9月6日(11日目)
能代~男鹿半島~八幡平・アスピーテライン~樹海ライン~玉川温泉~田沢湖
朝4時半過ぎには起床。
ちゃちゃっと準備して、5時過ぎにはホテル出発。昨夜も就寝してから、付近を通り雨が過ぎたようだ。
国道7号を八郎潟方面に南下して、県道54号に右折して(ここだけ記憶が曖昧だ。たぶん琴丘町から右折したような気もする)、八郎潟の埋め立て地である大潟村の直線路を走る。ビデオでは10キロ以上の直線路と言っているから、たぶん54号だったと思う。突き当たりが国道101号の丁字路になっていて、そこを右折して男鹿半島に向かっているので、54号から県道42号を丁字路まで走ったのかもしれない。
午前6時。男鹿半島から海が見えてくる。
だが、正確にどこからの眺めだったのか、はっきりとしない。
どういうルートだったのか、何回ビデオを見返してもはっきりしない。地方道から国道101号の丁字路にぶちあたったのが午前5時56分。しかし、その5分後には戸賀湾に面する道を下っている。ありえない。国道101号は地方道の121号の見間違いじゃないかと、何回も静止画像で確認するが、やはり国道101号の標識が写っている。いったい、どうなっているのだ。戸賀湾に下る道は右手に湾が見えるので、県道59号を下っているのだろうか。ただ、それは丁字路から6分後のことだ。
戸賀湾を勘違いしているのだろうか。
だが、約20分後の午前6時18分には入道崎を目指して、どこからか走り出している。そこから、すぐに入道崎方面と八望台に分岐する地点に差しかかっているので、戸賀湾を通過したのは間違いないだろう。右手に海が見えてくるので、県道59号を走ったような気もする。
うーん。ミステリーだ。思い出せない。
(冷静になって考えてみると、能代から国道7号を下ってきて、そのまま道なりに県道42号を走って八郎潟の男鹿八竜線を走り、県道54号に右折、そのままやはり道なりに国道101号を入道崎に向かったような気がしてきた。間口浜を右手に見ながら走り、県道55号に分岐する丁字路を入道崎方面に向かったと思われる。間口浜を戸賀湾と勘違いしているのだ)
まあ、そんなこんなで6時半には入道崎に到着。
入道崎では土産物家の真ん前にある円形の芝生の前にはバイクが一台、ライダーが1人でキャンプしているようだ。車中泊の中年の夫婦もいて、北海道を2ヶ月ほど回ってきたという。これから九州に向かうという話だ。入道埼から1時間ほど走り、〈日本の渚百選 鵜の崎海岸〉を通過。この場所は1996年発行の東北ツーリングマップルにも、翌年のものにも記載されていない。ここで、しばし休憩。宮崎の海に慣れているせいもあるが、まあ、こんなものかという感じだ。
午前8時前、男鹿駅前を通過。
市街地を抜けたところで、国道101号を左折して寒風山に向かう。さらに県道45号を右折。今回、訪れてみたかった寒風山への道を走る。徐々に高度を上げていき、〈板場の台〉という寒風山の北側にある見晴らしのよいところに着いたときには、「気持ちいい!」と思わず、声を上げてしまう。
地名の由来は、〈周囲よりも平たい地形がまな板を思わせるから〉とか、〈狩りに来た領主の一行や寒風山に棲んでいた鬼が食事を作った場所だから〉ともいわれているようだ。
ここからは、〈溶岩じわ〉と呼ばれる溶岩流の表面にできた地形が眼下に180度見渡せる。どっちにしても、気持ちのいい景色だ。とくに昨日、今日と、曇り空の海岸線を走ってきたせいか、余計にそう感じる。
景色いいなあと思って走っていると、寒風山頂上付近に到着。
もっと景色がよくなる。
ドピーカン(懐かしい言葉だ!)というわけではないが、それなりに180度見通しがいいので、〈板場の台〉よりも景色を堪能する。雄大な眺めだ。標高がどれだけ高いかというより、周囲をどれだけ見回せるかでも、こんなにも気持ちがいいのだ。寒風山頂上には〈寒風山回転展望台〉というものもあったが、ちょっと料金が高いのと、これだけ景色を堪能すればもう充分だったので、今回はパスさせてもらう。
寒風山から景色を見ながら、昨夜の残りのオニギリを1個ぱくつく。
寒風山を下りて、県道54号から地方道298号に右折して埋め立て地の八郎潟(大潟村)に入る。午前9時15分には八郎潟の直線路の横断を始めている。さらに県道42号にぶつかったところで左折して、再び298号の道村大川線を八郎潟町に抜ける。道は積雪のせいなのか、それとも今も沈下を続けているのか、補修の跡が多い。車の往来もほとんどなく、直線路を気持ちよく走る。
八郎潟町からは、県道15号を経由して国道285号に出て、上小阿仁村方面に進む。そういえば、これを現時点(2024年)で書いているとき、ふと思い出した。この上小阿仁村は、診療所に勤務する医者があまり長続きしなかった村ではなかったか。レポートを読んだような気がするが、このころからそうだったのだろうか。今では、かなり医者に厳しい村という印象がある。もちろん、このころはなにも知らないから、このあたりはマタギで有名な地方だよなあと、のんびり走っている。
まあ、このときは国道285号を森吉町から比内町に入り、午前11時過ぎには大館市の扇田手前で県道22号に右折している。と両脇にアスパラガスがぼうぼうに伸びきったような、畑一杯に植えられた草らしきものが両脇に増えてくる。思わず、バイクを停めて撮影する。アスパラではない。通りがかった作業服姿のおばちゃんに訊いてみると、比内トンブリだと教えられる。これから、この実を釜で茹でてから蒸して、それから水に晒して、あのつぶつぶにするのだそうだ。
カミさんと弟の大好きなトンブリだ。
そうか。これがトンブリの実が生るホウキ草か。ちょっと感激。そういえば、東京で売っているトンブリの袋に秋田名産とかあったな。このあたりで栽培されていたのか。へえと思いながら、トンブリの実を手に取ったりしてみる。見渡すかぎり、一面にホウキ草の畑が広がっている。奥のほうがホウキ草の段々畑になっているところもある。ここまでホウキ草に覆われていると気持ちいいほどだ。
しばらく走っていると、やはり気持ちよさそうに流れている清流があったので、ここでもバイクを停めて撮影する。比内町の大渡という地区のようで、犀川というらしい。こんなきれいな水が流れているからこそ、あのように大量のホウキ草も栽培できるのだろうなと、ひとり納得したりしている。
さらに県道22号を犀川沿いに走り、大葛温泉方面に向かい、金山黒沢トンネルを抜けて国道341号に出る。
そこからは八幡平目指して、徐々に高度を上げながら走る。しばらく行ったところで、県道39号に右折する。県道39号は西根八幡平線と呼ばれているようだ。さらに先に進むと、アスピーテラインと名前を変える。
午後12時15分には、大沼に到着。
近くにキャンプ場があるようだが、ただいま工事中のとのこと。
今日はアスピーテラインを下って、再び、八幡平樹海ラインを上がってくる予定なので、近くにキャンプするところがあればと思っていたが、しかたない。蒸ノ湯を横目に通り過ぎ、あたりを遠望できる展望台で一休み。展望よし! そのあとアスピーテラインを下り始める。今回の東北ツーリングでは、一番バイクを見かける。オフ車が多い。しかし寒い。40キロ以上で走ると手が冷たくなってきて、かじかんでくるほどだ。
アスピーテライン、ここも気持ちいい。
九州の景色とはまったく違う。下まで下りきって、柏台からは樹海ラインを目指して地方道の212号を走る。
午後1時48分には樹海ラインの入口に到着。
松川温泉というのが近くにあるようで、露天風呂は「混浴 白濁の湯」とある。混浴か。う~ん。入浴してみたいが、玉川温泉に浸かる予定なので、今回はパス。松川温泉の湯煙だけ眺めながら、樹海ラインを急ぐ。ここでも、数台のオフ車と擦れ違う。アスピーテラインといい、この樹海ラインといい、ライダーには人気のコースのようだ。再び、八幡平の見返垰の横まで上りきり、先ほど走ってきた西根八幡平線を国道341号まで引き返す。途中、ざっと雨に降られる。西根八幡平線が341号にぶつかって丁字路になっているところを左折する。
午後3時前には玉川温泉着。駐車場は車で満車状態だ。
玉川温泉には無料の露天風呂があるそうなので、そこに浸かることにする。駐車場でちょっと話をしたおじさんによると、脱衣所とかはないという話だ。まあ、行けばなんとかなるだろう。駐車場でテントを張っている人たちも何組かいる。たぶん車中泊の人たちもいるのだろう。さすがに癌に効能のある温泉だけある。
駐車場からおっちらおっちらと下り、湯治場らしき場所に向かって歩いて行く。
歩いている人は、みんな丸めたゴザを持っている。休憩でもしながら、ゆっくりと湯に浸かるのだろうか──。歩道の先には、もうもうと湯煙が上がっている場所がある。やがて歩道と並行する小川が現れる。この水面からも、もうもうと湯煙が上がっていて、付近には硫黄の匂いも漂っている。ただの小川ではないようだ。さらに奥のほうに、もっと激しく湯煙が上がっている箇所が見えてくる。そこまで歩いていくと、源泉の吹き出している場所のようだ。川の中から、がばがばと源泉が激しく何カ所も湧き出しているさまは、恐ろしいほどだ。
思わず見入ってしまう。
「大噴(おおぶけ)」というらしい。温度98度。PH1・2の日本一の強酸性温泉水で、毎分8400リットルも湧出していると看板にある。
さらに歩道を奥に進むと、緑の屋根の小屋がいくつも建っている場所にでる。
ここが温泉場のようだ。だが、なんとなく様子が変だ。浸かるための小屋ではなさそうだ。どうやら、先ほどゴザは休憩のためではなく、小屋の中に敷いて、その上で横になるためのもののようだ。岩盤浴みたいな感じだ。なるほど。知っている人はそうやっているようだ。一瞬、自分もゴザを借りてこようかと考えるが、また温泉施設の入口まで引き返して、しかも、そこで貸しゴザはなかったらガッカリなので、今回はゴザ使用はパスだ。入浴できるものなら入浴したい。
近くに露天風呂らしきものがあるが、足湯みたいに浸かっている人が数人いるだけだ。
うーん。
さすがに、ここですっぽんぽんになって、入浴しようという気にはなれない。近くの人に訊いてみると、ここの温泉は入浴するんじゃなくて、蒸すのが主流だと教えられる。小屋の中をちらりと覗いてみると、なんとみんな靴を脱いで、毛布みたいなものを被って横になっている。そうなんだ──。入浴できるとばかり思っていたので、ちょっとがっかり。しかし、温泉入口の建物は入浴施設ではなかったか。訊いてみると、やはり大浴場があるとのこと。
この近くでは、無料で入浴できるのは足湯のところしかないらしい。
足湯をしていたところに戻ってみると、上着を着たまま腰に布を巻いた女性が、立ったまま湯舟の中をうろうろしている。さすがに、ここで入浴するには度胸がいる。どうしたものか。しばし考えて、温泉入口に戻る。
料金を払って、大浴場に入浴することにする。
いやあ。源泉100パーセントの湯は、さすがにスゴイ。こんな湯は初めてだ。じいっと湯に沈んでいくと、股間の微妙なところががぴりぴりする。慣れたころに、思わず顔を洗ってしまい、あっと顔を反らしてしまう。強酸性湯とはこんなものか。少なくとも鹿児島、宮崎にはない。50パーセントの湯や、1人サウナも堪能する。
午後4時15分過ぎ。さっぱりしたところで、玉川温泉をあとにする。
今夜のキャンプ予定地は、田沢湖だ。どこにキャンプ場があるか、はっきりとはわからないが、とにかく走ってみることにする。国道341号を突っ走り、午後5時過ぎには田沢湖湖畔に到着。まあ、キャンプ場にこだわらず、どこか人気のないところにテントを張るつもりでいる。
どこかよさそうなところはないかと、湖畔を反時計回りに走る。
5時半過ぎ。観光施設のだだっぴろい駐車場にバイクを停める。ここなら人気がなくなればテントは張れそうだ。
しかし、あたりはまだ明るい。
もう少し湖畔を走ってみることにする。暗くなってから、またここに戻ってくるつもりだ。店の人に許可を得てから、テントを張ることにしよう。そう思いながら、さらに反時計回りに湖畔をゆっくり流す。
と、ちょっとした施設があり、そちらに右折する。だが、すでに閉園時間を過ぎていて門ががっしりと閉まっている。やや坂道になっているところで右回りのUターンを試みて、見事に転けてしまう。幸いにもケガはなく、バイクにも目立った損傷はない。下り坂のUターンは思っていたほどには簡単ではない。
今回の東北ツーリングで2回目の転倒だ。だが、こんなものかと、それほどの落ち込みはない。ちょっとガソリンらしきものが漏れて、リアブレーキペダルや右レバーに曲がりはない。
気を取り直して、さらに湖畔をほぼ一周したところで、キャンプ場の看板が現れる。〈町営田沢湖キャンプ場〉というところだ。バイクも数台停まっている。観光施設の駐車場よりは、こっちだろう。しかも無料のようだ。迷わずにキャンプサイトにバイクを進める。
神戸ナンバーの750CCのライダーとちょっと話をしたりする。彼は北海道からの帰路のようだ。数日ぶりに、テントを張る。
午後11時くらいから、しとしとと雨が降り始める。
宿泊したホテルニューグリーン。今もやってんのかな。
大潟村。たぶん県道42号。
やっぱり今日も雲が多い。
どこをどう走ったのか、この丁字路を右折すると、国道101号の標識が現れた。たぶん、手前の道も101号で、左から来ている道は地方道の304号で、箱井の丁字路ではないかと見当をつけている。
午前6時半前には入道崎に到着。
渚100選 鵜の崎海岸。
寒風山より男鹿市を望む。
ホウキ草の畑。道の両脇にさわさわっと広大に広がっていた。
トンブリの元。
八幡平からの眺め。アスピーテラインから。
玉川温泉の駐車場。車でびっしりだ。
キャンプしている人たちも何組かいた。
小川の湯煙。
川の中ほどからがばがばと湯が湧いている。
迫力。
脱衣所もなく、ここで入るのはさすがに度胸がいる。
まわりはふつうに人が歩いていた。