カップ&ボールのカップ中心にいろいろ紹介

自分の持っているマジックの道具をカップを中心に紹介。

Hand of Cleopatra(クレオパトラの手) by Tony Lackner + クロック・トリック関連商品

2024-12-26 23:54:00 | カップ&ボール以外

 今回は前半で「クレオパトラの手」という商品を紹介し、後半で、前々回紹介したクロック・トリックに関連しそうな(演出に使えそうな)商品を少し紹介します。まずは、「クレオパトラの手」です。15年前にアップされたStevens Magicさんの実演映像をご覧ください。


また、こちらの映像では、他の商品と合わせての実演映像で、「クレオパトラの手」は約3分あたりからスタートします。


現象としては、映像にありますように、ピラミッドの周りに6枚のカード(別にカードではなく、モノとかでもいいと思います)を並べ、そのピラミッドの上に、「クレオパトラの手」を置き、回すと、だんだん回転が遅くなり、止まったときにその手の指が指しているのが観客のカード(とか当てたいものとか)であるというものです。

 これを作ったTony Lacknerという方は、ドイツの(有名な?)職人さんのようで、このマジック以外にもマニアックな作品を作っておられるようです。作りもきれいですし、手を入れるケースがあるなど凝ってますよね。また、ピラミッドを置いた状態から指す場所を変えることができる機能も備わってます。ただ、うまくやらないとちょっとバレそうな気もしますが(;^ω^)。「ピラミッドに対して一定の場所を指すようにできてるんでしょ?」とか思っている人には効果的かも知れません。

 非常に雰囲気のあるグッズなので、普通のトランプとかだと、個人的にはちょっと合わないような気もします。デザインが少しアンティークなものや、エジプトなどに関連するトランプを使う方が合いそうですよね。2つ目の動画にあるようなエジプトに関係したカードとか、タロットとか、古い人形とか写真とか…そんなアイテムが合いそうな気がします。メンタルマジックなどで雰囲気を作ってから行うと効果があるかもしれません。ユージン・バーガー氏とかだったら上手く演出できそうですよね(;^ω^)

 私は、15年以上前だと思いますが、ミスター・マジシャンで購入しました。Tenyoでも売られてたことがあるようです。以前ヤフオク(だったかな?)にも出てて、カタログの商品説明も写真がありました。おそらくディーラー用のカタログだと思います。何年ごろでしょう?もし情報をお持ちの方は教えて頂けると幸いです。今では入手困難ですが、たまにebayなどに出ることもあります。

 さて、「クレオパトラの手」は6枚のカードのどこかをさすのですが、これを12枚にするとクロック・トリックで使えそうですよね。もし12枚で使えるなら、時計型にカードを並べ、「あなたの思った時間は…」と言いつつ手を回すと、思った時刻のカードのところで止まる…という演出ができますよね。

 そこで、後半の話になるのですが、「それそのもの」のような商品がありまして、ご存知の方も多いと思いますが、その商品とは、Collectors’ Workshop(コレクターズ・ワークショップ)の「Clock of San Marco(クロック・オブ・サンマルコ、サンマルコ広場の時計) です。

実演映像です。


マジェイアさんのページでも紹介されています。

Magic of San Marcos Square

こちらのブログの記事でも紹介されています。

クロック・オブ・サンマルコ - 日曜手品日記

今日は新年会でちょこっとマジックをしてきました。こういうときNEWリンキングハン...

日曜手品日記

 

無理に前々回紹介したクロック・トリックと絡める必要はありませんが、単に12枚のカードを出して、選んでもらうより、クロック・トリックと絡めた方が演出的にはいい感じになるのではないかと思います。実は、このマジックには少し思い出がありまして....。25年くらい前、まだ新入社員だったころ、これを同期に見せたことがありました。当時、お昼休みになると、同期(3人)にちょこっとマジックを見てもらっていたのですが、その中でこのマジックを演じました。マジック自体は上手くいったのですが、同期の1人に小学生か、中学生までアメリカに住んでたやつがいまして、そいつが「ビックのボールペンなんて日本では使わんだろー。あやしい~」と発言したのです(;^ω^)。まあその通りなんですが…。そういうところも大切だなぁといい経験でした(笑)

 この商品はもうかなり前から販売されていませんが、数年前、あるショップのメーリングリストでのみの販売でしたが、New San Marco Card(NEW サンマルコ)という商品が販売されていました。私は購入を見送りましたが、購入された方がレビューをされてます。この商品のボールペンは日本でも使えそうなものですね(笑)

NEW サンマルコ - B級手品師(マジック編)

【現象】 ケースから1組のトランプを取り出し、適当に12枚のカードを抜き出します。そして、その中から観客に1枚のカードを選んで覚えてもらいます。そのカードを返して...

B級手品師(マジック編)

 

クロック・オブ・サンマルコは勝手に動き出し、勝手に止まりますが、観客がペンを回して、あるところでそれ以上回らなくなり、そこに観客のカードがあるという商品もあります。El Ducoの「Pen-Tell」 です。

観客の手でほとんどのことが行われることで、不思議度が上がる商品です。El Ducoの商品はあまり最近日本では見なくなりましたが、本商品はGINさんで現在も扱われています。

PEN-TELL-マジックショップGIN

リアルクロックドカードマジシャンは観客にデックを手渡し、好きなだけ混ぜてもらった後にそこから12枚のカードを抜き出してもらいます。そこからさらに一枚を選...

マジックショップGIN

 

 続いて紹介するのは小川心平氏の「小川心平の Spirit Clock」です。


こちらでレビューされています。

小川心平の Spirit Clock - B級手品師(マジック編)

【現象】 透明アクリル製の大きい時計板と取り外せる時計の針を観客に示します。時計には裏向きに1枚のカードが張り付いています。観客に1組のカードをよく調べて切り混ぜて...

B級手品師(マジック編)

 

使われている商品は「Spirit Clock Dial by Bazar de Magia」という商品です。ペンギンマジックなどでも扱われていました。

 これまで紹介したような針(ペン)がくるくる回って観客のカードを指すのではなく、開けてみたら時計の時間が予言されていた、という商品の1つが、テンヨーの「サイコクロック」です。なかなか今は入手できずメルカリ等で高値で販売されている商品です。これに予言のミニカードなどを貼っておけば、クロック・トリックの演出に使えますよね。実演映像と紹介記事を示します。


Hey presto!

マジック・ユニークなグッズ・トラベルレポート

 

というわけで、今回は、前半にクレオパトラの手を紹介し、同じようにくるくる回って観客のカードを指す商品などをいくつか紹介しました。クロック・トリックの演出として参考になれば幸いです。3回続きましたが、クロック・トリックの紹介を終わります。

関連HP(Martin's Magic -COLLECTION-より)

Hand of Cleopatra by Tony Lackner

Clock of San Marco’s Square by John Good, Collectors’ Workshop

Pen-Tell by El Duco’s Magic

Spirit Clock Dial by Bazar de Magia







Mongolian Clock by Slydini

2024-12-24 22:23:00 | カップ&ボール以外

 前回のクロック・マジックを紹介した際に、一緒に紹介したかったのですが、ブログの文字数制限のため、書くのを諦めたカードマジック、スライディーニ氏の「モンゴリアン・クロック」を紹介します。

 スライディーニ(Tony Slydini[1901-1991])は、20世紀を代表するイタリア出身(アルゼンチン育ち)のクロースアップマジシャンです。スライト・オブ・ハンドやミスディレクションの名手で特にラッピングがすごいマジシャンです。代表作としてステージにあげた観客の前で紙玉が消える「Papaerball over the Head」や強く結んだ結び目がするっとほどける「Slydini Silks(Slydini's Knotted Silks)」などがあり、テレビなどで多くのマジシャンも演じていますよね。スライディーニについて紹介しているマジェイアさんのページを示します。

マジシャン紹介:トニー・スライディーニ

 さて、このスライト系のスライディーニのマジックの中で、非常に珍しい、ほぼセルフワーキングであるマジックが今日紹介する、クロック・マジックの「モンゴリアンクロック(Mongolian Clock)」です。

上口龍生氏の実演映像を示します。


ちょっと話に無理があり(;^ω^)、観客が下に回した後、演者が下から配る点などが少し気になりますが、準備がいらない点や、かなりしっかりグチャ混ぜしているのに見つけ出し不思議な点など、名作だと思います。

 私は、90年代後半にマジェイアさんのページで知りました。

Mongolian Clock

このページの最後に追記でKarl Fulvesが書いた"THE BEST OF SLYDINI ...AND MORE"に見つけられなかったとありますが、この本にちゃんと記載されています(2章の「2. Easy Routines and Moves」の中の1つ)。ただし、このマジックは説明用写真が無く、解説も1ページくらいとさらっと書かれています。このマジックがあのスライディーニの「ベスト」マジックの一つとして入っていることからいかに有効なマジックであるかがわかります。

 ちなみにこの本は2冊セットでテキストと写真が別れた構成となっています。ビデオの解説がまだ主流で無い時代に、1000枚以上の写真を使ってわかり易く伝えようということなのでしょう。定価は60ドルくらいだったと思われます

Best Of Slydini ( 2 Volume SET ) ( Text/Photographs )- Book

A must for the serious close up magician! This set of 2 volumes (one text, one photographs) not only teaches professional magic tricks, but how to entertain and ...

Penguin Magic

 

が、今はもう作られておりませんので、中古の本として、海外では150ドルから300ドルくらいで取引されています。その中でマジックファンタジアさん2号店で3300円で売られていたのは驚きです(;^ω^)

The Best of Slydini ... and more (Text & Photos)-マジックファンタジア2号店

This ebook includes both the text and the photos of the original two volume hardcover set. Each of the almost 1000 photos is available twice. The first time th...

マジックファンタジア2号店

 

というわけで、30000円くらいあれば海外から中古で購入できる本なのですが、時々紹介しているLybrary.comでは30ドルでダウンロードできるので、リアルな本に拘らなければこちらがお得だと思います。

The Best of Slydini ... and more (Text & Photos) by Karl Fulves & Tony Slydini

This ebook includes both the text and the photos of the original two volume hardcover set. Each of the almost 1000 photos is available twice. The first time the ...

Lybrary.com

 

 もし、モンゴリアンクロックだけに興味がある場合は、この本でなくて知ることはできます。最もお値打ちなのは、先程示した動画の解説を見ることです。400円で学べます。

5章:モンゴリアン・クロック|ヒーローウッド出版

 これはトランプを時計に見立てた、物語性のあるマジックです。  かつてジンギスカン率いるモンゴルの民は、他の部族と時間を示し合わせるためにトランプを使っていまし...

note(ノート)

 

ただ、ちょっとそれはもったいなく、このコンテンツは「超初心者のためのカードマジック入門」の1つとしてあり、全体をまとめて購入すると13のマジックが980円で購入できるので個人的にはこちらがお薦めです。さすが上口さんでよいマジックの選択だと思います。「超初心者」とありますが、私のレベルではこれで十分です(笑)

超初心者のためのカードマジック入門 - 2022-01|ヒーローウッド出版|note

トランプをはじめて触る『超』初心者のためのカードマジック入門。テクニック要らずで、それでいてプロも驚くほど本格的な、10種のマジックを憶えることができます。

note(ノート)

 

 また、このマジックは「図解 カードマジック大事典 新装版」にあります。「読心術 / Mindreading」の分類です。非常にサラッと書かれています(^◇^;)

カードマジック大事典 新装版

カードマジックを体系的にまとめた超大作

マジックショップ フレンチドロップ

 

 麦谷氏のMasquerade(マスカレード)でも取り上げていたようです。読んでみたいですが、私は残念ながら持っていません

魔法使いはリハビリ中

ただいま闘病中で時間にも気持ちにも余裕がなく、コメントをいただいても返信できません。ご了承ください。

 

 最後に紹介するのはmML Vol213の「ジャパニーズ・クロック」です。『スライディーニのモンゴリアン・クロックという名作を基にアレンジしたもの』とあり、だいぶ違う印象を持たれると思います。ジャパニーズ・クロックなので、モンゴルの話は一切出てきませんしね(笑)

演技動画のURLですが、うまくリンクがはれませんでした。

https://www.youtube.com/watch?v=9Ik2LYMg4E0

monthly Magic Lesson DVD VoL213 [monthly Magic Lesson Shoppers]


 モンゴリアンクロックは、全く即席で準備無しでできますし、最後のダイナミックな当て方といい、素晴らしい手順だと思いますので、気に入られた方は演じられてみてはどうでしょうか。とお勧めしつつ、私は前回紹介したトリックをレパートリとしていてこちらは滅多に演じないのですが(;^ω^)


 いろいろ紹介しましたが、これが本当のモンゴリアン・クロックですね(;^ω^)

Mongolian-Clock | 逆回転時計とオリジナル時計のお店 【時を楽しむ 未来時計工房】 powered by BASE

【自由時間・中型電波掛け時計】のデザイン例として「Mongolian-Clock」を製作しました。モンゴル数字を使った電波掛け時計です。モンゴルの方、モンゴル語教室へのプレ...

Mongolian-Clock | 逆回転時計とオリジナル時計のお店 【時を楽しむ 未来時計工房】 powered by BASE

 








【My Repertoire】クロック・マジック(クロック・トリック)

2024-12-14 14:33:00 | カップ&ボール以外

 久々の「My Repertoire」です。私の数少ないレパートリを紹介させて頂く記事ですが、もしかしたら今年はじめてかもしれません…もう、今年終わりですけど(;^ω^)。今回はいわゆるクロック・マジックです。クロック・マジックというのはトランプを時計の文字盤のように並べて行うマジックで非常に多くのバージョンがあります。私が行っている手順もそれほど変わったものではありませんので、「普通だね」と思われるかもしれませんが、ほぼセルフワーキングで効果的なマジックでありますので紹介させて頂きます。

 多くの入門者向けマジックの本にクロック・マジックは解説されてますので、それまでも目にしたことがあったかもしれませんが、私がはじめて自分で演じてみたいと思ったのは、ゆうきともさんの「ワイズワークス3」の「オーバータイム」を観たときでした。このビデオでは、実演のみで解説は無かったのですが、不思議なことはもちろん、観客との

やり取りもしっかりできる素晴らしい手順でした。

 解説が無いので、当時正確なやり方はわからなかったのですが、この手順を見よう見まねで少し演出を変えた手順を演じるようになりました。クロックマジックのマジックの良いところは観客が選ぶカードは時間によらず決まっていますので、単にカードは当てるだけでなく「予言」することができます。また、マジシャンは時計の文字盤のようにトランプを並べる時に、観客が決めた時間を知ることができます。ですので、後ろを向いて観客が時間に対応するカードを覚えている間にちょっとしたことならできます。

 私がやっていた手順のアウトラインを示します。はじめに何かが入った布袋をテーブルに置いておきます。そして、手順を進めてカードを時計の文字盤のようにカードを並べたらポケットから鍵を出して時計の針のように置きます。「これで時計っぽいですよね」という感じです。そして、決めた時間と対応するカードを観客とのやり取りで当てた後、「実はこの袋の中には南京錠をかけた木箱がありましてね...」と木箱を取り出し(マギーボックス)観客に南京錠を開けてもらいます。するとその箱の中には写真のようなテントウムシの形をした時計が入っていて、握ると羽が開いて時計が見えますといって、観客に羽を開けてもらいます…すると確かに中に時計があり、その針は先程観客自信が決めた時間を指しています!さらにテントウムシの羽にはハートのシールが2枚貼ってあり、先程選んだカード、ハートの2を示しています。「このテントウムシはあなたの時間とカードを知っていたみたいですね。」という感じで終わります。

 最近はこの演出ではなく、袋の代わりに写真のようなボックスを置いておき、時間などを当てた後で「実はこの中にはおじいさんの形見の懐中時計の写真が入ったアクリル製のフォトフレームが入っているのですよ…。何時を指した写真だったかな…」といい、2重になっている箱を開もらうと観客の決めた時間を指す写真が入っています!また、箱には裏向きのミニカードが入っており、これは?とめくると、時間に対応したカードである!という演出です。単純すぎる発想でお恥ずかしいですが、見てお分かりのように「Frozen in Time(あなたの好きな時間) - ハイテクバージョーン」を使っております。今は販売されていませんが、まだページがありましたので示します。

Frozen in Time(あなたの好きな時間) - ハイテクバージョーン  |メーカーから探す,益田克也(ATTO)や手品グッズ揃うマジックショップ|セオマジック

この商品非常にいいのですが、2点ほど気になるところがありました。1つは「音」です。結構振動音が響くので箱をそのまま机の上などに置くと正直厳しいです。そこで、もう1重箱を増やし、中にスポンジを入れることで、音の問題を無くしました。もう1つは木箱の外観です。和な感じが強く、「へその緒の箱みたい!」と言われてしまったこともあります(;^ω^)。そこで、せめてもということでビンテージワックスで色を付けました。本当はもう少し「古い」感じを出したいのですが…

 演じてるマジックについては以上なのですが、関連情報を少し述べます。先に述べましたように私が最も影響を受けたのは、ゆうきともさんのワイズワークスの演技でした。

ゆうきとも「ワイズ・ワークス4」(DVD)

ゆうきとも氏のレクチャー・ビデオ・シリーズ「ワイズ・ワークス / Wise Works」の第4巻です。(発売元はUGM)制作年度の表記はありませんが、2004年にリリースされた模様...

 

 その後、ゆうきさんはご自身の手順をさらに改良され、「ゆうきとものカードミラクルズ・第3集」で実演・解説されています。このマジック単独ではなく、前のマジックとうまくつながり、エンディングとしてふさわしいインパクトのある手順に仕上がっています。

【大注目シリーズ!】ゆうきとものカードミラクルズ・第3集〜オリジナル作品集としてのレクチャーDVD!〜 [monthly Magic Lesson Shoppers]

流石だと思ったのは、このクロック・マジックで、面倒なところ、ちょっと引っかかってしまうところに、きっちり改善策を施しているところです。このマジックを実際にされたことがある方なら共感頂けると思いますが、このマジックでは基本的な演出にしても以下の点が少しストレスになります。

1.特定のカードを特定の位置にセットする必要がある

2.観客にカードをポケットに入れてもらうと、曲がってしまうかもしれない

3.12枚から決めた時間分取り除いたカードをデックの上に返してもらう必要がある

4.リバースカウントをする必要がある

5.裏向きに文字盤状に並べたカードから、観客の時間を読み取る必要がある

これに対して、ゆうきともさんは「そこは、そんなもの」ではなく、その小さなストレスをしっかり解決するというのがすごいと思います。特に上記4.5を解決する手法については、個人的には非常にありがたい解決策でした。5.に関しては大胆な解決策で観客に違和感を覚えられないかな?と思いつつもやってみてますが、いまのところ指摘されたことはありません。ただ、この進化バージョンでは時計が使われなくなり、カードのみでまとまっているところは良いのですが、個人的には小物として実際の「時計」を使いたく…。これは演者のエゴでしょうかね(笑)

 ゆうきともさんのビデオ以外にも影響を受けたのがBILL GOLDMAN氏の「Out of Time Out of Mind」という手順です。かなり昔にGINさんから購入しましたが、今では販売されておらず、扱っているお店もほとんどありません。daytonamagicさんで扱っていたのを見つけましたのでリンクを貼ります。

TWO FOR THE SHOW by BILL GOLDMAN - Daytona Magic Company

From the man who brought us Monkey in the Middle Two for the Show contains uncomplicated, direct magic with strong audience impact.

Daytona Magic Company

 

当時、最も面白かったのはカードを当てるときのやり取りでした。ゆうきともさんのワイズワークスの演技でもこれに近いやり取りが行われています。BILL GOLDMANの手順ではカードは当てますが、時間はマジシャンが観客とのやり取りで当てるのではなく、最後に演技の途中でデックの上に裏向けに置いた氏の時計を観客自身に見てもらうことで、一致を確認してもらいます。

 という感じで私が普段行ってるクロック・マジックの紹介は終わりですが、せっかくですので、クロック・トリックのバリエーションについて私が知ってる狭い範囲ですが、ご紹介します。


1.あそびの冒険シリーズ4ミラクル・トランプ・マジック(松田道弘著):第一部「技法の要らないカード・トリック」という章で「クロック・トリックによる予言」というタイトルで解説されています。松田さんが「プラクティカル(実用的)」と書かれているこの手順の特徴は、事前準備がいらない、観客にカードを覚えさせる手続きを省いて予言トリックとしている点です。12枚のカードを取り出しよく混ぜます。演者は予言だといって紙に何か書きます。観客は12枚のカードの何枚かをポケットに入れ(観客も枚数はわからない)、残りをデックに戻します。演者は12枚で文字盤を作ります。観客のポケットからカードを出して、その枚数の時刻のカードを表向けます。予言を開くとそのカードと一致しています。

2.ビッグ・マジック講座(新井一郎著):第5章「プリディクション」という章に「時計」というタイトルで解説されています。この演出はジョン・メンドーサのやり方のようです。観客に時間を思い浮かべてもらい、その枚数をボトムに回してもらいます。デックから12枚を時計の文字盤のように並べますが、表向きに並べます。考えた時間を強く思ってもらい、この時間ではないですね、とどんどん裏向きにしていき、最後に残った時間が、観客が思った時間と一致するという現象です。マジシャンはあらかじめ選ばれる時間を予言していて、その時間のカードにあらかじめ印を付けておいたといい、裏向けると1枚だけ他のカードとは異なる裏模様だというクライマックスです。このように、その1枚だけ裏の色が違うというのはかなりインパクトがあると思います。一方、そのカードをどこかのタイミングで仕込む必要がありますので、複数の手順の中で利用する場合はそれをどのタイミングでどうやって仕込むのか?を考える必要があります。また、カードを当てるという現象は含まれていませんので、そこを演者としてどう考えるかだと思います。また、裏に特徴を持たせるものとしては、この本ではありませんが、レインボーデックの解説でクロック・マジックに使う解説があった記憶があります。

3.ファイブ・スター・クロースアップ(根本毅著):「時間の予言」というタイトルで紹介されています。3つ目のマジックですが、目次で4となってるところが根本さんッポイです(笑)。根本さんのオリジナル作品ではないようです。ワン・ウェイ・デックを使った手順でサカー・トリックで、驚きだけでなく、笑いもとれる良質な手順だと思います。

 実は、この手順、マジックファンタジアさんで商品として売られていました。現象はこちらで確認してください。かなりお値打ちですね。

スーパークロックデック 2.0/解説DVD付き-マジックショップ マジックファンタジア

サッカートリックの傑作カードマジック!解説DVD付きになって値下げしました!演者はまず、予言のカードをテーブルに出します。1組のカードをよく切り...

マジックショップ マジックファンタジア

 

4.松田道弘のシックなカードマジック(松田道弘):「クロック・トリックのリニューアル」というタイトルのマジックです。観客にパケットを渡し、そこから何枚かのカードをポケットに入れてもらいます(観客も何枚かわからない)、残りのパケットをシャッフルしボトムのカードを覚えてもらい、テーブルの上のデックに戻してもらいます。演者は12枚のカードを時計の文字盤のように並べ、選ばれたカードとポケットのカードの枚数を当てます。最後の選ばれたカードの当て方が少し特徴的です。気になるのは、時計の形に並べて当てるものの、時間的な話は出て来ないところです。せっかく時計の文字盤に並べるので、演出は何か時間や時計と絡めたいと個人的には思います(;^ω^)。最後に<クロック・トリック文献>として、多くの文献が紹介されています。1920年代の文献からあり、このテーマが古くから人気があることを示していますね。

5.ランディー・ウエイクマンのカード・マジック(マジックハウス):^_^マジックハウスさんから出ているRandy Wakeman氏のレクチャーノートにある「OVERCLOCK」というマジックです。タイトルから予想がつくかもしれませんが、ポール・ハリス氏の「OVEREKILL(オーバーキル)」という手順のバリエーションのようです。

観客が好きに思った時間の枚数をデックからとってもらい、ポケットに入れます。演者は時計の文字盤のように12枚のカードを並べ、後ろを向いている間に観客は思った時間のカードを覚えます。カード集めて混ぜ、デックに戻します。演者は、時間と、カードを当て、さらに、それは予言されてたといって、ある演出でそれらを示します。

 この手順を読んだのが、ゆうきさんの手順やBILL GOLDMAN氏の手順を読んだ後だったので、歴史的には逆かと思いますが、ほぼ、そのままやん!という感じでした(;^ω^)。レクチャーノートに「客の"好きな時間"を使って客をトリックに参加させることができるのです」と書かれていますので、観客に好きな時間を思ってもらう演出はRandy Wakeman氏が初めてだったのかもしれません。

 以上で文献紹介は終わりです。また、ギミックやハイテク時計を使った演出も考えられると思います。そのあたりはまた別の時に紹介したいと思います。