ライブ配信で観ました♪
世界中の演劇がコロナ禍の影響を受けている今、日本のジャージー・ボーイズはコンサート形式で上演されました。最初のいくつかの公演はキャンセルされましたが、無事に千秋楽を迎えることに。
このような困難な状況にあっても、ジャージー・ボーイズで歌われている楽曲の素晴らしさや彼らの人間ドラマを伝え続けてくださったことに感謝。
ところで、数年前の朝日新聞に興味深い記事が載りました。(その記事は手元にないので、記憶のまま書いています)「スウェーデンでアバの再評価が進む」という記事だったと思います。アバと言えばマンマ・ミーア!という、これまた大ヒットミュージカルのもとになったグループです。70年代後半を中心に、世界中で大ヒット曲を連発したグループ。そのレコードセールスも記録に残るものとなっています。
それが「えっ、再評価…??」…と思って読んでみると…アバがヒット曲を連発していた時代はちょうど、スウェーデンでは、人々の意識が大きく変わっていった時期で、政治的なメッセージを含んだシンガーソングライターの曲が大きく注目されていたそうなんですね。明るいラブソングが多かったアバは、曲はヒットしていても、アーティストとしての評価は低く、アバを聴いているってだけで「問題意識を持たない気楽な人」というレッテルを張られそうで…だからアバのファンはアルバムを隣の町のレコード店まで買いに行ったり、いわゆるウケの良いアーティストのアルバムと抱き合わせで買ったりしていたんだそうです。リアルタイムではそうだったんですね~現在では、みなさん、スウェーデンの誇りだと感じているとのことでした。
で…これ、「どっかで聞いた話だわ!」と思ったんですよ。
フランキー・ヴァリ&ザ・フォーシーズンズについても似たようなことが言えないでしょうか?彼らの楽曲が今日本でも大注目で、あたかも彼らがビートルズやビーチ・ボーイズなどと同列にいるように考える人が多いと思いますが(それはそれでOKだと思います)昔から今のような評価を得ていたわけではない。(ジャージー・ボーイズの成功が大きいですね)
作詞・作曲・編曲・演奏…それぞれの分野の「職人たち」が技術を駆使して最良の曲を生み出すアーティストよりも、唯一無二のメッセージを届けるアーティストのほうが評価されるという…こういうトレンドは定期的に起きるんですよね。その流れにぶち当たってしまったアーティストというのも一定数存在すると思います。ジャージー・ボーイズは、そのあたりを意識しながら観ると、これまた面白い話なんですけどね…日本版はちょっと別物になってしまっているんで…ま、いいや。
でも、既存のアーティストの曲を使ったミュージカルで成功しているのがマンマ・ミーア!とジャージー・ボーイズ。どちらも、リアルタイムでは正当に評価されなかったアーティストのミュージカルです。面白いもんだな…と思います。
さて、日本版のコンサートバージョンに話を戻しましょう。
新しいメンバーも交えてのライブではありましたが、もう再再演になるんですね…俳優さんたちの息も合っていて、久しぶりに楽しませていただきました。
メインのキャストはもとより…山野さん、大音さん、綿引さんなどは、私が普段からツイッターなどでその動向を拝見している俳優さんたちなのですが、楽曲の中では、それぞれがどのパートを担当しておられるのか、ここが分かったのは面白かったですね。
いや、ホントにライブ配信は楽しい!家族と夢中になって観ていて、事前に準備していたピザが完全に冷めましたからね(笑)「ピザも冷める面白さ」でしたよ!
私がジャージー・ボーイズで好きなのは秋のパートです。ここはニックがグループが直面していた厳しい現実を露にするのですが、その絶望的な話とは裏腹に、歌われる楽曲がキラ星のような王道のポップスばかり。(バイバイ・ベイビー、ステイ、レッツ・ハング・オンなど)グループがどんな状態にあっても、バンドとしての曲作りはしっかりと行われていたことがこういう形で表されているんですね。彼らにとって、バンドは人生そのもの、いや…人生よりも大きなものだったのかも知れない。ここのパートは、コンサートという形式の中で、いっそうの輝きを見せていたと思います。胸が躍りました。
今回はコンサートバージョンということで、多少の台詞は残していましたが、舞台映像などでストリーを補完していました。しかし、ジャージー・ボーイズというものを初めて鑑賞する人にはわかりにくかったかもしれません。(私はあれでよかったと思いますが)
その中で感じたことをいくつか…
クライマックスの「君の瞳に恋してる」の中でフランキーがホーンセクションを誇らしげに紹介するポーズをとるのが良かったですね。これ、本編ではやりませんよね?(初演・再演、一回ずつしか観ていないのですが)とにかく、日本版は、ごちゃごちゃした演出に終始していて(はいはい)名曲が生まれる奇跡とその感動が味わいにくくなってしまっている。今回は、中川さんの、ホーンセクションを紹介しながら見せるこぼれるような笑顔に、胸が熱くなりました。
ただ、今回はコンサートバージョンなので、コンサートの中のメンバー紹介のような形で中川さんが紹介されたのかもしれませんが、これは本編でも必須だと思います。
ボブから、なんだかよく分からない「契約」の話を持ち掛けられ、「それが成功したら、ホーンを入れられるかな?」「ホーンセクション丸ごと入れられるさ!」…それが結実するのが「君の瞳に恋してる」のシーン。
ここは長年の夢がかなったフランキーが、誇らしげにホーンセクションを「見せびらかす」シーンなんです。(演出家がミラーボールを見せびらかすシーンではありません。)で、それを見ている観客が「よかったね!フランキー!!」と喝さいを浴びせるシーンでもあります。本当の「観客参加」とはこういうものではないでしょうか?(本来ならば、ミラーボールもペンライトも不要なはず)
おっと、このくらいにしとこう…
とにかく、あの場面での中川さんの笑顔は本当に素敵でした!
あとは、やはりフランキーが、ニックが既に故人となっている事実を観客に告げるシーン。「イブの日に逝くなんて、カトリックの流儀なのか」、ここの部分は初演と再演では割愛されてた気がするんですが…もっとも、ここは日本の人には伝わりにくいだろうし、無くてもいいかな?とは思っていたんですが(アメリカでは、ここで大きな笑いが起きます)いろいろ試してみることは大切ですよね。少しずつ変わっていけばいいと思います。
最後に…どの俳優さんも、この困難な状況の中、それぞれに自分の役割を完璧に果たしておられました。多くの人たちの力になったに違いありません。
中でも、特に強く印象に残った二人の俳優さんについて語らせてください。
まず、ボブ役の矢崎広さん。初演からのメンバーですが、残念ながら、私はまだこの方のボブで観たことはないのです。矢崎さんは、この役を非常によく研究していらっしゃる。で、自身の冷静な分析から生まれたボブ像を全力で表現しようとする姿勢と、もう、そういう理屈を超えたところで、役が体に浸み込んでいる状態の、そのブレンド具合が最高な状態になっていますね。本編で観たい。
もう一人は、新しいトミーとして参加していた尾上右近さん。この方をキャスティングしてくださった方に感謝!歌舞伎役者さんらしく、声もよく通り、舞台姿が本当に美しい。OBCのクリスチャン以来の美しいトミーだわ(!)この物語のブロマンス的な側面を思えば、フランキーの恋人のロレインが「トミーと結婚すれば?!」と嫉妬しても納得なトミーの登場、これは本編が楽しみだ!
劇場の完全再開が何時になるのか?まだ先が読めない状態が続いていますが、とにかく、観劇の素晴らしさを人々の記憶から消すことがないように、それぞれの知恵と熱意で最善の道を模索しておられる関係者の皆様、本当にありがとうございます!