1996年5月8日
午後から入校式と適性検査にそれぞれ一時間。普通車の人間も合わせて、10人くらいいる。やはり、若いやつが多い。当たり前か。
一旦、部屋に帰り、あらためて5時50分と6時50分の技能教習を受けにいく(技能は連続2時間受講が基本)。教習所から部屋までは数百メートル、自転車で3分――急げば約2分の距離なので楽だ。技能教習、三段階。審査も含めて全部で10時間。プラス3時間くらいを目標にする。
教習簿自動検索機にメンバーズカードをさしこむだけで、数秒もたたないうちに自分の教習簿がすすっとでてくる。教習時間がくるまでベンチに座り、じいっと教習簿を見ていると、写真の横にある年齢40歳という文字が、やたら気になる。今回、一緒に受講するなかでは、たぶんワシが最年長なのは間違いない。5分前に自動二輪の待合室にいくと、案の定、若い男ばかり。ほとんどが20歳前後。
いよいよ、実習1時限目。一緒に6人が受講する。
バイクを囲んで、各部の名称やはたらきなどを、50歳ぐらいの指導員が説明していく。きびきびしていて、気持ちがいい。どこかの飲み屋ででも知り合いになっていれば、話が合いそうだ。服装はいかにもバイク乗り――赤いキャップに、黒の革ブーツ、動きやすそうなライディングウェア――という恰好。さりげないが、決まっているという感じだ。これだけでも、ワシみたいなバイク初心者には感激もんだ。背丈はワシより2、3センチ低いくらいか。けれど、それほど小柄には見えない。
バイクはワインレッドのCB400フォアー。ぴかぴかに磨き上げてある。エンジンは艶消し黒の塗装、集合マフラーも黒、くわしくはわからないが、一昨年くらいのモデルだろうと見当をつける。なんか、今すぐこれに乗って、町中を走り回りたい衝動にかられる。指導員の話なんか聞くより、このバイクをずうっと見ていたいくらいだ。結構、存在感があるのがいい。低いエンジン音が頭の中に響く。これと同じ色のバイクが表に10台は停車している。なんか、わくわく。
いよいよ初乗り。
ローギアで5メートルほどいって停止。エンジンをいったん切り、また始動して5メートルほど前進。しばらくそのくり返し。1時限目はそれで終了。10分休憩、2時限目。次はS字カーブ。6人のうち4人が普通免許を取得していて、あとの2人も原付免許をもっている。指導員もそのつもりでやっている。アリの行列のように、指導員の運転するバイクに6台のバイクがついていく。最初のS字にはいるとき、前のバイクがいきなり転倒。あせっているのが、傍目にもわかる。エンジンの再始動に戸惑っている。うしろに停車して、その様子をじいっと見ているワシに、先にいけと指導員から指示。ワシもハンドルを切りすぎクラッチ操作をあやまり、エンスト。すぐにエンジン始動。あとは周回をやりながら、セカンドで直進30キロ走行。ブレーキング。拡声器をもった指導員に、脇が開き手首が立っていると注意される。が、その後エンストすることもなく無事に2時限目を終了。正直な感想。こんなに疲れるものなのかよ。