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教育専門職の能力開発に向けて(1)

2007年06月03日 | 知のアフォーダンス

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 渡部淳著『教師 学びの演出家』(旬報社、2007)を読んだ。

教師学びの演出家

旬報社

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 授業や教師自身の学びに演劇的技法を応用することを提案するものだが、学びの過程全体を見渡した視点から論じられているという点でも示唆に富む。

 そのなかで「知識の伝授」や「ドリル」「反復学習」などによって「数値目標」の達成をめざす学習指導ではなく、子どもたちが主体的に知的探究を行なう「参加・獲得型学習」について端的に述べている部分がある。

 「獲得型学習では、子どもたちが学習課題・テーマを選び、リサーチを重ね、情報を編集し、発表や表現活動を行ない、それをもとに討論し、論文や作品に仕上げるというようなプロセスをたどる。海外の授業の文脈でいえば、アメリカのプロジェクト学習、イギリスのトピック学習などがこれに相当するだろう。生徒は、経過するそれぞれの段階で、ブレーン・ストーミング、リサーチワーク、プレゼンテーション、ディスカッション/ディベートなど種類の異なるアクティビティに参加し、協同の学びを経験するのだが、この一連の学びは学習者どうしのコミュニケーション行為を基礎として行なわれる。」(pp.23-24)

 このような学びにおける教師の役割は、「探究する場」、「学びあう場」を整え、その活動を演出し、生徒とともに正解のない学びの世界に漕ぎ出すことであるとして、「学びの演出家」(Director)である教師の活動として次のような要素を挙げている。

学習プロセスのデザインを行なうもの(Designer)

活動を促進するもの(Facilitator)

創造的な活動に当たるもの(Creator)

情報を探究するもの(Researcher)

協働の活動を組織・調整するもの(Coordinator)

  いま問われているのは、このような活動を通して子どもを「獲得型」の学びへと導く教師自身が、自らの資質を向上するための学びをどのように行なうかという問題であろう。

 いま「教師であること」の困難の一つは、専門家としての成長を容易に展望できないことにあるのではないだろうか。教師受難の時代。どんなに困難ではあっても、未来世代を育てる教師は主体的に教育の未来を模索する作業が求められる。学習者たちが潜在的に持っている可能性を洞察し、共同の学びの成果としてそれを顕在化する役割を果たす・・・それが「教師=学びの演出家」である。 (表紙より)

 40年以上にわたる教師経験を通して同じような方向性で学びを考え続けてきた者として著者の問題提起に心から共感する。とりわけ、演劇的技法を用いることは、学びの過程で行なわれる一つ一つの活動を思考、感情、身体運動を包み込んだトータルな経験として統合し、学習者の自己変容の可能性を期待させるものとして注目したい。

  さて、学校図書館は、リサーチを行ない、情報を探究する場として、「獲得型」の学びの基盤となる役割を担っている。教師は自ら演出した授業を一つの作品として開花させる、その根っこのところを支えているのが学校図書館なのである。

 私たちは、子どもの主体的な学びと成長を支援する教育環境・メディアセンターとしての学校図書館のあり方を求めて、教師と学校図書館専門職の協働による学びの場を「学校図書館ジャムセッション」として2002年より提供してきた。その第5回目の催しとして、8月18日(土)と19日(日)に「学びを動機づけるもの、学びを促すもの」というテーマで教師と学校図書館担当者の実践知を共有する学びの場を計画している。本書が提起する演劇的技法をどこまで駆使できるか分からないが、教師と学校図書館専門職が体験的に学びあい、何をどのように学ぶかだけでなく、そのような学びが自らの置かれている状況の中でどのような意味を持つかを問いかけながら、これからの実践に活かす道筋を見つけたいと思う。

教師と学校図書館担当者による実践知共有ラボ
テーマ:「学びを動機づけるもの、学びを促すもの」
■子どもたちの学ぶ力をどのように育てるか
■学校図書館は授業や子どもたちの学びにどのように関わるか
■子どもの学びに焦点をあてた“学びのコミュニティ”をどのように作るか

□日 時:2007年 818日(土)10:20-17:0019日(日)10:00-16:30
□会 場:カリタス女子中学高等学校
□対 象:学校図書館を活用した教育活動に関心のある教職員など
□定 員:50
□参加費:3000
□申込締切:731日(火)必着
□主催:「学校図書館ジャムセッション」企画会議

 プログラムや申込方法など詳しくは次のサイトをご覧ください。参加申込の書式、チラシ・パンフレットをダウンロードしていただくこともできます。
http://www.kh.rim.or.jp/~masa-sem/jam/jam5.html

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