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And This Is Not Elf Land

TO DIE OF LOVE / MOURIR D'AIMER


ここ数週間、名女優さんたちの訃報が続きました。なかなかここで取り上げられませんでしたが…

まず、2月28日に79年の生涯をとじたフランスのアニー・ジラルド

この人の映画は日本でも数多く公開されていますが、私にとって思い出深いのは、教師と男子高校生の愛を描いた『愛のために死す』ですね。

これは、60年代後半にフランスで実際に起きた「事件」を映画にしたものでした。30代の女性教師と17歳の男子高校生の恋愛というのは、日本でも「ある種の」関心を呼んで、邦画でも、明らかにこの事件から材をとったと思われる映画が製作されました。クラスメートが、年齢詐称して観に行ったのを覚えてますよ(笑)濃厚なシーンがたくさんあった…というのが、彼女の弁。

で、この「本家の」映画は、その翌年ぐらいに日本で公開されているはずです。ただ、この映画…実際に観てみると、教師のダニエルと高校生のジェラールが恋に落ちるところまでは、当時の私としては拍子抜けするくらいに(?)サラリと描かれていたと思います。

ときは68年、5月革命の真っただ中のフランスでした。高校生も巻き込んだ学生運動が全土を吹き荒れていました。教師のダニエルは離婚して二人の子供を育てながら、高校の文学教師をしていました。自分の理想を説き、自由で生き生きと授業をする彼女は、学生にも人気がありました。授業が終わっても、彼女は生徒たちと車座になって、熱く語り合いました。

そんな彼女…今風に言うと、いわゆるフェミニストの走りのような存在だったのでしょうね。実在のガブリエル・ラッシュさんも、当時の写真を見ると、ショートカットの似合う魅力的な女性でしたが、このアニー・ジラルドのショートカットもこれまた素敵でした。日本で言うと、奈良岡朋子さんと共通したイメージがあるかも。当時の私は「ショートカットの似合う女性」に憧れていたのですよ(笑)

映画の話に戻りますが…そんな、独特の時代の空気の中で、二人の愛が芽生え、障害があればそれだけに燃え上がり、周囲の友人たちもそれを支えようとするのですね。ジェラールの両親は、ダニエルは息子をそそのかした悪い女だと、彼女を訴えます。その両者のバトルもリアルに描かれていたと思います。結局、彼女は逮捕され、拘留されます。理想に燃えていた彼女も、娼婦や薬物中毒者と同じところに入れられてしまうのでした。そんな環境でも、なんとか他者の力になりたいと、一人の収容者の力になろうとするのですが、それも失敗に終わり…彼女は絶望から這い上がることができなくなります。そして、やがて…

当時、フランスという国は、未成年の健全育成のために、両親には大きな権限を与えているというような話を聞いたことがあります。たしかに、ジェラールの両親の「闘い」は、それはそれで理解できないことはありません。また、一方では、「恋愛」という非常に個人的なことに国家権力が介入し、やがては一方を死に追いやってしまったという事実は、多くのフランス人に衝撃を与えたともいわれます。

この映画、実はビデオにもDVDにもなっていなくて…私は、実際に映画館で2度見たのと、その後何度かTV放映されたものの記憶から書いていまして…内容の細部は正確ではないかもしれません。

ただ、60年代後半という時代の、独特の「空気」のなかで、精神の自由を重んじ、最後の最後まで「人に影響を与えることのできる人間」であろうとして挫折した一人の女性教師を思うとき、それはあまりに危うくて痛ましい…。まさに、太い枝がボキッと折れるような最期だったように思います。また、映画でも二人の可愛らしい子どもたちが登場しましたが、子どもたちは早い段階でダニエルの両親に預けられてしまっていたように記憶しています。母として、立派に子どもを成人させるという仕事だって、やりがいのあることだったはずだと思うのですが…



私の中では、これからも、アニー・ジラルドという女優さんは、この映画と(そして、基になった実際の事件と)強く結び付けられて記憶されるでしょう。

20世紀は遠くになりにけり…です。
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