終戦記念日の8月15日、NHK総合テレビで放映されたドキュメンタリー「渡辺謙アメリカを行く “9.11テロ”に立ち向かった日系人」を見た。この番組を8月8日付の「シネマトゥデイ」は、以下のように紹介している。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2001年9月11日のテロ発生後、アラブ・イスラム系の人々への警戒心が高まるなか、ミネタ氏は、飛行機に搭乗する際、アラブ・イスラム系の人々への検査のみを徹底しようとする“人種プロファイリング”の禁止を宣言し、多くの日系市民も、アラブ・イスラム系の人たちを守ろうと立ち上がった。彼らを動かしたのは、70年前に始まった太平洋戦争で日系人たちが直面した偏見と差別の体験だった。10年前の9.11アメリカ同時多発テロと70年前の太平洋戦争を結びつけたもの。それは世代を超えて受け継がれた過去の経験を現在の問題としてとらえる感性だったといえるだろう。この番組の取材をした渡辺氏は「大きなエポックとなる事件が起きたときに、わたしたちは何を考えるべきなのか、何を受け止めるべきなのか、そういうことをたくさん学びました」(シネマトゥデイ、2011年8月8日)とコメントを寄せているという。 太平洋戦争下にあって在米日系人が受けた処遇の全貌は、ミネタ氏ら日系アメリカ人の努力によって明らかになり、1988年8月10日、当時のレーガン大統領は「市民の自由法」(日系アメリカ人補償法)に署名し、謝罪と補償がされた。このことを踏まえて、日系アメリカ人がアラブ・イスラエル系の人たちに向けたのと同じまなざしを、私たちはアジアの近隣諸国の人々に向けてみる必要があるだろう。 私たちに求められているのは、歴史的事実の単なる羅列ではなく、問題の構造を見きわめ、それを現在の問題に結びつける感性であり、偏見や差別感情を生み出す心性を看破する感性であろう。それには、一般化された概念によって事象や人を見るのではなく、まず、ひとつひとつ、ひとりひとりと触れることが必要であり、その根底には、人としての尊厳と生存を脅かされている人たちに寄り添う優しさがなくてはならない。 いま、私たちの眼前には、2011年3月11日に端を発する災害と困難をどう受けとめて、何を考えるかという問題が立ちはだかっている。まずは、中村百合子さんとともに計画している下記のプログラムの中で考えてみることにしたい。
2006年に公開されたジョディー・フォスター主演の映画『フライトプラン』で、飛行機の中から忽然(こつぜん)と娘が姿を消し、パニックになったジョディー演じるカイルが、アラブ・イスラム系の男性を犯人だと思い込み、疑いを掛けるシーンがあるのをご存じだろうか? この映画の主人公の思考、つまりアラブ・イスラム系の人々を犯人と決めつける思考は、当時のアメリカ人の思考、そのものだった。「渡辺謙アメリカを行く“9.11テロ”に立ち向かった日系人」では、アメリカ本土で日系人として初めてアメリカ合衆国下院議員に当選し、“9.11テロ”発生時には運輸長官を務めていたノーマン・ミネタ氏を中心に、第2次世界大戦下、敵国の中でも白人ではないという理由で差別され、強制収容所に送られた過去を持つ日系人たちが、“9.11テロ”によって巻き起こったアラブ・イスラム系の人々への差別に立ち向かった姿に迫ったドキュメンタリー番組だ。
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