「リッター30キロ」といううたい文句の低燃費に惹かれて買ったのに、実際の燃費は大幅に悪くてがっかり――。
自動車の売れ筋が、低燃費を看板に掲げるハイブリッド車(HV)や軽自動車に集中する中、こんな感想を抱いている人も少なくないだろう。
自動車の業界団体、日本自動車工業会は5月8日、自動車のカタログ燃費と実燃費が大きく乖離している実態や、その要因を紹介する
一般向けのパンフレット(=タイトル下写真=)を公表した。
それによると、全車を平均した実燃費は、カタログ値に対して約3割低い(2010年までの燃費計測基準10.15モードの場合。
2011年以降の基準JC08モードでは2割低い)という。
この乖離は、加減速等の自動車の使い方による影響が約5割、カタログ燃費計測で考慮されない電装品(エアコンやランプ
、ワイパー等)による影響が約3割、外気温や道路状況など走行環境による影響が約2割を占めると紹介している。
■ 電装品は燃費計測で考慮されない
また、実燃費との乖離率は、低燃費車ほど大きくなる傾向があり、カタログ燃費が燃料1リットル当たり30キロメートルを超える
クルマの実燃費は、カタログ値の6割以下、20キロでも7割程度(10.15モード)という。
低燃費車で乖離率が広がる理由は、燃費計測で考慮されない電装品の影響が大きいという。電装品による燃料消費は大型車でも
小型車でもほとんど変わらないため、実際の燃料消費では、低燃費車ほど電装品の割合が増える。結果的にカタログ値との乖離が
目立ってくるというワケだ。 今回、カタログ燃費に疑問を投げ掛けるようなパンフレットを、当の業界団体が作ったのは、低燃費車の
販売拡大にともなって、ユーザーからのクレームも増えているためだ。
■ 「カタログ」低燃費競争の加速で乖離を無視できず
自動車の使い方は千差万別であり、カタログ値と実燃費を一致させることは不可能だが、現実とあまりにも乖離が目立てば燃費表示の
意味をなさない。そうした批判は常にあり、それゆえ、10.15モードをJC08モードに改良したばかりだが、「カタログ」低燃費競争の加速で
早くも乖離は無視できないものになった。
もっとも、業界団体としては、低燃費車ほど実燃費との乖離が大きいことなど、今回の内容を積極的に販売現場で告知するつもりはないという。
今回作成したパンフレットは、販売店など関係カ所に紙で5万部を配布するほかは、ホームページからのダウンロー
ド(http://www.jama.or.jp/user/jitsunenpi/)で対応するのみ。
今の日本の自動車市場では、「低燃費」はマーケティング上の最大の武器。クラス低燃費を争って0.1キロメートル単位の燃費改善が
行われているところだ。乖離批判には対応せねばならないが、営業上、声高には言えない――今回の対応はそんな業界事情も反映している。
丸山 尚文 東洋経済ニュースより