無事是吉祥
「無事」とは禅の重んじるところであり、様々な解釈や用法がありますが、意味するところは 人は元々、仏であり、ならば求めるべき仏も、行うべき道も本来はないと云う意味です。
樹木希林さんが茶道の先生を演じ、主演の生徒役の黒木華さんがお茶の稽古を通じて人生について考える映画が『日日是好日』です。
茶室の床の間に掲げられた掛け軸のひとつが「日々是好日」でした。
印象的なシーンは映画の最初の頃、主人公の黒木華さんがまだ茶道を習いはじめた頃、お正月に使う茶器に犬の絵が描かれているのに気づき、「干支の茶碗を使っているなら、次に使うのは12年後か・・・」と気が遠くなるようなそぶりを見せます。
そして映画の終盤、いろいろなことが当然、生きていると起こるのですが、気がつくと、犬の絵柄の茶器を用意している自分がいる。12年、あっという間に経ったのです。
雨の日も、雪の日も、嵐の日も、晴天の日も、様々な日々を積み重ねながら、人は生きている。「無事是好日」の言葉の意味をようやく理解できた気になる、というストーリーでした。
お茶の世界で年末になると必ず、掛かるお軸があります。
それが「無事是吉祥(ぶじ・これ・きっしょう)」。
禅語の解釈に正解はなく、実は自分が感じるままでいいと思う茶人は多いようです。
この掛軸の言葉を見かけると、「今年もいろいろあったし、周りでも本当にいろんな出来事に見舞われたけれど、なにより、無事に年末を迎えられるのはめでたいことであり、有難いことなのだ」と思うのです。
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