ペンネーム牧村蘇芳のブログ

小説やゲームプレイ記録などを投稿します。

蟲毒の饗宴 第8話(2)

2025-02-28 20:47:02 | 小説「魔術ファミリーシリーズ」ウェストブルッグ2<蟲毒の饗宴>
 辺りがすっかり暗くなると、今度はニードルのエルとイヴが再来。
 建物に入る予定であるが、
「ずいぶん周辺を警戒しているようね。」
「たぶんファイルを取られたからでしょ。
 散々かき回していったみたいだし。」
 二人にしてみれば、あの時のフランソワの動向も気になっていた。
 使い魔で偵察させただけとは思えない。
 必ず何か仕組んでいるはずよね。
「・・・イヴ、3階の窓が割れたままになっている。
 あそこから侵入するわよ。」
「了解。」
 二人は建物に近い外壁に登ると、
 装着していた手袋と変わった靴に魔力を流した。
 そして建物の壁にへばりつき、ヤモリのごとく壁を垂直によじ登っていく。
 王国承認暗殺ギルド“ニードル”の常備品、
 忍びの手袋と忍びの足袋によるもの。
 天井にすら余裕で張り付く事が出来るこの2品は、
 極東の国インタテスラからの輸入品である。
 見張りに気付かれる事なく3階の部屋へと侵入した。
 そこで二人が目にしたものは、
「これじゃ警備も厳重にしたくなるわね。」
 クールな声のエルであったが、イヴは笑いを堪えるのに必死。
 これでもかという程に、黒猫フレイアの足跡が縦横無尽に付いていた。
「インクは乾いているから踏んでも大丈夫・・・って、
 いつまで笑っているのよ。」
「ふ・・・腹筋が痛い・・・。」
「さっさと下に降りるわよ。」
 部屋を出れば、階段にも足跡が続いていた。
 見た感じ、ゆっくりと降りていったように見える。
「ある意味、凄い黒猫ね。」
 言いながら慎重に降りていく。
 見張りが外に集中しているからか、敵と遭遇する事なく1階に着いた。
 透化のマントで姿を見えなくしているが、廊下が狭い。
 天井もそれほど高くないから、やり過ごすのは難しいだろう。
 部屋を見つけては中に入って確認し、何も無ければまた次の部屋を探す。
 そんな中、敵と遭遇すると、
 エルは間髪入れずにダークを投げて相手を殺していく。
 ダークとは投擲専用に作られた短刀の事だ。
 エルはダークを相手の首に狙って投擲し、
 瞬時に声も出させずに絶命させるのを得意としている。
 殺したら、首にダークが刺さったままの敵をズルズルと部屋に入れ、
 返り血を浴びないようにダークを回収。
 そして探索を再開するの繰り返し。
 徐々に見張りの数が減っていく不気味さを、
 見張りの下っ端たちは感づいていた。
 が、これも時既に遅い。
「エル、見つけたわ。」
 数本の鍵が付いた鍵束。
 そして地下に降りる階段。
「イヴ、先に降りて待っていて。
 罠を仕掛けてから降りる。」
「あ、うん、分かった。
 気を付けてね。」
「すぐに降りるわよ。」
 エルはイヴが降りて行ったのを見届けると、
 ここで大きく深呼吸し、大きな息を吐いた。
 吐息が薄っすらと緑色に見える。
 それだけだった。
 それだけすると、エルもさっさと降りていく。
 イヴが、え?といった表情をする。
「もう罠を仕掛けてきたの?」
「さっさと先を急ぐわよ。」
「え、ええ・・・。」
 立ち去った後、階段入口は地獄絵図と化す。
 立ち入った者すべてが苦しみ、吐血し、絶命した。
 生き残った者は無し。
 人形娘エルのユニークスキル、全身武器。
 薄緑色の吐息は、超猛毒として吐く事の出来る即死効果のブレスだった。

 エルとイヴが地下の通路を小走りに移動していると、
 先頭のエルがピタリと足を止めた。
「どうしたの?」
「微かだけど風を感じる。」
 そう言われ、イヴは壁を調べるが特に何も無い。
 ・・・いや、でも確かに私も感じる。
 いったいどこから・・・あ!
「エル、足元!」
 暗い通路で分からなかったが、マンホールだ。
 こんな場所に?
 開けてみると少し固いが開いた。
 しばらく使ってないみたいね。
 エルが頷く。
「降りるわよ。」
 降りてみると、地下下水道に着いた。
 途中で滝のように流れているのか、
 流れている先の方でドドドと濁音が聞こえる。
「ここは下水道の上流の方みたいね。
 いざって時の緊急避難通路に使えるんじゃない?」
 イヴの声にエルは、
「そう・・・ね。」
 と言いながら何かを感じ取っていた。
 そして
「こっちに行くわよ。」
 と下流へ歩く。
 迷う事なく下流を選択し、何かに引き寄せられるように歩いている。
「エル?」
「・・・お香の匂いがする。」
「お香!?
 こんな下水道で?」
 下水道、とは言っても古の世界の遺産と言える大下水道は、
 今や地下水が流れる川の様な存在で、悪臭はそれほど無い。
 しかし、だからといって他の香りを瞬時に嗅ぎ取るなど、
 常人には不可能だ。
 これは人形娘エルだからこそ出来る嗅覚の力。
 歩いていくと、他のマンホールにつながっているであろう梯子が見えた。
 梯子を見ると、ごく最近、
 それも数時間前くらいに数人で使用した様な痕跡がある。
「誰かが使っているのは間違いないわね。」
 梯子を登らずに通過して臭いの元を辿る。
 すると、突如として右側に大きなフロアが見えてきた。
 このフロアからお香の匂いがする。
 ここまで来るとイヴも感じ取れていた。
 しかしエルは立ち止ったままフロアに入らない。
「イヴ、ここ、一方通行よ。
 迷宮トラップだわ。」
「え?
 もしかして西区の地下迷宮?」
「迷宮だと、もし逃げ込んだ場合、無事に地上に帰れる保証は無くなる。
 ここは避難経路には向かないわ。
 上流に戻るわよ。」
「分かった。
 ・・・でも何で、一方通行の空間だって分かったの?」
「見れば分かるでしょ。」
「・・・。」
 どう頑張って見ても分からなかった。
 人形娘は、エルもドールも五感が特殊になっている。
 幻術や罠を目視で見抜く視覚や、微量な香りを感じ取れる嗅覚などは、
 その力の一端だ。
 エルの五感で語られても、イヴがついていけるわけがない。
 的確に首元を刺す投げナイフの腕前といい、この凄まじい五感といい、
 エルがニードルで序列1位の理由が分かるわ。
 もしかして、ケイトのところにいるドールもそうなのかしら?
 などと考えながら歩いていると、1つ気付いた事がある。
 この地下下水道、地下迷宮の外側半分を囲む様な水路になっていた。
 先ほど通り過ぎた梯子のところまで来る。
「登るわよ。」
 マンホールを開ければ西区の外に出られた。
「脱出経路としてはいいけど、使った痕跡がある以上、少し危ないわね。
 敵に待ち伏せされる可能性が高い。
 また戻って、別ルートを探る。」
 ここは夕方遅くに冒険者カイルたちが登った梯子。
 でもエルとイヴはそれを知らない。
 だからまた地下下水道に戻る。
 そして上流の先に、上下に長く伸びた螺旋階段が姿を現した。
 手前にはボロボロの看板が1つ。

『緊急避難階段。
 常時の使用はお控え下さい。』

 螺旋階段の上下を見ると、途中に扉があるのが分かる。
 とりあえず上に登り、その扉を開けようとするが開かない。
 鍵が掛かっていた。
「あ、任せて。」
 イヴが魔力で難なく開錠。
 ソッと開けると、通路の終端のような所に出る。
 通路の壁には
『B2C』
 の文字があった。
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第4話 ホームルーム(氏名登録)

2025-02-28 20:44:27 | ゲームプレイ記録「真・女神転生Ⅴ VENGEANCE 復讐の女神編」
 下校前のホームルームから始まる。
 他の生徒同様、主人公も席についていた。

男の先生
「いいか、よく聞け。
 先日配布された端末に、
 まだ登録をしていない者がいるようだ。
 そろそろ仮アカウントの期間が終了するから、
 今のうちに登録を済ませておけ。」

 あなたの苗字を入力してください(4文字まで)。

 大鳳


 あなたの名前を入力してください(4文字まで)。

 吼

 「大鳳吼」
 この名前でよろしいですか?

 「はい」

 大鳳吼の名を知らない方は、夢枕獏先生の小説
 「キマイラ」
 を読んでみることをお勧めする。

男の先生
「あーそれからもう一つ。
 最近物騒だから、必ず集団で寮まで帰るんだぞ。」

 大鳳吼が席から外を眺めてみると、
 もう他クラスが下校している様子が見えた。

男の先生
「ホームルーム終わるぞ。」

 生徒全員が立ち上がり、先生に一礼。

生徒全員
「ありがとうございました。」

!集団での下校が推奨されているようだ。
 教室の中で一緒に帰る相手を探してみよう。

!ミニマップについて
 左下に周囲の状況を知らせる
 ミニマップが表示されています。
 「…」が出ている所には
 会話可能な人々が存在します。
 近づいてAを押して
 話しかけてみましょう。

!メニューとセーブ
 マップで主人公が操作できる時
 Xを押すことでメニューを開き、
 ゲームデータのセーブや
 プレイ環境の設定などを行うことができます。
 メニューの各種機能は
 ゲーム進行に応じて解放されていきます。
 なおセーブ可能なタイミングであれば
 <を押すことでもセーブができます。
 こまめにセーブすることをお勧めします。

 ここでセーブ可能なので、セーブしてみる。
 <キー(Lコントローラーの左キー)を押すと
 セーブ画面が出る。
 ファイルはNo.1から20まで。
 とりあえずNo.1にセーブした。
 ……セーブファイルって、20も必要なのか?

 Save
 Name 大鳳吼
 Location 縄印学園高等科 2階
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蟲毒の饗宴 第8話(1)

2025-02-27 20:47:44 | 小説「魔術ファミリーシリーズ」ウェストブルッグ2<蟲毒の饗宴>
 カイルが必死に墓守の姿を探すが、影も形も見えない。
 ふいに走り出そうとしたところをシーマに止められた。
「よせ、カイル!
 この地図をよく見ろ。
 墓地のエリアを抜けたら一方通行の空間だらけだ。
 パーティーがバラバラになってしまうぞ!」
 そう言われ、カイルはようやく落ち着きを取り戻す。
「すまん。
 あの墓守、どうしても幽霊に思えなくてな。」
「それは俺も同感だ。
 ・・・何らかの接点で関係している者だろう。
 でなければあまりにも不自然すぎる。」
 ここでラナがボソリと呟く。
「もしかしたらさ、あの墓守、一方通行の空間を行き来してたから
 気配を感じなかったんじゃないのかな。」
「・・・そうだな。
 そう考えると辻褄が合う。」
 答えながら、カイルは地図を見入っていた。
 地図の通りなら、このまま東に歩けば
 下水道の上流に出れる一方通行がある。
 間もなく夕方だ。
 時間を考慮するなら、ここは一度地上に帰って
 作戦を練った方が無難だろう。
 急いては事を仕損じる。
「このまま東に歩いて下水道の上流に出る。
 その周辺から真上に伸びた梯子があるから、それでひとまず帰ろう。
 また酒場で個室を借りて、作戦会議だ。」
「賛成だ!
 さっさと帰ろうぜ!」
 酒場と聞いて真っ先に賛成の声を上げたのはゴッセンだった。
 まあ今回は皆も疲れていたので賛同する。

 地上に出れば、もう間もなく真っ暗になりそうだった。
「もうこんな時間か。
 まず冒険者ギルドに寄ろう。
 解体した巨大蜘蛛を換金だ。」
「入手した地図はどうする?」
「ギルドに見せて万が一没収されたら敵わないからな。
 とりあえず黙っていよう。
 もし地図の事を言われたら、ラナが書いていた地図を見せればいい。」
「え、あたし墓石から下水道への出口まで書いちゃったよ。」
「実際に探索してきた箇所の報告だから、それでいい。」
 話しながら、カイルたちは小走りで冒険者ギルドに向かっていった。
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第3話 オープニング(ストーリーの選択)

2025-02-27 20:44:28 | ゲームプレイ記録「真・女神転生Ⅴ VENGEANCE 復讐の女神編」
 この物語はフィクションです。
 登場する人物・団体・名称等は架空であり、
 実在のものとは関係ありません。

 うつせみの常なき見れば世の中に
       心つけずて思ふ日ぞ多き

 (現実の無常さを見て
  世事に打ち込む事も出来ず
  物思いにふける日が多くなる。)

               -万葉集

 ATLUS presents

 学生たちが通学する様子を背景に、
 人ならざる者と思える女と男が交互に語り出す。

女の声
「はるか昔、神により創られた秩序の世は
 神の僕たる天使たちにより正しく導かれていた。
 その世の中で、人々は幸せを感じ、
 健やかに繫栄していった。」

男の声
「しかし神の世といえど永遠ではない。
 神の生み出した清らかなる流れも、
 人の営みの中でいつしか淀み世を腐らせる毒となる。」
 
女の声
「そして狂った秩序は混沌となり、
 過ぎた混沌もまた秩序によって飲み込まれていく。」

男の声
「諸行無常なるこの世の中で知恵を得た人間たちが、
 いかに歩み、そして骸となるか…」

女の声
「新たな王の生まれるその日まで、
 ゆっくりと眺めさせてもらうとしよう。」

男の声
「…ここを通らんとする魂か。」

 確認するように自らの両手を見つめた。
 ここは周囲を霞で覆われ、
 遥か高い位置にある謎の場所。
 目の前にある道に、暗き人影がある。
 男の声は続けて語り出す。

男の声
「ここは未来へと繋がる道。
 汝の歩む先が世界の在り方を決める。

 視線が左側に向かれると、
 うずくまったような人影らしきものが見えた。
 そこに近付き、手を差し伸べようとする。

男の声
「…その手を止めろ。
 その少女は存在の許されぬ魂。」

 そう言われたからか、手を引っ込める。
 すると別な方角から女の声が聞こえてきた。
 今立っている位置は十字路の中心の様だ。

女の声
「世界に混乱と破滅を導く相を持つ。
 この地で永遠に封じるべき存在。」

男の声
「少女を連れて行くことは、
 世界をあるべき未来ではなく、
 未知なる世界へと繋げるであろう。」

女の声
「それでもその少女の手をとるのか?」

「手をとる」(※左キーで選択。)

 すると、うずくまっていた少女は立ち上がった。
 ショートヘアのスリムなシルエットが
 後方の光を帯びている。

少女
「ありがとう。」

 そう応えると少女は手を離し、
 後方の光りの指す方へ歩いていった。

男の声
「愚かな…、汝のその選択が
 世界の命数を縮めた事を忘れるな。」

女の声
「願わくば汝が歩むその先で
 正しき道へ戻ることを…」

!『真・女神転生Ⅴ Vengeance』では
 あなたが少女の手を取ったかどうかで
 ストーリーの内容が大きく分かれます。

 ■創世の女神編
 『真・女神転生Ⅴ』のストーリーです。

 ■復讐の女神編
 『真・女神転生Ⅴ Vengeance』で
 新たに追加されたストーリーです。

 少女の手を取ったあなたは
 「復讐の女神編」を選びました。
 このストーリーでゲームを開始しますか?

「開始する。」
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蟲毒の饗宴 第7話(3)

2025-02-26 20:44:01 | 小説「魔術ファミリーシリーズ」ウェストブルッグ2<蟲毒の饗宴>
 一方、例の建物では怒声が響く。
「バカヤロー!
 猫1匹にどこまで好き放題やられてんだ、おめえらは!!」
 ごもっとも、としか言いようがない。
 しかしながら、あの悪戯猫にお仕置き出来るのはケイトくらいである。
 クソッ、ファイルだけ持ち去っていきやがった。
 ただの野良猫じゃねえ。
 猫の主にあの文字を解読されたら、必ずこの建物に来るはずだ。
「今夜見張りを厳重にしろ!
 必ず何かが来るぞ!」
「は、はい!」
 怒鳴っていた男は、冷や汗が流れていた。
 冗談じゃねえ。
 ここで食い止めておかねえと、あの用心棒2人のどっちかに殺されちまう。
 必死な思いなのは当然だが、世の中やっぱり甘くない。
 エルとイヴだけではない。
 冒険者カイルたちだけではない。
 ドクター・スノーが仕組んだ魔眼に魅せられた者と、
 フランソワの使い魔が撒いた種が、現場を更に混乱化していく。

 冒険者カイルたち一行は、倒した巨大蜘蛛の解体をようやく終了。
 だが長い脚が大半を占めていたせいか、
 デブ鼠ほど袋がパンパンにならなかった。
「デブ鼠ほどじゃなかったな。」
 ゴッセンが最後の袋詰めをして一息つく。
 休憩をとり、それから立ち上がって辺りを見渡すが広い。
 4方向とも壁は見えなかった。
「普通は上の階と同じ広さだと思うが、ここは違うようだ。
 シーマ、ラナ、何か気配を感じるか?」
 カイルに言われるまでもなく四方に気を配っているが、特に何も感じない。
「いや、何も無い。」
 次はミウに指示を出す。
「ディレクション(方向感知)を使ってくれ。
 とりあえず西端を目指す。」
「なんで西端なの?」
「西側にAブロックがあるからだ。
 もしかしたらAブロックに通じている扉があるかもしれない。」
「分かった。
 詠唱するね。」
 ミウがディレクションを唱えた。
 この魔法は術者の脳裏に、常に北を指し示してくれる。
 北が分かれば、他の3方向も分かるというもの。
「こっちだよ。」
「よし、慎重に行くぞ。」
 上の地下2階もだったが、ここも部屋の類が無い。
 まるで巨大な洞窟だ。
 壁が見えたところで、西側の壁を丹念に調べていく。
 しかしAブロックに通じるものは何も無し。
 アテが外れてしまった。
 次は北側の壁を調べる。
 すると少し歩いたところで、お香の香りが匂ってきた。
 何かの花を原料にしたお香なのか、とても良い香りがする。
「香りのする方向に向かうぞ。」
 すると、このフロアの北東部にあたる場所に、
 人の身長ほどの大きな石がいくつも見えてきた。
 多い。
 50基はあるのではないだろうか。
 その50基の1つ1つに、お香が供えられていた。
 石には名前らしきものが刻まれている。
「こんなところに何用かね?」
 !
 遠くから声が聞こえた。
 東側だ。
 足音がする。
 皆が戦闘態勢をとっているところに、ゆっくりと歩いてくる者がいた。
 背が高い。
 身長180は超えていそうだ。
 大柄な男は、僧侶の法衣をまとい、フードを深く被り、
 巨大な錫杖を片手で持っていた。
 そしてもう片手にはランタン。
「・・・まさか、迷宮都市伝説の墓守か。」
「迷宮都市伝説とやらは知らぬが、いかにも小生は墓守のような存在。
 ここは、何処より彷徨う者たちが行き着く場所のようでな。
 よく骸骨が転がっている。
 拙僧の事は墓守と呼んでよい。
 お主たちはどこから来たのだ?
 見たところ、死にかけているわけでもなさそうだが。」
「この上の階層から。
 巨大蜘蛛を倒してきたところだ。」
 そう言ってカイルは、袋の1つを開いて見せた。
「ほう、これは凄い。
 この墓地まではどうやって来たのだ?」
「西側の壁をつたって壁沿いに歩いてきただけだ。」
 そう答えると、墓守は軽く頷いた。
「そなたらはなかなか運が良いようだ。
 このフロアは一方通行の空間が多くてな。
 迷えば最後、死ぬまで抜けられなくなる。」
 ラナが恐る恐る聞く。
「出口はあるの?」
 そう言われ、墓守は大きな和紙を懐から取り出し、1枚差し出した。
「これを授けよう。」
 皆でそれを見て驚愕する。
「地図か!」
「・・・おい、この地図・・・!」
 いつの間にか、墓守は忽然と消え失せていた。
 辺りに気配は感じない。
 ・・・というか、声を掛けられた時も気配を感じていなかった。
「まさか、幽霊?」
 ここは剣と魔法の世界。
 もし見つけたら神聖魔法のディスペル・アンデッドで
 成仏させてあげましょうねと言われる程度のお話。
 幽霊だからといって、怯えるような事はない。
 受け取った地図は詳細だった。
 この地下3階Bブロックの一方通行まで事細かく記載されている。
 下水道からも出入り出来る箇所がある。
 そして何より驚いたのは・・・。

 毒花ペレス栽培施設への、地下からの出入り口。
 王城区域貴族エリアへの、地下の連絡通路。
 そして、地下迷宮Cブロックの存在。
 そこは、奴隷商アラクネの管轄エリアと記載されていた。
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