【自治会役員として地域のお祭り準備に参加して】
お祭りは毎年この時期に開かれる。それが今年のお祭りは、私にとってまた違っ
た意味を持つものになった。
■はじめは気が重かった「あ一あ、準備だなんて、しんどいよ」
小学校にやぐらを組んでお祭りの準備をする役にあたった。朝8時にぞうきんを
持って集合。
炎天下で熱中症にかからないようにしなくては。帽子を二つもかぶり、ひんやり
タオルを首にまいて、スポーツドリンクを腰にぶら下げ準備万端。
私の役割は「やぐら立てと飾り付け作業」と書いてある。「えらいカのいるとこ
ろやな、このご老体になにをせよとおおせなんや」と、つぶやきながら小学校の校
庭に自転車でかけつけた。もうすでに30名ほどの老若男女が集まっている。
見るとやぐらは運動場のまん中に、すでに組まれて形ができあがっていた。女性
軍の半数はどうやらその柱に赤白の布を巻き付けていくらしい。あとの半数は提灯
つけ。私はこちらのほうを手伝うことになった。
■提灯をつるす電線を延ばしていく
グルグル巻きにまとめられた電線がどさっとおかれた。みるとソケットが等間隔
につけてある。どうやらここに電球を取り付けていくようだ。
「は一い、これを運動場いっぱいにノバしてくださーい」と、リーダーさんのか
け声から作業はスタートした。「意外に重いわ、この線。ちょっと持ちあがらない
よ」「いっしょにもとうか」、「あ、お願い、助かるわ。よ一しいくわよ。あの藤
棚の下までノバすんですって」 ヨイショヨイショ…
「ごくろさんやな、重かったやろ」と、藤棚の下にいたおじさんが笑顔で電線の
はしを受け取ってくれた。トンカチトンカチとおじさんの打ち込む杭の音が心地よ
くひびいている。やぐらからのびた電線は、運動場のはしにある藤棚の下にこう
してしっかりと杭に打ち付けられた。
■提灯ってなかに電球が入ってるのね
電球を電線についている一つ一つのソケットにはめていく。作業は簡単だけど、
けっこう数があるので時間がかかる。
汗をかきながら「この炎天下、続けて作業してるとやぱいぞ。ちょっと日陰で休
もうか」と、つぶやきながら現場を離れて校舎のかげに避難した。するとうちの地
区会長さんも休んでいて、思わず顔をみあわせてにっこり。「うわーきれいねー!」
ふと見ると地べたに赤い花が運動場いっぱいに咲いているような、そんな光景が
目の前に広がっていた。
「60wの電球は使わないよ。40wだけねー!」と、リーダーさんの声。
私は「そっか、最近の節電事情がこんなところにも影響してるのか」と、へんなと
ころに感心してしまった。電球をネジリながらソケットにはめていき、そこへ赤白
の提灯をかぶせ針金でしっかり留めていく。
今日はじめて会った小学校区内の人たちだけど、こうして助け合って作業してい
ると、いつの間にか仲良しになっていた。
■提灯つけが終わって、ウワーツと歓声が
提灯がぜんぶつけられて、「そーれ、いくぞー」という男性軍のかけ声とともに、
赤い花はいっせいに引き上げられていった。
やぐらを中心に八方に持ち上げられた赤白の提灯。「ウワーツ、きれいなー!」
とあちこちから歓声があがっている。
盆踊りや祭りでよく見られる光景だが、自分たちで準備したやぐらと提灯は又格別
の感動があるものだ。
ここへ引っ越してきて10年になるけど、一度もこんな地域の行事に参加して
こなかったなあ。今夜の盆踊りはみんな浴衣きて楽しいひとときを過ごしてくれる
かな。今まで「仕事は楽しい、地域行事はめんどうなもの」と、思い込んでいた。
「食わずぎらい」だったのかな、私は。
■自治会役員になってよかったな
「はーい、みんな暑い中ご苦労様です。冷たい飲み物ありますよ。一本づつおと
りくださーい」と自治会長さんの声がひびきます。氷がいっぱい入れられた大きな
バケツのなかには、ペットボトルのお茶がプカプカ浮いています。ゴクンゴクン飲
むと、そのお茶のおいしかったこと!。
氷のかけらを二つもらってハンカチにくるんで帽子の中に押し込んでみた。ひん
やりとした頭に心地よさを感じながら、後半の作業についた。
空をみあげながらしみじみと今年は自治会役員になってよかったなー。10年間
仕事が忙しいことを理由に参加してこなかったお祭りに、今年は準備委員として参
加した。