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日本国憲法は、日米合作によって生み出された一瞬の奇蹟であった。そこには、当時の日米の理想が生きている。どんな問題をはらんでいたとしても、当時の日本人の心に深く入っていくものがあった。世界でも稀有な、この珍品を世界遺産として残そう。というのがこの本の趣旨である。
しかし、「新しい憲法を私たちの手で作り、新しい日本を作り上げましょう。」「憲法九条の理念と現実とのギャップを埋めましょう。」などと、爽やかにきっぱりと言い切られると、私たちは、ついふらふらとついていきたくなる。政治家が国民を引っ張っていくには、そういう分かりやすさと決断が必要なのかもしれない。それは、私たちが常に矛盾に満ちた存在で、理想と現実の間を揺れながら、誰かがすっきりした解決策を示してくれることを望んでいるからなのかもしれない。
本書における太田・中沢両氏の対話は、まず、宮沢賢治の平和思想がはらんでいる矛盾を手がかりに、愛や正義や平和といった価値を絶対的なものとして無批判に信じることの危うさや、言葉の持つ力と危うさを掘り起こすところからはじまる。他者を、また自らを、右だ、左だと分けてしまうことで、いかに大事なことを見落とすことになるか。自分がかかえている矛盾から目をそらし、問いかけることをしなくなれば、私たちの心がいかに貧しくなるか。あいまいさに耐え、自らを疑いながら生きていくことがいかに大切であるか・・・
今、私たちに求められているのは感受性を回復すること。死者と対話し、彼らが語ろうとしていたものを蘇らせることが生命を復活させるという。たしかに、目に見えないものへの豊かな感受性に支えられてこそ言葉は輝きを取り戻す。それは憲法九条についてもいえる。こうして、もしも私たちが、憲法九条を残そうとするなら、それがもたらすであろう負の事態をも引き受ける覚悟が必要である。
そして、まったくジャンルの異なる二人は、それぞれの方法で自らの思考を表現するスキルを磨くことの大切さを確認しあう。
これは思想を語る本ではない。二人が展開してみせてくれている思考法こそ、私たちはこの本から学ぶべきだろう。
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日本国憲法は、日米合作によって生み出された一瞬の奇蹟であった。そこには、当時の日米の理想が生きている。どんな問題をはらんでいたとしても、当時の日本人の心に深く入っていくものがあった。世界でも稀有な、この珍品を世界遺産として残そう。というのがこの本の趣旨である。
しかし、「新しい憲法を私たちの手で作り、新しい日本を作り上げましょう。」「憲法九条の理念と現実とのギャップを埋めましょう。」などと、爽やかにきっぱりと言い切られると、私たちは、ついふらふらとついていきたくなる。政治家が国民を引っ張っていくには、そういう分かりやすさと決断が必要なのかもしれない。それは、私たちが常に矛盾に満ちた存在で、理想と現実の間を揺れながら、誰かがすっきりした解決策を示してくれることを望んでいるからなのかもしれない。
本書における太田・中沢両氏の対話は、まず、宮沢賢治の平和思想がはらんでいる矛盾を手がかりに、愛や正義や平和といった価値を絶対的なものとして無批判に信じることの危うさや、言葉の持つ力と危うさを掘り起こすところからはじまる。他者を、また自らを、右だ、左だと分けてしまうことで、いかに大事なことを見落とすことになるか。自分がかかえている矛盾から目をそらし、問いかけることをしなくなれば、私たちの心がいかに貧しくなるか。あいまいさに耐え、自らを疑いながら生きていくことがいかに大切であるか・・・
今、私たちに求められているのは感受性を回復すること。死者と対話し、彼らが語ろうとしていたものを蘇らせることが生命を復活させるという。たしかに、目に見えないものへの豊かな感受性に支えられてこそ言葉は輝きを取り戻す。それは憲法九条についてもいえる。こうして、もしも私たちが、憲法九条を残そうとするなら、それがもたらすであろう負の事態をも引き受ける覚悟が必要である。
そして、まったくジャンルの異なる二人は、それぞれの方法で自らの思考を表現するスキルを磨くことの大切さを確認しあう。
これは思想を語る本ではない。二人が展開してみせてくれている思考法こそ、私たちはこの本から学ぶべきだろう。
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