
先に取り上げたDO THE RIGHT THINGとともに、とても好きな映画のひとつ。
今、見直してみると、最近観た映画の中ではCRASHに近いテーマだと思う。
人間同士のありのままのぶつかり合いの中で、ひとり一人が「無意味に」囚われているもの、それぞれの意識の底にある差別意識を一つひとつあぶりだす。
「映画」というエンターテインメントの範疇で、こういうことができるというのは、やはり凄いことだと感嘆せざるを得ない。日頃から、人間をめぐる様々な考えが熟成されていないとこういう作品はできないんだろう。私的には、普段はアメリカがそんなにいい国だとは思わないのだけれど、こういう作品を突きつけられたら…やっぱ「底力」だなぁと思う。
トム・ハンクスが‘93年度アカデミー賞の主演男優賞を獲得している。
トム・ハンクス演じる敏腕弁護士アンディ・ベケットはAIDS感染を理由に法律事務所から解雇されてしまう。それが不当解雇に当たるとして、デンゼル・ワシントン演じるジョー・ミラー弁護士の力を借りて、命が尽きるまで闘うというストリー。
舞台はアメリカ合衆国建国の地、フィラデルフィア。PHILADELPHIAはギリシア語で「友愛の地」という意味がある。ちなみに、漢字では「費府」と書くらしい。漢字検定の過去問にあった…(こんなの、覚えて何かの役に立つのだろうか…)関係ない話になりました、、
とにかく、法廷シーンの力強さと、ジョーが自身の偏見と戦いながらもアンディと心を通わせていく過程が印象に残る。
ジョーは、自身が黒人(マイノリティー)であるという「微妙な」立場をよく理解しており、人心を掴む能力の高さとスタンド・プレーの上手さも手伝って、かなりの人気弁護士だった。
ある日、顔見知りの弁護士でもあったアンディから弁護の依頼を受ける。自分に相応しい仕事ではないと一旦は拒否したのだったが、後日図書館で、自力で訴訟を起こそうとしていたアンディが資料を調べている姿を見かけるのだった。図書館員は、彼の調べている文献がAIDS訴訟関連のものであることや、彼自身の体調が悪そうなことにも気づいており、それとなく個室への移動を促す。
それを見過ごすことができないジョーは上手く「助け舟」を出し、アンディを個室へ「隔離」することを阻止したのだった。そして二人は一緒に様々な資料に目を通しながら、次第に共感しあうのだった。
二人が手に取っていた資料から:
"This is the essence of discrimination: formulating opinions about others not based on their individual merits but, rather, on their membership in a group with assumed characteristics...
「これが差別の本質なのである。他人を個人に基づくものではなく、仮定された性格を持つ集団の一員としてみなしたうえで見解を構築してしまうこと…」
これを読むデンゼル・ワシントンのダークスキンの精悍な顔とトム・ハンクスの青白くやつれた顔(この映画のために10キロ以上体重を落とした)が下方から交互に映し出される。
※ ※ ※ ※
数ヵ月後、アンディの訴訟を担当するジョーの姿があった。
もともと人気弁護士であった彼だったが、この訴訟を担当してからというもの、周囲から「君もゲイなのでは?」などと思い込みを抱かれ、大混乱する。
彼は法廷でこう言う。
ジョー「裁判長!この法廷では皆が性的嗜好とか性的志向とか、まぁ、何と言おうが、そういうことばかり考えているんです!私を見ながらも、いろいろ疑ってるんです…もっとオープンにしたらいいじゃありませんか?この訴訟の本当に意味するところ。つまり、一般人の同性愛に対する憎悪であり、嫌悪であり、恐怖なんですよ!」
アンディ「いいね、その調子。」
裁判長「ミラー弁護士、法廷においては、どのような人種であろうが、どのような宗教・信条を持つ者であろうが関係ないのです。勿論、性的志向も。」
ジョー「しかし裁判長、私たちが現実に住んでいるところは法廷じゃないんです。」
裁判長(苦渋の表情)「たしかに、そのとおりです。」
※ ※ ※ ※
アンディの部下であった黒人の女性秘書バ-トンも証言に立つ。
ジョー「バートンさん、あなたは黒人ですね。
バートン「それが何か?」
ジョー「事務所で差別を受けていると感じたことはありますか?」
バートン「あります。一度、所長秘書のリディアが、所長が私のイヤリングを好ましくないと思っているといいました。」(彼女は大きなリングのイヤリングをしている。)
ジョー「イヤリング?」
バートン「秘書が言うには、このイヤリングがあまりにエスニックだと。所長はもっと小さくて、派手じゃなくて「アメリカ的な」ものを付けることを望んでいると。」
ジョー「で、あなたはどう言いましたか?」
バートン「私は言いました。私のイヤリングはアメリカ的ですよ。アフリカン・アメリカンですよ…と。」
ジョー「ありがとうございます。以上。」
ベリンダ(事務所側の弁護人)「バートンさん、あなたは今も同じ事務所で働いていますね。」
バートン「はい。」
ベリンダ「最近、昇進しましたか?」
バートン「はい。」
ベリンダ「差別をするような事務所でどうして昇進できるんでしょうか?そのような被差別意識は当人の思い込みである場合が多いのです。」
バートン(困惑して)「弁護人さん、あなたは差別ということを軽く考えすぎていらっしゃると思います。実際は、そんな簡単なものではありません。」
ベリンダ(皮肉笑いを浮かべて)「それでは、これからは、もっと難しく考えることにします。」
絶望的なやりとりが繰り返される法廷
to be continued
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