最近は、検索画面に「ジャージー」と打ち込むと「ジャージー牛乳」「ジャージー牛」を抜いて「ジャージー・ボーイズ」がトップにヒットするようになりました(…)ブランド・ネームが知れわたるって、凄いことですよ、なんか感無量だ。
私が初めてブロードウェイで「ジャージー・ボーイズ」を観たのは、オープンして1年経った頃でした。(本当は、オープン直後にもブロードウェイにいたのに…そして、何度も劇場の前を通ってあの「4人の後ろ姿アートワーク」を目にしていたのに…結局は、新作の中でも、ストリーを映画で知っていた「カラー・パープル」を観たのでした。「カラー・パープル」は、とっくに終わってしまっていて、人々の記憶からも消えつつあります)
1年後でもチケットはなかなかとれず、やっと取れたのは見切れ席で、ちょっと気分は下がり気味。それよりも、観客の中で「非白人」はおそらく私だけで、まずびっくり!多様な人たちが集まっているニューヨークで、これだけ圧倒的に白人が多い集団は初めて目にしたと言っていいでしょう。それも、殆どが60代以上(笑)
そして、ショーが始まれば、ニュー・ジャージーの地名が出てくるたびに大盛り上がり…、もちろん、私はついていけない…なんか「完全アウェイ」な雰囲気(?)
「これは、(ニュー・ジャージーなど)アメリカ東部の人たちの、アメリカ東部の人たちによる、アメリカ東部の人たちのためのミュージカルなんだろう。日本からポッとやってきた私が観るような作品じゃないんだ」というのが最初の印象でした。
遠い昔の話のようですが…あれから今日に至るまでのこの作品との付き合いについては、こちらで長年にわたって書いているとおりです。
さて、今回のイーストウッド監督による映画ですが…さまざまな感想が出てはいますが、アメリカで観たときに、やや希望を持ちながら予想したとおり、日本でのほうが高評価ですね。もともと、ストリーも音楽も日本人好みだと思うし、「この有名な歌を歌ったのがこの人たちだったの?知らなかったよ!」という…なんというか、新しくて、珍しくて…いい感じで好奇心を刺激されることが好印象に結びついている気がします。もはや「国民的ミュージカル」になってしまっているアメリカでの反応とは違ったものが出て当然なのではないでしょうか。
この辺の「日米の反応の違い」について思うことは改めに記事にします。
とにかく、私は、この映画はイーストウッド監督が「ベストな方法をとった」映画だと思っています。「ジャージー・ボーイズ」は、実は映画化するのが非常に難しい作品であろうと、ずっと思っていました。舞台のライブ感を強調すれば、ミュージック・ビデオと変わらないものになって、映画としてまったく深みのないものになる可能性が高い。(これはこれで批評家に殺される)ドラマとしての面白さを追求すれば、ミュージカル色が消えて、普通の伝記映画になってしまう。まぁ、こっちの選択をした方が失敗はないだろうけれど(で、実際にイーストウッドはそうした)でも、そうなれば数ある伝記映画の名作と肩を並べられるようなものになるのか?(ならなかったら、また批評家に殺される)(…劇中のトミーの台詞をまねているのに気づいてくれました?
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で…結局、「ミュージカル要素を消す」という選択をしました。舞台では、登場人物の心情を吐露する(あるいは象徴する)手段として歌われるMy Eyes Adored YouやFallen Angel, Stay, Bye Bye Babyなどは、BGMとして使われることはあっても、劇中では歌われません。もちろん、フランキーがSilhouetteを歌いながら登場することもありません。
そこは残念ではあるのですが…それでも、結果としては「正しい選択」だったと思います。夢、格闘、絶望、そしてそれぞれが魂の平穏にたどりつくまでの道筋に焦点を絞り、淡々と、静かに、観る者の心を揺さぶり続けながら描き切っていますし、「ジャージー・ボーイズ」のドラマとしての面白さを感動的に伝えてくれる映画に仕上がっています。「彼らの人間ドラマに感動した」という感想は何よりも嬉しいし、また、「台詞が面白い」という声が多いのも非常に嬉しいです。あの脚本は絶品なのです。(映画の脚本は。80パーセントぐらいは舞台と同じです)
まぁ、「イーストウッド監督」の名前は日本でも普通に知られていますが、一部音楽ファン以外にはあまり知られていなかった「フランキー・ヴァリ&フォーシーズンズ」そして、一部のミュージカルファン以外には知られていなかった「ジャージー・ボーイズ」これらが、これから日本で浸透していくのを見届けることができるなんて…これ以上の興奮はないでしょう。
8年前、ブロードウェイで「完全アウェイ」だと感じた作品でした(笑)
(続く)