住みづらい世になりました。
就活シーズン真っ只中、リゾート開発で知られる「星野リゾート」の採用条件が話題となってます。
サイトには「大変申し訳ございませんが、星野リゾートグループでは喫煙者は採用いたしておりません。
それが企業競争力に直結している課題であるからです。」と告知し、その理由の詳細を説明しています。
賛否両論あるようですが、批判的な声の中には「煙草を吸っているだけで就職できないのは差別だ」などの声もあります。
他にも喫煙者NGを謳う企業は少なくないようですが、喫煙の有無によって採用するしないを決めることに
法的な問題はないのでしょうか?
■法的に問題はない
企業が採用の際に、喫煙の有無を重要な選考基準としてふるいにかける行為は、適法です。
まず、企業が労働者を採用する行為も、企業と労働者の間の労働契約ですので、企業が誰と労働契約をするか、
誰とは労働契約を締結しないかは、基本的に企業の自由です。
採用の際の差別が問題となった三菱樹脂事件最高裁判決でも、いかなる者を雇い入れるか、
いかなる条件で雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、
原則として自由に決定することができると判断されています。
したがって、喫煙を理由に不採用とすることも適法です。
■許されない採用基準は?
例えば、性別を理由とする募集・採用差別は、男女雇用機会均等法で禁止されていますし、
募集・採用時に年齢制限をつけることは、雇用対策法によって原則として禁止されています。
他方、思想や信条(考え方)を理由として不採用とすることは、原則として認められます。
また、見た目・容姿を理由とする不採用も、これを禁じた規定はなく、原則として認められます。
企業活動において、外見が重要となる分野もあることは否定できないからです。
■喫煙を理由とする不採用
喫煙を理由とする不採用も、これを禁止した特別の規定はなく、個別事案で公序良俗に反すると評価されない限り、
原則として、適法です。
喫煙の有無は、良好な職場環境維持や接客サービスに関係する部分もありますので、特にリゾート
施設を運営する会社などで、喫煙の有無を調査し、喫煙者であることを理由として不採用とすることが公序良俗に
反するとは考え難く、許されることになります。
近年は、喫煙者の比率が低下し、分煙も進んで喫煙禁止区域が増えています。
喫煙者の方にとっては、喫煙ルームへ閉じ込められて肩身の狭い思いをしていると思いますが、
新卒採用の場面でも、残念ながら喫煙を理由とする不採用は違法ではないので、
争うことは難しいと覚えておくと良いと思います。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、
中国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)