ペンネーム牧村蘇芳のブログ

小説やゲームプレイ記録などを投稿します。

第105話 アマラ深界(第5カルパ・残り2つの扉)

2025-01-26 11:34:59 | ゲームプレイ記録「真・女神転生Ⅲ NOCTURNE HD REMASTER」

 邪教の館で悪魔合体を行う。
 素材に使う大天使ミカエルはまだ使いたいので、
 合体後、悪魔全書で購入する。

☆大天使:メタトロンLV95/HP744/MP387
 合 体:大天使ミカエル×天使ソロネ
     イケニエ魔王アバドン
 能力値:力32/魔34/体29/速24/運16
 相 性:破魔・呪殺・バッドステータス攻撃無効
 スキル:マハンマオン/メギドラオン
     汚れ無き威光/勝利の雄叫び
     タルカジャ/ラクカジャ
     マカカジャ/ランダマイザ

メタトロン
「我は大天使メタトロン。
 この身に宿りし神の怒り、
 そなたに預けん…」

 …毎度思うのだけど、なんでレベル95の
 悪魔の初期スキルにマハンマオンなの?
 レベル95って破壊神シヴァと同レベルなんだよ?
 レベル95らしく汚れ無き威光くらい付けてくれ。

 と、作った後で文句をブツブツ言いながら、
 アマラ深界第5カルパへ行く。

 妖精ティターニアがLV83に。

☆妖 精:ティターニアLV83/HP696/MP369
 能力値:力22/魔40/体33/速22/運22
 相 性:破魔・呪殺反射、魔法全般に強い
 スキル:絶対零度/氷結高揚
     汚れ無き威光/メギドラオン
     メディアラハン/常世の祈り
     ラクカジャ/勝利の雄叫び

 B4Fに着いたら、北東にある北の扉へ。

扉の声
「ここを通らんとする者よ。
 汝の光に選ばれし友を示せ。」

 隼人は大天使メタトロンを示した。

扉の声
「おお…汝はまことの友を持つか!
 通るがよい。」

 扉を開けて通ると、
 部屋の隅に落とし穴が見えた。
 飛び降りてB5Fに着く。

 ここはマス目状に部屋が並ぶエリア。
 下りたこの部屋には南と西に扉がある。
 少し歩くと扉の声が警告した。

扉の声
「侵入した悪魔に告ぐ…
 ここでは我ら扉が法である。
 我ら扉を通過できるのは、
 3度までとする!」

 この部屋は南と西に扉があった。
 ここは南の扉を選択して通過する。
 すると次の部屋に入った途端、また警告。

扉の声
「侵入した悪魔に告ぐ…
 何人であろうと我らを通過できるのは、
 あと2度までである!」

 ここには龍王ナーガラジャがいた。

悪魔(龍王ナーガラジャ)
「この辺りで、珍しい力を持つ悪魔が
 買えると聞いたのですが…
 すっかり迷ってしまったようです。
 …困りましたね。」

 闇ブローカーがどこかにいる
 という情報だった。
 …しかし、大天使メタトロン不在で
 どうやってここまで侵入したのか、
 そっちの理由の方が気になる。

 この部屋は北と東と南に扉があった。
 ここも南を選択して通過する。

扉の声
「侵入した悪魔に告ぐ…
 何人であろうと我らを通過できるのは、
 あと1度までである!」

 この部屋は北と東と南に扉、
 西は扉が無くそのまま隣の部屋に
 行けるようだ。
 ここも南を選択して通過する。

※ちなみに、ここから扉の無い西に、
 その後、南の扉を開けると
 最後の墓標の間に辿り着く。

扉の声
「侵入した悪魔に告ぐ…
 すでにキサマは、我ら扉を3度通過した。
 これより先へ進むこと叶わず!」

 そう言われるが、
 この部屋は東側に扉が無い。
 そして扉が無いから東の部屋の奥が
 見えるのだが、思念体らしき者がいる。
 早速、東の部屋に入って声をかけた。

闇ブローカー
「…オマエ、なかなかの強さだな。
 悪魔を…買わないか?
 その悪魔ってのは…
 呪われし悪魔の力を得た
 最強のゾウなんだ。
 仲魔にすれば、どんな敵をも貫く
 凄まじい攻撃をするだろうよ。
 値はちと張るが、欲しくなるだろ?
 200000マッカだが…買うか?」

隼人
「買う。」

闇ブローカー
「オマエ、いい買い物したぜ!」

 隼人は、闇ブローカーから
 悪魔を買いとった。

☆邪 神:ギリメカラLV58/HP474/MP225
 能力値:力22/魔17/体21/速13/運13
 相 性:物理反射、呪殺無効
 スキル:バインドボイス/乱入剣/会心
     煌天の会心/静天の会心
     全体攻撃/気合い/貫通

 貫通スキルを購入したと言った方が
 正しいと思う。
 この為に大天使メタトロンを作った
 といっても過言ではない。
 …天使ソロネの成長から始まって、
 長い旅路だったよ、ほんと…

 あとは帰るので、わざと扉を開ける。
 (どこの扉でもよい。)

扉の声
「言ったはずだぞ…愚かな悪魔め!
 早々に立ち去れ!」

 B3Fの北側に強制転移させられる。
 目の前はダメージゾーン。
 リフトマを使って南に進むと
 魔法の箱があるけど、中身は空っぽだ。

※これは第4カルパ冥府の宝物庫にある
 魔法の箱の1つとリンクしているから。
 先にそちらでくらましの玉5個を
 入手していると、こちらは空っぽになる。

 南東側からダメージゾーンを抜けて、
 梯子に行く途中で堕天使エリゴールの
 存在に気付く。

悪魔(堕天使エリゴール)
「天界より追われた天使は、
 悪魔になるしかなかった…
 それは堕ちた我らが罪か…
 それとも追った天使どもの罪か…
 あの御方はどう仰られるのであろうか…
 一度伺ってみたいものです。

 堕天使エリゴールって、
 悪魔の中で一番紳士な気がするよ…
 天使どもは見習ってほしいものだ。

 アマラ深界入口まで戻ったらセーブ。
 小休止したらまた悪魔合体を行う。

☆妖 魔:アプサラスLV8/HP84/MP42
 合 体:妖魔イソラ×精霊アーシーズ
     イケニエ邪神ギリメカラ
 相 性:電撃吸収/火炎に弱い
 スキル:子守り歌/誘惑/クロズディ
     貫通/気合い/会心/全体攻撃

 素材用。
 貫通スキルを3900マッカで購入できるようにした。
 閣下に通常ダメージを与えるには貫通スキル必須。
 隼人とライドウ以外でも貫通攻撃できる悪魔を
 後で作成したいと思う。

 次に、アマラ深界第5カルパの最後の扉を開ける
 為の悪魔を作成する。

☆魔 王:ベルゼブブ(人型)LV90/HP702/MP360
 合 体:魔王モト×精霊アーシーズ
     イケニエ幽鬼ピシャーチャ
 能力値:力33/魔30/体27/速21/運19
 相 性:破魔・呪殺・バッドステータス攻撃無効
 スキル:マハジオダイン/メギドラオン
     ランダマイザ/地獄突き/冥界破
     貫通/気合い/会心

ベルゼブブ
「私は魔王ベルゼブブ。
 さて、人修羅にひとつ力を
 貸してやるかの…」

 魔王モトは以下の手順で作成した。

 (1)聖獣キマイラ
  =天使ソロネ×魔獣ケルベロス
 (2)神獣バロン
  =聖獣キマイラ(1)×魔獣ケルベロス
 (3)破壊神シヴァ
  =神獣バロン(2)×鬼女ランダ
   イケニエ妖魔アプサラス(貫通所持)
 (4)邪神マダ
  =天使ソロネ×堕天使フラロウス
 (5)魔王モト
  =破壊神シヴァ(3)×邪神マダ(4)
   イケニエ堕天使エリゴール

 隼人のレベルが95なので、
 全ての悪魔が作れるようになったのは良い。
 第二形態の蝿型にアイアンクロウを付けるのは
 スキル変化しか方法が無いのでかなり面倒。
 今回はそこまでこだわるつもりは無いので、
 地獄突きと冥界破で妥協した。
 杖持っているけど、
 武器系スキルは習得できないんだよね…

 ここまでにライドウがLV93に。
 封魔の鈴を貰った。

☆???:ライドウLV93/HP708/MP354
 能力値:力31/魔25/体25/速26/運17
 相 性:破魔・呪殺・バッドステータス攻撃無効
     物理・魔法全般に強い
 スキル:ブギウギ/ヨシツネ見参/的殺/挑発
     モコイブーメラン/ミシャグジ雷電
     永世ライドウ/ジライヤ乱舞

 では、もう一度アマラ深界第5カルパへ行く。

 隼人がLV96に。
 三分の活泉を覚えた。
 ショックウェーブを諦めた。

☆修羅王:檀隼人LV96/HP982/MP384
 能力値:力31/魔30/体25/速30/運27
 補正値:力+1/魔+2/体+5/速+7/運+4
 合 計:力32/魔32/体30/速37/運31
 禍 魂:ソフィア/破魔無効
 スキル:至高の魔弾/死亡遊戯/気合い
     貫通/会心/三分の活泉
     タルカジャ/精神無効

 魔王ベルゼブブがLV91に。
 見覚えの成長を覚えた。
 マハジオダイン、電撃高揚を諦めた。

ベルゼブブ
「我が部下がこんなモノを
 運んできおったわ…」

 パールを貰った。

 ベルゼブブの体に異変が起きた。
 見届けると、巨大な蝿の姿に変化した。

ベルゼブブ
「これが魔王ベルゼブブの真の姿よ。
 …では先を急ごうかの、人修羅よ。」

 ベルゼブブ(人型)は
 ベルゼブブ(蝿型)に変化した。

☆魔 王:ベルゼブブ(蝿型)LV95/HP738/MP372
 能力値:力35/魔29/体28/速29/運21
 相 性:破魔・呪殺・バッドステータス攻撃無効
 スキル:地獄突き/冥界破/メギドラオン
     ランダマイザ/貫通/気合い/会心
     見覚えの成長

 B4Fに着いたら南西の部屋の扉へ向かう。
 扉の手前にいる、
 邪神トウテツの台詞が変化していた。

悪魔(邪神トウテツ)
「ソナタ カンジルカ?
 先ホド 感ジタ妖気ガ
 消エ去ッタノヲ…
 アレホドノ 力ノ持チ主 倒ストハ
 凄イヤツモイルモノダ。」

 倒した者も、倒された者も、
 目の前にいるんだけど…
 仲魔にしたら、
 凄い妖気が無くなったんだろうか?

扉の声
「ここを通らんとする者よ。
 汝の混沌の化身たる友を示せ。」

 隼人は魔王ベルゼブブを示した。

扉の声
「おお…汝はまことの友を持つか!
 通るがよい。」

 ちなみに人型ではダメ。
 蝿型に変化したベルゼブブでないと
 通してくれないから要注意。

 この部屋には魔法の箱が2箱ある。
 反魂香10個とソーマ10個を入手した。
 反魂神珠がある今、反魂香は売るしかない。
 …もっと別のアイテムにしてほしかったよ。

 アマラ深界入口に戻って転移。
 ニヒロ機構マルノウチのターミナルでセーブする。

 次は、公の御剣を使う。

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禁断の果実 第14話

2025-01-26 11:18:47 | 小説「魔術ファミリーシリーズ」ウェストブルッグ1<禁断の果実>

 飛空挺と呼ばれる、
 ある特殊なガスを燃料とした空飛ぶ乗り物が
 大量の荷物を運送するようになってからは、
 荷物に限らず一般の人間の交通手段にもなっていた。
 王国から南へ5キロほど行ったところに、
 それらが発着する空港がある。
 この空港が建設されたと同時に、
 あらゆる物資を一時的に保管する貿易倉庫も
 北門から南門付近へと引っ越ししていた。
 北門にあった倉庫群は“旧倉庫”と呼ばれ、
 現在売却中である。
 60ちかくある旧倉庫のうち47もの倉庫が売却され、
 新たな店が建ったところもあれば、
 どでかい屋敷が建ったところもある。
 中には、そのまま倉庫として利用している業者もいる。
 一例を挙げればキルジョイズの酒場などがそうだ。
 だが、この倉庫はどうだろうか?

「ここのようです。」
 神聖魔法の使い手であるアリサの、
 探索の魔法の光が導いた先が、
 この倉庫の正面で強く光った。
 アリサは、魔法の効果を解除する。
「では入るとしよう。」
 アガンは、そう言うや正面扉に手を掛けた。
 アリサが思わず凝視する。
「このまま正面から入られるのですか?」
「今回の主となる目的は敵の殲滅にある。
 隠れて裏口から侵入する理由など無い。」
 ごもっともな意見に、アリサは言葉を失った。
 そして人形娘が、
「私も正面から入るべきだと思います。」
 と、暗黒騎士に同意した。
「・・・いいの?」
「裏口から訪問するのは失礼だと思います。」
「・・・。」
 同意はしているが、
 話の論点はモロにズレているようであった。
 これで真面目に話しているのだから、
 人形娘の意図は掴めない。
「じゃあ、さっさと入って
 さっさと済ませましょう。」
 後方にいた吟遊詩人ルクターが、
 前へやってきてヨイショと言わんばかりに
 扉を開けてしまった。
 ゴゴゴと、
 少し重みのある音が中の広い空間に響く。
「待ち伏せの敵は無しか。」
 全員、扉からまだ一歩も中に入っていない。
 ドールの魔法の詠唱が終わるのを待っていた。
 詠唱が終わると、
 皆の足が地面から数ミリほど宙に浮いた。
「浮遊の呪文ね。」
「はい。
 これで床に仕掛けられた罠を全てかわせます。」
 倉庫内の床には、
 埃が積もっているにもかかわらず
 足跡が1つも無かった。
 それを見越して、
 ドールは安全策を取ったのだろう。
 4人は、大胆にも中央をゆっくりと歩きながらも、
 辺りを慎重に見渡す。
「おかしいな。
 静かすぎるね、アガン。」
「ああ。
 イヴ以外の人間は
 出払ってしまったのかもしれん。」
 ついに何も無く、
 奥の小部屋に行き着いた。
 ここが倉庫としていた時の
 従業員用の休憩室だ。
 アガンが扉を開けた。
「扉に罠すら仕掛けぬか。」
 簡易ベッドが2台、事務用の机が1つ、
 そこにあったはずの投げ出されたボロボロの椅子、
 あとは何も無い、ただそれだけの小部屋だった。
 強いて言うなら、薄汚ない曇りガラスの付いた
 裏口用の扉がある。
 その扉は、妙なほどスムーズに開閉した。
 古さが感じられない。
「ここから出入りしているのは確かなようだ。」
「どこかに隠し扉でもあるのかな?」
 ルクターが手で壁を探るが、
 それらしいのは見当たらない。
「物理的な隠し方ではないのかもしれません。」
 ドールが不可解な事を語った。
「どういうことなの?
 扉なら物理的でしょう?」
「物理的なものを非物理的に隠す。
 つまり、魔法を用いて扉そのものを
 完全に見えなくした可能性が高いです。
 魔法使いが使う幻術系の魔法に
 そのような魔法があります。」
「どうすれば、その扉を発見出来るのだ?」
「見えなくした物を見えるようにする為には、
 隠した物の正面に立って
 パスワードを口にしなくてはなりません。」
「パスワード?」
「再び見えるようにする為の言葉です。
 その言葉は魔法を唱えた術者が設定します。」
 早い話が、暗唱番号ならぬ暗唱言葉が必要
 というわけらしい。
 しかも、正面に立ってとなると
 もはやお手上げである。
 ルクターがアガンを見、アガンが頷いた。
「すまぬが皆、
 その裏口から外に出ていてほしい。」
「何をなさるのでしょうか?」
「この部屋そのものを破壊する。
 そうすれば魔法に関係なく
 道が開けるだろう。」
 ルクターが、任せましたと言わんばかりに
 さっさと裏口から出た。
 アリサは、この紳士な男の
 突拍子も無い台詞に馴れてきたのか、
「・・・分かりました。」
 と言って外へ出た。
 ドールは、少しも驚くことなく、
「かしこまりました。
 宜しくお願い致します。」
 と、輪をかけた丁寧ぶりで一礼し、
 最後に外へ出た。
 その途端、ドォンと爆音が鳴り響き、
 裏口の扉がビリビリと振動して音を立てた。
 そして、
「入っていいぞ。」
 という、アガンの声が聞こえた。
 10秒もたたずに部屋を破壊したのか?
 今度はドールが先頭で入ると、
 辺りには何も無かった。
 机や椅子、そしてベッドは文字通り塵と化し、
 地下の部屋へと降り注いでいた。
 床を支えていた柱は残っているが床は無い。
 浮遊の魔法をかけていたから浮いていられるが、
 本来なら扉を開けて入った瞬間、
 地下の部屋に叩き落ちていったところだ。
 わずか数秒で、なんたる凄まじさ。
 そして、これを可能にする剣術は、
 ドールの知っている限りでは1つしかない。
「レクスタン剣術をお使いになるのですね。」
 アガンが、ピクリと反応した。
「よく御存じだな。
 私以外には2人しか習得していない、
 幻の剣術なのだが。」
「その2人でしたら、存じ上げております。」
「誰なのだ、その者らは?
 私ですら知らぬというのに。」
 そう、人形娘はあらゆる物事を知り過ぎだ。
 これが200年生きた証だとでも言うように。
「極秘事項です。」
 それでも黙秘するのはトコトンである。
 真面目に語っている以上、
 意地悪ではないのだろうが、
 やはり意地悪かもしれない。
 ドールは、浮遊の効果を徐々に無くしていき、
 皆をゆっくりと真下の地下一階へ降ろした。
 ガヤガヤと、人のざわめく声が聞こえる。
 地下に居を構えていたのだ。
「ようやく目的地に到着したと思ったら、
 敵が多そうだね。
 ここは僕に任せてアガンは休んでなよ。」
「では、そうさせてもらおう。」
 アガンは懐から耳栓を取り出し、
 両耳につけた。
 ルクターは、
 アリサとドールの2人に耳栓を渡し、
 つけるようお願いした。
 皆が耳栓したのを確認するや、
 ルクターがハープを手にした。
 魔の音色が地下に響く。
 すると、遠くで肉を切り刻む刃の音と、
 幾人もの断末魔が聞こえたかと思うや、
 突如として静まり返った。
 ルクターも演奏を止め、
 行きましょうと手で合図した。
 アガンが先頭に立ち、
 この部屋の1つしかない扉を開ける。
 続く廊下は血の海と化していた。
 仲間同士の激しい戦いによる結末であるのは、
 倒れている死に様を見れば一目瞭然だった。
 ルクターの先程の呪歌は、同士討ちさせる為の
 精神錯乱を目的としたものだったのだ。
 死の響のルクター。
 その異名に似合う音色の効果は並ではない。
 その血の海が延々と続く中を、彼等は悠然と歩く。
 が、そう簡単には進ませてくれそうにない。
 ズルズルと地を這う音。
 シュルルと唸る舌舐めずり。
 ジャイアント・バイパーと呼ばれる巨大な毒蛇が6匹、
 通路を抜けた踊り場で待ち構えていた。
 精神が錯乱された様子はまるでない。
「僕の呪歌では効きそうにないね。」
 ルクターは弦を解き、
 敵を切り刻むべく地に這わせた。
 アガンもスラリと剣を抜く。
 が、それらは全て無駄な行いであった。
 魔法使いの詠唱が聴こえたかと思うや、
 巨大な爆音よろしく、毒蛇は一瞬にして
 炎に包まれ炭と化したのである。
「入り口を破壊しての侵入と
 呪歌の調べを考慮するなら、
 敵の幹部たちが部下を盾にして
 逃走を計る可能性があります。
 これ以上時間はかけられません。
 走りますが宜しいでしょうか。」
 膨大な魔力を消耗した後の台詞とは思えない、
 疲れを見せぬ人形娘の行いは、
 瞬時にして皆の承諾を得ていた。
「行動が遅いか・・・
 その通りだったな。すまなかった。」
 アガンは、そう言うや剣を鞘にしまうと、
 ドールを抱き上げた。
 クールでいたドールの表情がかすかに揺れる。
「何を?」
「貴女は我らより体が一回り小さい分、
 走れば追いつけぬだろう。」
 アガンはそう言うや、
 通路を猛然と走り出した。
 ドールを抱いているアガンに、
 ルクターとアリサは追いつけない。
 なんという力の持ち主か。
 アガンが見えなくなっていく。
「アガン!」
「追いつけなければ後から来い。
 アリサ殿のボディーガードは任せたぞ、ルクター。」
 ついに2人は見えなくなってしまった。
 ルクターはアリサを見、
 アリサの走るペースに合わせることにした。
 が、通路の角を折れたところで
 進行を止めざるをえなかった。
 離ればなれになったのを、この小男は待っていた。
 通路脇の小部屋から、ユラリと現れ立ちふさがる。
「久しぶりですね、ベリス。」
「お前を殺せとの命令でな。
 悪く思わんでくれや。」
 ニヤリと不敵な笑みを見せるベリスを相手に、
 ルクターはアリサに声をかけた。
「下がっていてください。」
 だが、当のアリサと言えば、
「嫌です。
 その者は私がお相手致しますわ。
 あなたたち3人で楽しんでばかりで、
 暇だったんですもの。」
 ニッコリと可愛らしく笑うや、
 手にしていた多節棍の先をベリスへと向けた。
 そして、何やら魔法を唱える。
「・・・後悔するぞ。」
 ベリスが魔力を手中に集めはじめた。
 マジック・ミサイルを連打する気だ。
「後悔するのはあなたですわ。」
 アリサが先制した。
 ダン!と勢いのある足音と共に、
 自分の身長よりも長い多節棍を振り回す。
 突きによる攻撃でない分、
 スピードは劣るはずであったが、
 異常な程に早い。
 ベリスは防御するのが精一杯であった。
 多節棍を寸でで躱せば、
 煥発入れずにアリサの回し蹴りが襲い掛かる。
 この連続攻撃の回転技に、反撃の余地は無い。
 ベリスがたまらず極端に後方へと下がった。
 そして、それと同時にマジック・ミサイルを放つ。
 しかし、その全てが勢いよく弾かれた。
 吟遊詩人の呪歌すら打ち砕く
 ベリスの特異なマジック・ミサイルは、
 対ルクター戦の強力な武器である筈だった。
 それでも、アリサの神聖魔法には勝てなかった。
 神聖魔法のマジック・シールドは、
 対魔法系の攻撃なら完全に無力化できる
 魔法が備わっている。
 そのかわり自分の唱える魔法も無力化してしまうが、
 武術に秀でたアリサにとっては無敵の壁となっていた。
 突進しているアリサを前に、
 ベリスはマジック・ミサイルを己の足下に集中して打ち、
 アリサの頭上を超えてジャンプした。
 狙いは、後方にて見守っていたルクターだ。
 だが、世の中そう甘くはない。
 アリサは、勢いよく旋回して多節棍の先端を
 ベリスの方へと突き出した。
 本来なら敵に届くはずのない距離だ。
 しかし、アリサの多節棍は、
 中に仕組まれている鎖により
 間合いを倍に広げて攻撃出来る。
 多節棍は分離して伸び、
 ベリスの後頭部を一蹴、
 たやすく地に伏せさせてしまった。
 この凄まじい連続攻撃の素晴らしさに、
 ルクターは拍手で勝利を祝福したが、
 この後のおまけで即座に止んでしまった。
 ベリスが地に伏した次の瞬間、
 突如ボオオと激しく音を立て、
 なんとベリス自身が炎に包まれてしまったのだ。
 この奇怪な現象に、
 アリサもキョトンとしてしまっている。
 アリサは何もしていない。
 ルクターも何もしていない。
 ベリスは、断末魔と共にその場に崩れ落ち、
 人という原形だけを留めて炭と化した。
 これが、実はケイトの仕掛けた魔法である事に気付いたのは、
 アガンに抱かれている人形娘のみであった。

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第104話 カグツチ塔3(探索編・反魂神珠)

2025-01-25 12:40:34 | ゲームプレイ記録「真・女神転生Ⅲ NOCTURNE HD REMASTER」

 昇降ブロックで上がった先に、
 天使アークエンジェルがいた。

悪魔(天使アークエンジェル)
「北に真っ直ぐ進んだ先で、
 『カグツチ』を拝見してきましたよ。
 フン、偉そうにふんぞり返りやがって…
 千晶様の方が、ずっと気品がある。」

 それが言いたかっただけ…?
 まあ、ふんぞり返ってるのも事実か。

 目の前のT字路を西へ、
 次のT字路を北へ進むと
 ダメージゾーンが見える。

 リフトマを使って進む。
 東に折れ、T字路を南に進むと
 Sターミナルがあった。
 カグツチ塔3-A。
 まだ先は長い。

 天使アークエンジェルがいた所まで戻り、
 東へ進む。
 T字路を南に進み、東の扉を開けて進む
 とダークゾーン。
 しかも一方通行の扉だった。
 ライトマを使って、東に東にと進み
 昇降ブロックに乗る。

 444F。
 西に進むと光の道が現れた。
 また一方通行であるが、構わず進む。
 着いた所で北に進むと落とし穴に落ちた。

 431F。
 東に向いた状態で着く。
 南に向き、南へ進んで扉を開けると
 塔の外側に出た。

 ライドウがLV91に。

☆???:ライドウLV91/HP696/MP345
 能力値:力30/魔25/体24/速26/運17
 相 性:破魔・呪殺・バッドステータス攻撃無効
     物理・魔法全般に強い
 スキル:ブギウギ/ヨシツネ見参/的殺/挑発
     モコイブーメラン/ミシャグジ雷電
     永世ライドウ/ジライヤ乱舞

 大天使ミカエルがLV92に。
 タルカジャを諦めた。

☆大天使:ミカエルLV92/HP696/MP369
 能力値:力29/魔31/体24/速25/運18
 相 性:破魔反射、魔法全般無効
 スキル:デスバウンド/勝利の雄叫び/洗脳
     プロミネンス/ショックウェーブ
     絶対零度/ランダマイザ/デクンダ

 道なりに進み昇降ブロックに乗って、
 その先にある扉を開け再び塔の内部に
 入る。

 そのフロアにSターミナルがあった。
 早速セーブする。
 カグツチ塔3-B。

 その向かいの部屋にはマネカタ男がいる。

マネカタ男
「知ってます?」

隼人
「いいえ」

 ただ『知ってます?』と言われても…
 具体的に言わないから、とりあえず
 いいえと答えるしかないと思う。

マネカタ男
「この塔のどこかに、
 スゴイお宝があるそうなんです。
 命を扱うお宝だそうです。
 険しい道、落ちたり、
 体力削られたり、その先に…」

 ここに来るまでも険しい道だったよ。

 部屋を出て、西の扉を開けると、
 広く開けた場所に出た。
 中心が吹き抜けのようになっていて、
 正面(西側)奥に扉が、
 左側(南側)に天使ドミニオンがいるのが
 見える。

 まず現在地から南に進んで光の道を歩く。
 吹き抜けは、光の道を作る為のものらしい。
 すると光の道なのに、まさかの落とし穴。

 431Fに下りた。
 AのSターミナルに近いが、
 完全に分断されたエリアのようだ。

 目の前の扉を開けて進むと一方通行の扉。
 引き返せない、通路の選択は無いので、
 目の前の通路を進んでいくしかない。
 2つ目の扉も一方通行であったが、
 入ったこの部屋には魔法の箱があった。
 グレイトチャクラを1個入手。

 この部屋に1つしかない扉を開け、
 目の前のダメージゾーンの脇を歩いて
 北の扉を開くと昇降ブロック。
 乗ると444Fに戻ってきた。
 BのSターミナルでセーブする。

 再び光の道がある吹き抜けのフロアへ。
 先ほどは南だったが今度は北に進む。

 妖精ティターニアがLV82に。

☆妖 精:ティターニアLV82/HP642/MP366
 能力値:力22/魔40/体25/速18/運18
 相 性:破魔・呪殺反射、魔法全般に強い
 スキル:絶対零度/氷結高揚/ラクカジャ
     メギドラオン/汚れ無き威光
     メディアラハン/常世の祈り
     勝利の雄叫び

 北側のブロックに着いたら次は東へ。
 すると中央の浮島ブロックに着く。
 ここから西に進むと南側のブロックに着く。
 天使ドミニオンのいる所だ。

悪魔(天使ドミニオン)
「これはこれは『人修羅』さん。
 よくもまあ、我々に合わす顔が
 あったものです。
 千晶様なら、
 この先にいらっしゃいます。
 …その手に握られたタカラの球と、
 そして、あなたのお命、
 我らヨスガが貰い受けましょう。」

 魔神バアル・アバターの居場所を
 教えてくれる水先案内人だった。
 まだ会うつもりはない。
 天使ドミニオンはアマラ神殿の
 フィールドで散々倒してきたから、
 多少の愚痴はスルーしてあげよう。
 (天使巡礼で宝石4個もカツアゲしたしね。)

 ここから北に進むと西のブロックへ。
 扉を開けるとダメージゾーンが見えるので
 リフトマを使う。
 ダメージゾーンの中央で落とし穴に落ち、
 431Fの西側エリアへ。

 下りた位置から、
 北側にあるダメージゾーンを歩いて
 北に向かう。
 ダメージゾーンでない箇所は落とし穴。
 安全だと思うと更に下に落とされるので
 要注意だ。

 隼人がLV94に。
 テトラカーンを諦めた。

☆修羅王:檀隼人LV94/HP738/MP402
 能力値:力31/魔30/体24/速30/運26
 補正値:力+2/魔10/体+5/速+1/運+2
 合 計:力33/魔40/体29/速31/運28
 禍 魂:カイラース(ノーマル耐性)
 スキル:螺旋の蛇/死亡遊戯/気合い
     貫通/会心/精神無効
     タルカジャ/ショックウェーブ

 壁伝いに、ダメージゾーンを優先にする
 感じで歩いていく。
 ダメージゾーンが道案内になっている感じ
 なので、歩くのは思ったほどひどくない。

 このダメージと落とし穴だらけのフロアで、
 マップ上、南西に2つ縦に並んでいる
 落とし穴に落ちる。
 (どちらの落とし穴でも良い。)

 418Fの短い1本道に着く。
 南に歩けばすぐ転移。

 着いた所は同階の北端に位置するエリア。
 ダメージゾーンの中央に宝箱があった。
 宝箱を開けようとすると、
 魔王モト3体、外道シャドウ3体と
 強制戦闘になる。

1ターン目

 魔王モト1、メギドラオン、
 隼人は躱した、他はダメージ、
 外道シャドウ1、隼人に攻撃、
 隼人、ダメージ、
 魔王モト2、メギドラオン、
 全員ダメージ、
 外道シャドウ2、マハジオンガ、
 大天使ミカエル、無効化、
 他はダメージ、
 魔王モト3、メギドラオン、
 ライドウ、ダメージ、
 他は躱した、

 隼人、次に回す、
 ライドウ、モコイブーメラン、
 外道シャドウ2にクリティカル、
 大天使ミカエル、ショックウェーブ、
 魔王モト2の弱点を突いた、
 外道シャドウ1と2、死亡、
 妖精ティターニア、メギドラオン、
 魔王モト2、外道シャドウ3、死亡、
 隼人、死亡遊戯、
 魔王モト1と3にクリティカル、

 以上、終了。
 3696EXP、4260マッカ、
 魔石1個、生玉1個入手。

 龍の眼光あるわけじゃないので、
 通常戦闘と大差無い。

 大天使ミカエルがLV93に。
 三分の魔脈を諦めた。

ミカエル
「汝、その勇猛なる働き、
 我が心に殊更に響くものあり。
 我、汝を称え、
 汝に権能のひとかけを与えんとす。
 受けよ、我が真なる恩恵!」

 サファイアを手に入れた。

☆大天使:ミカエルLV93/HP702/MP372
 能力値:力30/魔31/体24/速25/運18
 相 性:破魔反射、魔法全般無効
 スキル:デスバウンド/勝利の雄叫び/洗脳
     プロミネンス/ショックウェーブ
     絶対零度/ランダマイザ/デクンダ

 東に歩き転移すると東端のエリアへ。
 ここはダメージゾーンと昇降ブロック
 しかない場所だ。
 さっさと昇降ブロックに乗ると、
 431Fの東側エリアに着いた。
 北に東に進むしかないので進むと、
 BのSターミナルへ戻れる
 昇降ブロックの部屋につながる。
 すぐに戻ってセーブした。

 また同様に光の道を進んで落とし穴に落ち、
 ダメージゾーンと落とし穴だらけのフロアへ。

 今度は行き止まりの落とし穴に落ちる。

 418Fのここも短い1本道。
 西に進んですぐ転移する。

 着いた所は同階の南端に位置するエリア。
 ダメージゾーンの中央に宝箱があった。
 宝箱から反魂神珠を1個手に入れた。
 いつでも使えて何度も使え、
 サマリカームと同じ効果を持っている。
 マネカタの語っていたスゴイお宝とは、
 これの事に違いない。
 所持している道反玉と反魂香は
 売り払っていいだろう。

 西に歩き転移すると、
 先ほどと同じ東端のエリアへ。、
 BのSターミナルへ戻ってセーブした。

 このBのSターミナルを起点とした
 お宝ゲットは以上になるので、
 カグツチ塔3の本ターミナルに転移して
 セーブ。

 妖精ティターニアは、このまま探索用の
 スタメンになると思うので、
 ラグで宝石を御霊に交換し、
 (サキミタマ2回、クシミタマ2回)
 邪教の館で御霊合体して強化を図る。

☆妖 精:ティターニアLV82/HP684/MP366
 能力値:力22/魔40/体32/速22/運22
 相 性:破魔・呪殺反射、魔法全般に強い
 スキル:絶対零度/氷結高揚/ラクカジャ
     メギドラオン/汚れ無き威光
     メディアラハン/常世の祈り
     勝利の雄叫び

 カグツチ塔3に戻って431Fへ。
 北西に向かって進む。
 北側に3つある扉は、真ん中以外なら
 右でも左でもOK。
 リフトマを事前に使っていれば問題無い。

 ライドウがLV92に。

☆???:ライドウLV92/HP702/MP351
 能力値:力30/魔25/体25/速26/運17
 相 性:破魔・呪殺・バッドステータス攻撃無効
     物理・魔法全般に強い
 スキル:ブギウギ/ヨシツネ見参/的殺/挑発
     モコイブーメラン/ミシャグジ雷電
     永世ライドウ/ジライヤ乱舞

 昇降ブロックに乗って444Fへ。
 光の道を進んで中継ブロックに着いたら南へ。
 そこから西に光の道を進んで北に向かうと、
 行き着いたブロックで落とし穴に落ちる。

 着いた所は431Fの北端エリア。
 ここも独立されたエリア。
 しかもダークゾーンだ。
 東に進むしかないので進み、扉を開ける。
 すると少し開けたフロアに出た。
 中央にある宝箱からソーマの雫を1個入手した。

 これで宝箱と魔法の箱を開けるのは以上で終了。
 そして丁度良いタイミングで、
 隼人が目標のLV95になった。
 至高の魔弾を覚えた。
 螺旋の蛇を諦めた。

☆修羅王:檀隼人LV95/HP744/MP405
 能力値:力31/魔30/体24/速30/運27
 補正値:力+2/魔10/体+5/速+1/運+2
 合 計:力33/魔40/体29/速31/運29
 禍 魂:カイラース(ノーマル耐性)
 スキル:至高の魔弾/死亡遊戯/気合い
     貫通/会心/精神無効
     タルカジャ/ショックウェーブ

 カグツチ塔に関しては、一旦ここで小休止。

 まずは邪教の館で悪魔合体し、
 アマラ深界第5カルパに赴いて
 残りの用件を済ませてしまおうと思う。

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禁断の果実 第13話

2025-01-25 12:23:40 | 小説「魔術ファミリーシリーズ」ウェストブルッグ1<禁断の果実>

 ケイトの父であるヴェスターは、
 王宮護衛団本部にいた。
 突如として出現した謎の麻薬組織の発見に、
 全力をあげたその結果とも言える資料を
 見せてもらっていたのだ。
 ここの総責任者である、
 セイクレッド・ウォーリアから。
 この人物もまた、酒場のギルと同様に、
 過去に起きた魔族討伐対戦の時の六英雄の一人である。
 その後、王宮騎士団の一番隊隊長を務め、数年前、
 女天才剣士ランにその地位を譲って今の職に就いた。
 ヴェスターとは同期なのか、仲はよい方かもしれない。
「あやしいと思われるのは、その書面にまとめた3箇所だ。」
 東方の地から輸入している、
 和紙と呼ばれる紙に記載した書面を、
 口調と共にヴェスターに投げつけた。
 ぶっきらぼうに感じるが、
 これがウォーリアの普段の口調であり、
 スタイルである。
 いつもの事なのか、
 当のヴェスターは気にもせずに受け取った。
「えーと、南門付近にある廃屋群。
 西部区域にある旧工場跡地。
 北部にある旧貿易倉庫27号の3箇所ですか。
 これらは今もまだ捜査中で?」
「南門の廃屋群のみ調査済みで、
 残る二箇所は現在調査中だ。」
 調査済みという事は、
 廃屋群はハズレだったようである。
「これら3箇所に絞った理由は?」
「それら全てに共通する点は、
 一個人が買い取った巨大な敷地ということだ。
 廃屋群の方は、全て潰して巨大な屋敷が立つらしい。
 これに関してはシロだ。」
「ちなみに、ウォーリア卿が
 一番怪しいと思われるのはどちらで?」
「・・・一個人としての予測にすぎんが、
 錬金術によって調合された特殊な麻薬となると、
 かなり大掛かりな施設が必要となるはずだ。
 錬金術師を妻にもつ君なら分かるだろう。」
「ええ、うちの地下施設は錬金術調合を行う為の、
 巨大な工場ですからねえ。」
 金1グラムを採取するのに、
 銀1トンが必要とされる。
 それが昔の錬金術であった。
 あまりにもコストのかかる不経済な技術であるが、
 時に常識では考えられないものが出来上がる為、
 廃れる事なく現在も多くの地域で受け継がれている。
 ただコストのかかる技術故に、
 一種、金持ちの道楽という見方も強かった。
 その状況を打破したのは、
 今からわずか15年前の話である。
 錬金術調合する為の最適な原料を、
 錬金術で多種に渡って作り、量産する。
 その試みが成功してからは、
 簡単な薬品等はテーブルの上で出来る程にまで、
 技術が急発達したのだ。
 と、なると、狭い敷地でも問題なく
 錬金術が行なえるじゃないかと思うだろうが、
 そこが素人の考えそうなところだ。
 錬金術師たる者は、日夜、
 新たなる原料の開発に余念がないのである。
 成功すれば一獲千金も夢ではない。
 それに、薬品や麻薬等を大量生産するにも、
 巨大な設備は今でも必要不可欠なのだ。
「旧工場跡地は、刀鍛冶を多く持った
 武器製造工場だったところだ。
 だが、敷地としては広く、
 一番怪しく感じられた所だ。」
「何故、そちらを先に調査しなかったんです?」
 ウォーリアは、ヴェスターをみつめた。
「・・・3箇所とも、
 同時に調査団を送り込んだんだよ。
 2日たって調査終了したのは廃屋群のみで、
 他のは3日目となる今でも連絡がないんだ。」
 と、いうことは、
 旧貿易倉庫の調査団からも連絡がない事になる。
 一箇所に的を絞られぬ様、
 張り巡らされた敵の罠にはまってしまったのかもしれない。
 今、こちらが団体で行動を取るのは、
 不利になるだけだ。
 やるなら、少数精鋭しかない。
「フィアナ殿に予言を頼みますか。」
「聞いてないのか?」
「?」
「フィアナ殿は・・・
 あなた方の家族の危機を予言された後、
 倒れこんでしまい、意識不明だそうだ。」
 ヴェスターが、立ち上がるや外へと向かう。
「どこに行く気だ?」
「とりあえず、旧工場跡地に行ってみて、
 何もなければ旧貿易倉庫へも行ってみます。」
「一人で行く気か?」
「夜になる前に、一度こちらに戻りますよ。
 ですから、私の分の夕食の方、
 用意しておいて下さい。」
 お気楽な台詞と、
 ニコリと笑った余裕の表情を見せるや、
 ヴェスターはさっさと行ってしまった。
 ウォーリアは、
 ヴェスターのいつもの冗談な台詞の
 少なかった事が気になるや、
 傍に置いていた自分の愛剣を手にし、
 外へと出向いていった。
 夕食の用意を部下に任せて。

 ロード・ストリートの裏路地は多い。
 いたるところに小さな店が軒を連ね、
 商売に精を出している。
 それは、食料品店であったり、
 衣服店であったり、靴屋であったり・・・
 酒場であったりもする。
 表の看板は錆びれていた。
 本来なら、はっきりと書かれているはずの酒場の名は、
 間近で見てようやく分かる程度である。
 そんな酒場“セイル”に、
 フォルター男爵は威風堂々と中に入った。
 明かりは多くのランプが照らしている。
 船乗りが使用する様な、耐水性のランプだ。
 ちょっとやそっと酒を浴びたところで消えはしまい。
 壁には、巨大な鮫の歯や、碇等の船具類が、
 ワイルドなアートを作り出している。
 店内の空気は、海の臭いがした。
 辺りを見渡すが、目的の人物が見当たらない。
 かわりに、人相の悪そうな者なら、13人程はいる。
 フォルター男爵は、カウンターの左端へと席を取った。
 ここなら、他の奴等に背を向けることなく酒が飲める。
「何になさいますか?」
 ここのマスターが声をかけた。
 奴をあぶり出すには、
 こちらから先制しなければならんか。
「こちらで、これを扱っていると聞いて、
 購入に来たのだが。」
 と、大胆不敵にも麻薬を見せたのだ。
 辺りに気付かれぬ様、
 足下に身を潜めていた黒猫が目をパチクリさせた。
 が、
「これ、何ですか?
 うちではこんなの扱ってませんよ。」
 あっさりと躱したような台詞に、
 フォルターはフムと一呼吸おくや、
「いや、失敬。
 勘違いであったようだ。」
 と、麻薬を懐に戻して、
 こちらもあっさりと諦めてみせた。
 席を立ち、酒場を出ようとする。
 だが、他の客二人が扉をゆっくりと閉めた。
 そして、鍵をかけるのも忘れない。
「帰させてはもらえんのかね。」
「ケッ、酒場に来たら、
 酒を飲むのが礼儀じゃねえのか?」
 聞きなれたような台詞を、
 先程の店のマスターが放った。
「成る程な。
 その男の影へと身を隠したか。」
 フォルターは、
 帯剣していた細みの剣レイピアを抜いた。
 だが構えは見せず、
 ダラリと下に垂らしている。
「てめえら。こいつを殺しな。」
 その声に従順するかのごとく、
 ユラリと13人全員が立ち上がった。
 マスターを入れれば、敵は14人か。
「男爵様よお。
 こいつらの影は既に俺の支配下にある。
 悪いがここで会ったのが不運だと思ってくれや。」
「ビルはどこにいる?」
「かかれ!」
 マスターを除く全員が、一斉におどりかかった。
 皆の手にする武器は、ショート・ソードだ。
「ぬうん!」
 気迫の声と共に、
 レイピアがヒュルンと空を斬って突進した。
 しかし、敵の異常ともいえる迅速な動きに
 フォルターがついていけない。
 そしてついに、
 ザシュッ
「くっ。」
 左腕に傷を負う事となった。
 敵の目線がまともではない。
 支配されたのもあるが、これは・・・。
「こやつら全員、麻薬の中毒者か。」
「さすが、簡単に見抜いたか。
 だがな、俺にも理由は分からねえが、
 今のこいつらの強さは尋常じゃねえぜ。
 俺の支配したのや麻薬とは別の、
 何か得体のしれねえ力が働いてやがる。」
「・・・。」
 フォルターが黙した。
 その得体のしれない力の正体に気付いたらしい。
「何か知っているのか?」
「いいや、知らないな。」
 仮にギランに真実を語っても分かるまい。
 種が木に成長したからだと言って納得するのは、
 ビルぐらいだろう。
 悪しき果実の種を良き事に使おうと
 努力した結果がこれか・・・。
 私は誤っていたのか?
 回避するのが精一杯だ。
 このままでは殺される。
 だが、フォルターも伊達に
 男爵の位を得ているわけではない。
 フォルターは、
 懐から金の球と銀の球を取り出し、
 足下に放った。
 二個放ったはずが、
 地面には三個分の球が転がった音が聞こえた。
 暗くて3個目が見えなかったのか、
 それとも単なる聞き違いか。
 ギランに体を支配された店のマスターが、
 不信な表情を見せた。
 金と銀の球が、ゆっくりと中空に浮くや、
 銀の球が猛スピードで敵に襲い掛かった。
 そのスピードは、音速に近いのではと
 凝視する程の凄まじさで
 敵の体をことごとく貫いていく。
 だが、麻薬の力を得た13人を一度に倒せない。
 2人が、フォルターの傍へ突進してきた。
 しかし、金の球がそれ以上の侵入を許さない。
 フォルターの周りを高速旋回していた金の球が、
 2人の体を容赦なく貫いた。
 フォルターが、金色のマントを
 身にまとっているかのような錯覚に囚われる。
 防御主体の金色の球と、攻撃主体の白銀の球。
 それは、瞬く間に13人を打ちのめしていった。
「妙な技、使いやがるな。」
「フム。
 君等から見れば妖術と見えるかもしれんな。
 私の出身地では珍しくもないのだが。」
 その地方独特の防御術といったところか。
 麻薬に冒され、力が倍増していた敵であった
 にもかかわらず瞬時に倒してみせた
 その強さは並ではない。
 これがフォルター男爵の妖術、
 操球術であった。
 独自の力を有する3個の球を操る技は、
 東方の地ローランに伝わる武術である。
 フォルターは、その地の出身なのだろう。
 フォルターが、ギランの元へと歩み寄る。
「ビルはどこにいる?」
「ちっ、ここはひとまず引くしかねえか。」
 ギランが捨て台詞を吐くや、
 体を乗っ取られていた店のマスターが
 気を失って倒れた。
 ギランが影から抜けた。
 だが店内が暗く、
 影と同化した奴を見つけるのは不可能だ。
 みすみす奴を逃がすのか。
 フォルターがそう思っていた刹那、
「う、動けねぇ!?」
 と呻く、ギランの声がした。
 フォルターがハッとし、
 その声のした方へと近寄る。
 そこには、ケイトの使い魔である黒猫がいた。
 ギランの本体である影の上にしゃがみこみ、
 ニャーオ
 と、愛想良く鳴いてみせた。
 猫の方には、特に苦しがっている様子はない。
 今までのフォルターの死闘に
 御苦労様とでも言いたいのか、
 ゴロゴロと咽を鳴らして甘えてみせている。
「魔の影を制止させる猫か。」
 良く言えばそうだが、
 平たく言うなら踏んづけて
 重しになっているだけである。
 影に対して重しになっている分の驚きが、
 単純な行動を深みのあるものにしていた。
「どうするね?
 素直にビルの居所を教えてくれるなら
 解放してもよいが。」
「だからって、
 俺が話したことを素直に信じるのかぁ?」
「いいや。」
「なら、どうする?
 行動は止められても
 それ以上は出来ねえだろう。」
「いいや、そんなことはないぞ。」
 足下にコロコロと転がってきたのは、
 まだ使用していなかった残りの球だ。
 漆黒の球は黒猫の傍で止まるや、
 ズズズズと何かを吸い込むような音をたてはじめた。
「ば、ばかな・・・!」
 黒猫は微動だにしていない。
 吸い込んでいるのは、ギランの影だ。
 影を吸い込み、黒球内に閉じ込める気か?
「畜生っ!」
 この罵声を最後に、
 ギランの気配は跡形も無くなってしまった。
「さて、奴は何故ここの連中を
 支配したがっていたのか。
 それを調べる必要があるな。」
 フォルターが呟くや、
 黒猫がテクテクと海原の描かれた
 絵画の掛けられた壁へ歩み寄り、
 ニャーオ
 と、また鳴いた。
 ここに来いとでも言いたげな眼差しで、
 フォルターを見つめている。
「どうしたのだ、フレイア。」
 黒猫の名を呼び、
 フォルターはその壁へと近寄ってみる。
 その足下には、
 何かを引き摺ったような跡がうっすらと見えた。
「隠し扉か!」
 壁に力を入れると、
 ゆっくりと音を立てて壁が開いた。
 その隠し扉の向こうには、
 地下へと降りる階段があった。
 階段の両脇の壁には蝋燭が点っている。
 成る程な。ただの酒場ではないわけだ。
「いくぞ、フレイア。」
 フォルターが階段を降りだし、
 黒猫フレイアがその後に続いた。
 階段を下りきったところには、
 鉄製の扉が行く手を塞いでいた。

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禁断の果実 第12話

2025-01-24 21:21:13 | 小説「魔術ファミリーシリーズ」ウェストブルッグ1<禁断の果実>

 唐突な出来事に、その場にいた者たちは
 硬直せざるを得ない状態でいた。
 ジャックと豆の木のように
 一瞬にして成長した禁断の果実の種は、
 一本の巨大な木までになっていたのだ。
 そして、そこからゆっくりとではあるが、
 花を咲かせはじめている。
「これは予想外の展開になったな。
 これでは種を採取するには
 実がつくのを待つしかないようだ。」
「それよりも、
 あたしの玄関の真ん前にこんなの生えちゃ、
 営業妨害もいいとこよ。
 切り倒してやりたいとこだわ。」
 両者の初見の感想は、
 えらく食い違っていた。
 緊急事態であるというのに、
 テリスが思わず吹き出している。
「笑い事ではないぞ、テリス。」
「笑い事じゃないのよ、テリス。」
 それだけは意見の合った二人であった。
 が、このままではらちがあかない。
「とりあえず、どうしますか。」
 テリスが、笑いをこらえながらも切り出した。
 事実、笑い事ではない。
「この果実を誰かに食されたら大事だからな。
 やむを得ん。テリスはこの木を見張るのだ。
 誰にも手出しさせるな。」
「分かりました。
 フォルター様は?」
「私はギランの入っていった酒場へと乗り込む。
 奴からビルの居所を聞き出さねばならん。」
「単身で侵入するのは危険ではないですか。」
「なら、あたしがこの木を監視するわ。
 理由は知らないけど、
 要は誰にも食べさせなきゃいいんでしょ。」
「ケイト殿、その通りお願いするが、
 それはテリスと一緒に、だ。
 一人でこれを守り切るのは不可能に近い。」
 フォルター男爵は、最初からケイトにも
 監視役を依頼するつもりだったらしい。
「・・・どういうこと?」
「守っていれば分かる。
 では頼んだぞ。」
「待ちなさいよ!
 あなた一人で乗り込むのも危険なんでしょ。
 いいもの渡してあげるからちょっと待ってて!」
 そう言うや、ケイトは家の中へと入っていった。
 フォルターは、素直に待つことにしたようだ。
「ケイト殿には世話になりっぱなしになってしまうな。」
「本当に・・・とても頼りになりますわ。」
 その当人は部屋で何をしているのか、
 まだ出てくる様子がない。

 そのうちに薬局の玄関から悪女が顔を出した。
 外の異変に気付いての行動だろう。
「まぁ、フォルター様ではありませんか。
 どうなさったのです?」
 追加の御注文でもあるのかしらと言いたげな声色だ。
「貴女に依頼していた分の原料が木になってしまってな。
 申し訳ないが、実がなるまで待っていてもらいたい。
 とりあえず、残り2つのうちの1つである、
 純白の花フラウスは渡しておく。」
「最後の一品は、この木の果実なのかしら?」
「正確には、その中の種なのだ。」
「実がなったら、
 もぎ取ってもよろしいのでしょうか。」
「うむ。
 ただ、実を食べるような真似はしないでほしい。
 己自身は勿論のこと、
 世界が滅することもありえるのだ。」
 果物を食しただけで、
 えらく大袈裟な話であるが、
 ここは剣と魔法の世界なのだ。
「分かりましたわ。」
 生真面目に応じたアニスであった。
 が、どこまで真面目かは当人しか知らない。
 アニスは、テリスから花を受け取るや、
 一礼すると薬局へと戻っていった。

 ケイトがようやく現れたのは、
 この直後である。
 肩に黒猫を乗せていた。
「待たせてごめんなさい。
 こいつを連れていって。」
 こいつとは、黒猫のことらしい。
「この猫をかね?」
「これでも、あたしの使い魔なの。
 ただの黒猫じゃないわ。
 きっと頼りになるわよ。」
 ニャーオ
 愛想良く猫が鳴いた。
 漆黒の毛並みをした黒猫の目は紫色であった。
「では、有り難く連れていくとしよう。
 この猫の名を教えてもらえるかね。」
「フレイアよ。」
「フレイア、宜しくたのむぞ。」
 ニャーオ
 また愛想良く、一声鳴いてみせていた。

 一人と一匹が去った後、
「ねえ、ケイト。」
「何?」
「今まであの猫ちゃんが
 姿見せなかったのは何故なの?
 普通、使い魔って
 いつも傍にいるものじゃないの?」
「それは昔の魔法使いの話よ。
 魔法も段々と進歩しているから、
 今では必要な時だけ
 召喚魔法で呼び出すようにしてるの。」
「じゃ、今も召喚していたんですね。」
 ケイトは首を横に振った。
「違うわ。
 あいつったら、棚にしまっていた
 あたしの大事な魔封瓶を割ったから、
 お仕置きとして小部屋に閉じ込めていたの。
 昨夜からのお仕置きの時間から解放しただけよ。」
「・・・。」
 事実とは随分と奇なりである。

 人形娘ドールがルクターにイヴの現状を訪ね、
 イヴがギランという名の男に奪われた事を確認するや
 ルクターにも同行を依頼した。
 これで、暗黒騎士、吟遊詩人、尼僧、
 そして魔法使い兼人形使いという、
 実に奇妙な4人パーティが構成されたのである。
 アガンは、とりあえずここの司祭に
 ルクターの治療費を支払った。
 野宿好きのルクターが、
 金品をそれほど多く手にしていないことは
 十分承知していた。
「ありがとう、アガン。」
「案ずるな。あれはお前の金だ。」
「え?」
「お前はフォルター様から仕事料を受け取っても、
 使わずにフォルター様に預けたままだろう。
 フォルター様に頼まれて、
 お前の分の金は私がいくらか預かっている。
 それよりも、ギランが連れ去ったということは、
 ビルのアジトにいると見ていいな。
 奴等を粉砕するには都合のいい展開だ。」
「イヴさんは、私共の客人でもありますので、
 こちらの方には危害を加えないでもらえますか。」
 散々イヴに対して無謀な計らいをした者の台詞とは
 思えなかった。
「私たちの狙いはビルの抹殺と、
 麻薬の完全なる撲滅だ。
 あの女は今回のキーマンであったが、
 最初から対象外だ。」
「どういうことですか?」
 人形娘ドールは、
 テリスがケイトに話した内容を知らない。
 もちろん、酒場のギルがアガンにした話も知らない。
「ふむ、汝になら話しても構わんが、
 この場ではちょっとな・・・。」
 一部始終を聞いていたアリサが、
 ここでポンと手を叩く。
「では、私の喫茶店でお茶にしましょう!」
 緊張という言語を知らないのは、
 キャサリンとルクター以外にもまだいたようであった。

 また喫茶店内の従業員部屋で、
 今度は4人でのお茶会となった。
 紅茶と、アリサの焼いたクッキーが
 テーブルに置かれている。
 アリサが意外に感じたのは、
 アガンがクッキーを食べていることであった。
「甘いものは大丈夫なのでしょうか?」
「ああ、問題ない。」
 暗黒騎士の言動、行動の全てが
 新鮮に感じていたアリサであった。
 この国にはいない、
 珍しいタイプの人間だと思っている。
 その当人が語って聞かせた内容に、
 疑問を感じたのは人形娘だ。
「納得のいかない点が一つあります。」
「何かね?」
「話の内容から、
 イヴさんはビルという方の恋人ということですが、
 イヴさん本人はビルが錬金術師である事を
 知らなかったのでしょうか。
 彼女の依頼してきた種の破壊の内容は、
 ワクチン作成を阻止する為の手段だったのでしょうが、
 それなら身寄りのビルに破壊してもらうのが妥当なはずです。」
 人形娘は、アリサから錬金術師の調合した薬品で
 破壊できる事を聞いている。
 錬金術のエキスパートであるビルが、
 この事を知らなかったとは思えない。
 ましてや、イヴがビルの能力を知らないとも思えない。
「と、いうことは、
 イヴはビルに隠れてでも種を破壊しようとしている。
 何か別の目的があるということですね。」
 ルクターが結論を口にした。
 が、ルクターにしろアガンにしろ、
 その別の目的が何一つ思い付かない。
「ここはドール殿の言う通り、
 イヴには危害を加えない事にしよう。」
「ありがとうございます。」
 人形娘のIQはどこまで高いのか。
 アリサは、感心しながらも
 皆のカップが空なのを確認すると、
 さっさと片付けた。
 そして、自分のロッカーから
 長い柄の武器を取り出す。
 武器は、刃の付いていない竿状のものだ。
 宗派によっては、いかなる敵であっても
 刃の付いた武器を禁じるところもある。
 アリサの信仰する宗教には、
 そういった規制があった。
 だからこういった武器なのだろう。
「見慣れぬ武器だな。」
 剣を扱うアガンは、
 どのような武器にも興味を持つ。
「東方の地から伝わったと言われている多節棍です。
 この棒の中に鎖が組み込まれていて、
 間合いを倍以上に広げることが出来ます。」
 人形娘が席を立った。
「では、アリサさん。
 宜しくお願いします。」
 アリサが、呪文を詠唱した。
 手に白い光が点ると、
 その光を棒の先端へと移す。
 光は、ある一点の方向へ向けて
 放っているように見えた。
「何を唱えたんですか?」
 ルクターが興味深気に聞いてきた。
 呪文に無縁な吟遊詩人の純粋な興味である。
「ロケート・オブジェクトと呼ばれる探査魔法です。
 自分の手にしたことのある物を探し出すのに使う
 神聖魔法ですわ。」
 イヴに自分のブローチをプレゼントしていたのは
 この為だったのだ。
 これでは、ルクターがイヴを隠していたとしても
 難なく発見されるに違いない。
「では、まいりましょう。」
 4人は喫茶店を出、
 光の指し示すままに歩き出していった。
 神の力のなせる術で。
 先頭は、尼僧のアリサであった。

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