ペンネーム牧村蘇芳のブログ

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蟲毒の饗宴 第3話(3)

2025-02-14 20:50:06 | 小説「魔術ファミリーシリーズ」ウェストブルッグ2<蟲毒の饗宴>
 夜の時間の酒場は賑やかだ。
 キルジョイズの酒場は大きく、テーブル席、カウンター席、個室(小)、
 個室(大)と様々設けている。
 常連客などは決まったテーブルやカウンター席があるらしいのだが、
 それがあっても気になる事はない。
 皆、自然と、いつもの席で食事をする、というスタイルが確立していた。
 冒険者のカイルたち6人は、普段テーブル席で食事している。
 なので、そんなパーティーが個室を頼むと、
「個室を頼むなんて珍しいな、カイル。」
 と、酒場のマスターであるギルにそう言われるのも至極当然。
「今日は1人追加で7人になる。
 7人以上の個室を頼みたい。
 仕事の話があるんだ。」
「6人用より大きい個室は10人用だ。」
「なら、それで頼む。
 料理は“本日のおまかせコース”のやつで。」
「分かった。」
 ギルは受け応えると、カイルに札の付いた鍵を手渡す。
 札にはG7と書かれていた。
「一番奥の個室だ。
 話し合いを兼ねるなら、そこが静かでいい。」
「ありがとう。」
 カイルは鍵を受け取り、一行は一番奥の個室へと入った。
 薪ストーブがある。
 既に火が付いていて部屋全体が暖かい。
「結構、いい部屋じゃない。」
 エルフの女性ラナはそう言いながら部屋を見渡した。
 窓だけでなく、部屋の中からしか開かない非常扉もある。
 防災設備もそれなりに考慮しているらしい。

 その少し後にケイトがやってきた。
 ギルが見つけ、おや?といった表情をする。
「夜に来るなんて珍しいな。
 何かあったのか?」
「カイルって冒険者来なかった?
 仕事の話を兼ねた食事会って感じよ。」
「ああ、カイルが言ってたもう1人って、ケイトの事だったのか。
 個室は一番奥のG7だ。」
「ありがと。」
 そして奥の個室へと入っていく。
「こんばんわ。」
 皆席についていたが、カイルが立ち上がる。」
「好きなところに座ってくれ。」
「ありがと。
 じゃ、ここにするわ。」
 ケイトは薪ストーブから一番近い席、つまり端に座った。
 火の魔力を持つケイトは、この方が居心地が良い。
「じゃあまず自己紹介としよう。
 俺はカイル。
 人間の戦士だ。
 長剣を得意としている。」
「俺はシーマ。
 エルフのレンジャーだ。
 弓を得意としている。」
「俺はゴッセン。
 ドワーフの戦士兼僧侶だ。
 戦斧を得意としている。」
「私はラナ。
 エルフの僧侶兼レンジャーよ。
 シーマと同じで弓が得意。」
「私はミリア。
 人間の精霊使い兼吟遊詩人よ。
 主に水系ね」
「私はミウ。
 人間の魔法使いです。
 まんべんなく習得してる感じで、これが得意ってのは無いかな。」
「ケイト・セント・ウェストブルッグよ。
 城下町では魔術探偵を営んでいるわ。」
「魔術探偵・・・?」
「今受けてる仕事の関係でね。
 迷宮の情報が欲しいのよ。」
「それが何故、迷宮の都市伝説なんだ?」
「ありきたりの話より、その手の話の方が意外と的を射る事があるのよ。」
「分かった。
 俺たちが知ってる限りの情報を話そう。」
コメント
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