いたカードをデックの上に返してもらう必要がある
4.リバースカウントをする必要がある
5.裏向きに文字盤状に並べたカードから、観客の時間を読み取る必要がある
これに対して、ゆうきともさんは「そこは、そんなもの」ではなく、その小さなストレスをしっかり解決するというのがすごいと思います。特に上記4.5を解決する手法については、個人的には非常にありがたい解決策でした。5.に関しては大胆な解決策で観客に違和感を覚えられないかな?と思いつつもやってみてますが、いまのところ指摘されたことはありません。ただ、この進化バージョンでは時計が使われなくなり、カードのみでまとまっているところは良いのですが、個人的には小物として実際の「時計」を使いたく…。これは演者のエゴでしょうかね(笑)
ゆうきともさんのビデオ以外にも影響を受けたのがBILL GOLDMAN氏の「Out of Time Out of Mind」という手順です。かなり昔にGINさんから購入しましたが、今では販売されておらず、扱っているお店もほとんどありません。daytonamagicさんで扱っていたのを見つけましたのでリンクを貼ります。
TWO FOR THE SHOW by BILL GOLDMAN - Daytona Magic Company
From the man who brought us Monkey in the Middle Two for the Show contains uncomplicated, direct magic with strong audience impact.
Daytona Magic Company
当時、最も面白かったのはカードを当てるときのやり取りでした。ゆうきともさんのワイズワークスの演技でもこれに近いやり取りが行われています。BILL GOLDMANの手順ではカードは当てますが、時間はマジシャンが観客とのやり取りで当てるのではなく、最後に演技の途中でデックの上に裏向けに置いた氏の時計を観客自身に見てもらうことで、一致を確認してもらいます。
という感じで私が普段行ってるクロック・マジックの紹介は終わりですが、せっかくですので、クロック・トリックのバリエーションについて私が知ってる狭い範囲ですが、ご紹介します。
1.あそびの冒険シリーズ4ミラクル・トランプ・マジック(松田道弘著):第一部「技法の要らないカード・トリック」という章で「クロック・トリックによる予言」というタイトルで解説されています。松田さんが「プラクティカル(実用的)」と書かれているこの手順の特徴は、事前準備がいらない、観客にカードを覚えさせる手続きを省いて予言トリックとしている点です。12枚のカードを取り出しよく混ぜます。演者は予言だといって紙に何か書きます。観客は12枚のカードの何枚かをポケットに入れ(観客も枚数はわからない)、残りをデックに戻します。演者は12枚で文字盤を作ります。観客のポケットからカードを出して、その枚数の時刻のカードを表向けます。予言を開くとそのカードと一致しています。
2.ビッグ・マジック講座(新井一郎著):第5章「プリディクション」という章に「時計」というタイトルで解説されています。この演出はジョン・メンドーサのやり方のようです。観客に時間を思い浮かべてもらい、その枚数をボトムに回してもらいます。デックから12枚を時計の文字盤のように並べますが、表向きに並べます。考えた時間を強く思ってもらい、この時間ではないですね、とどんどん裏向きにしていき、最後に残った時間が、観客が思った時間と一致するという現象です。マジシャンはあらかじめ選ばれる時間を予言していて、その時間のカードにあらかじめ印を付けておいたといい、裏向けると1枚だけ他のカードとは異なる裏模様だというクライマックスです。このように、その1枚だけ裏の色が違うというのはかなりインパクトがあると思います。一方、そのカードをどこかのタイミングで仕込む必要がありますので、複数の手順の中で利用する場合はそれをどのタイミングでどうやって仕込むのか?を考える必要があります。また、カードを当てるという現象は含まれていませんので、そこを演者としてどう考えるかだと思います。また、裏に特徴を持たせるものとしては、この本ではありませんが、レインボーデックの解説でクロック・マジックに使う解説があった記憶があります。
3.ファイブ・スター・クロースアップ(根本毅著):「時間の予言」というタイトルで紹介されています。3つ目のマジックですが、目次で4となってるところが根本さんッポイです(笑)。根本さんのオリジナル作品ではないようです。ワン・ウェイ・デックを使った手順でサカー・トリックで、驚きだけでなく、笑いもとれる良質な手順だと思います。
実は、この手順、マジックファンタジアさんで商品として売られていました。現象はこちらで確認してください。かなりお値打ちですね。
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サッカートリックの傑作カードマジック!解説DVD付きになって値下げしました!演者はまず、予言のカードをテーブルに出します。1組のカードをよく切り...
マジックショップ マジックファンタジア
4.松田道弘のシックなカードマジック(松田道弘):「クロック・トリックのリニューアル」というタイトルのマジックです。観客にパケットを渡し、そこから何枚かのカードをポケットに入れてもらいます(観客も何枚かわからない)、残りのパケットをシャッフルしボトムのカードを覚えてもらい、テーブルの上のデックに戻してもらいます。演者は12枚のカードを時計の文字盤のように並べ、選ばれたカードとポケットのカードの枚数を当てます。最後の選ばれたカードの当て方が少し特徴的です。気になるのは、時計の形に並べて当てるものの、時間的な話は出て来ないところです。せっかく時計の文字盤に並べるので、演出は何か時間や時計と絡めたいと個人的には思います(;^ω^)。最後に<クロック・トリック文献>として、多くの文献が紹介されています。1920年代の文献からあり、このテーマが古くから人気があることを示していますね。
5.ランディー・ウエイクマンのカード・マジック(マジックハウス):^_^マジックハウスさんから出ているRandy Wakeman氏のレクチャーノートにある「OVERCLOCK」というマジックです。タイトルから予想がつくかもしれませんが、ポール・ハリス氏の「OVEREKILL(オーバーキル)」という手順のバリエーションのようです。
観客が好きに思った時間の枚数をデックからとってもらい、ポケットに入れます。演者は時計の文字盤のように12枚のカードを並べ、後ろを向いている間に観客は思った時間のカードを覚えます。カード集めて混ぜ、デックに戻します。演者は、時間と、カードを当て、さらに、それは予言されてたといって、ある演出でそれらを示します。
この手順を読んだのが、ゆうきさんの手順やBILL GOLDMAN氏の手順を読んだ後だったので、歴史的には逆かと思いますが、ほぼ、そのままやん!という感じでした(;^ω^)。レクチャーノートに「客の"好きな時間"を使って客をトリックに参加させることができるのです」と書かれていますので、観客に好きな時間を思ってもらう演出はRandy Wakeman氏が初めてだったのかもしれません。
以上で文献紹介は終わりです。また、ギミックやハイテク時計を使った演出も考えられると思います。そのあたりはまた別の時に紹介したいと思います。