手に汗握る初運転
Montery の少し南の Carmel の海岸でもう一度海を眺めて、潮風を心ゆくまで楽しみました。
何時までも潮風に吹かれて居たいけれど、そうも言っておれません。
VW に乗り込んで出発。
サン・ベニト(San Benito) 経由で サンタ・クララ(Santa Clara) を通って帰ることにしました。
ガソリンスタンドで貰った地図を頼りにナビゲーター。
ガソリンスタンドも通じませんね、Gas station というんですね。
細い道路にでも「Route 〇〇」と標識が出ているので、頼りない日本人でも何とかなります。
サンタ・クララに入ると、ガソリンが心細くなって来ました。
小さな町でガソリンスタンド発見。
Coyote と言う町。
カイヨーテ?コヨーテか?と遠吠えのまねをしたら「YE~S!カイヨーテ」
道路の周りに家があるだけで、これでは人口200人いるかいないかでしょうね。看板はあるものの、こんなガソリンタンクが道端にポンと置いてあるだけ。
どうするのかと思えば、トムがクラクション(これがまた通じません、horn,beep or honk というんですね)を鳴らしました。
少し離れた納屋のような所から、太ったオッサンが大儀そうに出てきました。
漫画の牢番みたいに、ジャラジャラと一杯ぶら下げた鍵の1つを、タンクの横に有る鍵穴に入れて捻ってトムに顎をしゃくりました。
トムがレバーをキッコンギッコンとすると、タンクの上に付いているガラスの円筒の所にガソリンが沸きあがってきました。
5ガロン(abt.19Ltr)の目盛りまでガソリンが出たところで、汲むのを止めて、オッサンにお金を払います。
お金を貰うと差しっぱなしだった鍵を抜いて、無言でノソノソと出てきた小屋に帰ってゆきました。
給油ホースを車の給油口に突っ込んでレバーを握ると、ガラスの円筒に入っていたガソリンがゴボゴボと流れて給油完了。
え~、こんな原始的なん有りですか?
ハイオク、レギュラーの区別は無いんですね。
トムに訊くと田舎では結構こういうタイプのがあるそうです。
サン・マテオ・カウンティーに入ってないけど運転交代。
こんな田舎道では、正規の免許を持っている人が同乗してさえいたら、無免許でも練習中と言う事であまり五月蝿く言わないんだそうです。
ただし、フリーウェイとかの交通量が多くて、最低スピード制限がある道では許してくれないそうです。
当然ですね。
このルートではサン・マテオ・カウンティーどころか、その手前のサンタ・クララに入るともう田舎道は有りません。
乗ってみるなら今の内。
ガソリン代を払ったので、トムは気を使ってるんじゃあ無いでしょうね?
しかしチャチなペダルですね。
ボンネットが見えないので気持悪いなぁ。
おっかなびっくり、ヨタヨタと走り出しました。
車がほとんど走っていないので助かります。
問題は左ハンドルに慣れていないのと、道路の右側を走るのがどうにも不安。
中央に線が引かれていない田舎道だと、特に交差点で曲がったりした後は、ついつい左に寄ってしまいます。
時々トムに突付かれて、オットットと右に寄せるのですが、何時の間にやら中央よりヘ。
30分程でクタクタになってギブアップです。
パル・アルトの街を過ぎて、見覚えのあるエル・カミノに入りました。
到底こんなところでは恐ろしくて運転できません。
「丁度お茶の時間だからおばあさんの所へ寄ろう」と住宅地へ。
小柄な銀髪の可愛いおばあさんが大喜びで迎えてくれました。
トムは丸っきり子ども扱いされています。
ちっとも厭な顔ををしないのには感心します、人間が出来てますねぇ。
おばあちゃんが大喜びで、テーブル中にケーキ、クッキーがどっと出てきました。
干しブドウやナッツが一杯入ったケーキや、チョコレート・ケーキなどの自家製のケーキを常時つくって置いている家庭が多いようです。
何処へ行っても、必ずといって良い位出てきます。
黙ってパクパク食べるだけでは愛想が無いし、大抵「どう?」って訊かれるんです。
「デカイ」「美味しい」「甘い」なんてな事を言ってもあんまり喜んでくれそうに思えません。
一度、ケーキの誉め方を良く教えて貰わないといけませんね。
「今度は是非ランチを一緒にね!」おばあちゃんはトムの来るのが嬉しくて仕様が無い様子です。
家に帰り着くと、コラリアの友達の Mary(Mery?Meary?)がいました。
「丁度いいわ」と最近飼い出したシャムネコを見にトムの車で一緒に行く事に。
「君の番だ!(Your turn!)」と車のキーを渡されて、エ~ッ、私が運転?
アメリカでは助手席が1番良い席らしいですね。
日本で後部座席でふんぞり返っているのは犬並?
タクシーとかお抱え運転手が運転するような車は違うんですって。
そう言えば、大統領は助手席に乗ってませんね。
「バック・シートは子供と犬の座るところさ」とトムが笑って教えてくれました。
Mary が助手席で道案内。
さすがに車に慣れているので、余裕をもって指示してくれるのはいいんですが、何しろ英語。
英語といっても「真っ直ぐ」「次の角を右へ」というような簡単な短い言葉だから、普段なら何て事は無いんですが、頭の中は「走るのは右側、右側」というのが渦巻いて、住宅地だから何時なんどき子供や犬が飛び出すかも知れず、チエンジレバーは右側についてるし、オロオロ、ウロウロ。
やっと「ここよ!」と到着。
時計を見ると15分ほどしかかかってないのに、無我夢中で疲れ果ててしまいました。
一体どのくらいの距離を走ったのか、全く見当も付きません。
ネコなんてアメリカだからといって別に変りがあるでなし、元々あんまり好きではない。
猫を見に来たというよりも Mary を送って来たというほうが正確です。
ひとしきりネコをかまって、さあ帰ろうとなったら又もやキーを渡されました。
「Me?]二人で「Yes!」
帰りはコラリアが助手席。
エンジンをかけても黙っているので「どう行くの?」と訊くと、「来た道を帰ればいいじゃない?」
それが、全く覚えてないんですね。
トムとコラリアが大笑いするけど、似たような家に同じような路、その上英語の道案内では、道を覚える余裕なんかありません。
先ず「右へワンブロック」と走り出したら、アレ?これはハイキングで歩いた道。
来る時は気付いてなかったんですね。
路が判れば、何やらゆとりが出て来て、周りが見え出しました。
我ながらスムーズに家まで到着。
表でトムと別れて家に入ると、ダイニングにディップ(例のアボガドやら、シーチキンが入ったマヨネーズ味の緩いペースト)、棒切り野菜、ポテト・チップス、オープン・サンドが沢山並んでいます。
エフィにキッチンに呼び込まれて、ダイニングに並んでいたのと同じもので、即夕食。
ロジャーが入っている Democrat Party(民主党)の会合に予定していたお宅が急に都合が悪くなって、急遽此処が会場になったそうなんです。
「あなたの部屋はお客さんのコート置き場にするから、コラリアの部屋に避難してね」
夏にコートを着るか?と思ったら、男性はともかく女性は薄いコートを着るんです。
日中の日向は汗ばむほどでも、夜になると日によっては霧が流れて来て寒くなるんです。
向かって左から、私のいる部屋、コラリア、バスルーム、エフィとロジャーの寝室と並んでいて、私の部屋のドアとリビング+ダイニングからのドアが向き合っています。
お客さんはコラリアの部屋の前を通らないとバスルームに行けません。
大して広くない部屋ですから、どうしてもバスルームに行く人と往き帰りに目が合います。
「ドアを閉めても構わない?」とコラリアが訊ねました。
女の子にそういわれて「厭!」というのも変。
単にうっとおしいからという理由だけで、先日聞いた重大な意味合いがある訳は無い。
しかし夜中に6畳ほどのベッドと小さな机があるだけの部屋で、二人っ切りというのは、妙に居心地の悪い物です。
丁度良い、さぼっていた絵日記を整理して書こう、と書き始めたんですが、集中できませんね。
コラリアも妙に大人しいような気がする。
ベッドに寝転がって本を読んでいるコラリアは中々いい眺めなんですが、あまりジロジロ鑑賞するのも失礼でしょうし、かといって、不自然にあらぬ方を睨んでるのも変だし・・。
これなら、シッドにヘッドロックされてる方がまだましかな?
2003/05/11:初出
2022/05/14:再録