満天の星空が見たい!

温泉旅がメインの生活。酒とグルメとミステリ小説、ごくたまに失恋の話。

大阪のふぐは安くておいしい!

2016-10-27 18:56:34 | グルメ


出張で四国の丸亀市からきた若い男に聞いた。「君ところの社長にはいつもお世話に
なってるから、君に何かおいしいものをご馳走しよう。何がいい?」と、聞くと、一
旦考えるふりをしながら、「ふぐ料理…。大阪ではテッチリと言うらしいのですが…以
前から一回食べてみたいと思っていたので」と、おそるおそる返事をした(笑)。「な
るほど、テッチリか。あれはけっこう値段が張るし、高級料理やな…」と、意地悪く言
うと、「あ、す、すみません。なんでもいいです。本当にすみません」と、悲壮な顔
をして彼は頭を下げた。

「冗談、冗談やがな。大阪でテッチリは大衆料理や。よし、ええ店があるから今から行
こう」と、肩を叩くと、「ほ、本当にいいんですか?」と、彼は上気した顔でタクシー
に乗り込んできた。結果は、「世の中にこんなおいしいものがあるんですね。テッサ(ふ
ぐ刺身)を10枚ぐらいすくって食べたのが最高でした」と、店を出た時はエビス顔になっ
ていた。よほどうまかったらしく、「今日は自分的に、食の目覚めになりそうです」と、
大げさに言ったが、悪い気はしなかった。

実はこのふぐ料理、大阪では本当に大衆料理ぽいのである。今は知らないが、全国のふ
ぐの消費量は大阪が60%と言う時期もあった。俺が山口県から大阪に来た当時、先輩が、
「おお、てっちりの本場やないか!」と言ったが、「てっちり?それはなんです」と聞
き返した。

「ふぐ鍋や。山口県の下関が本場らしいやないか。そう聞いてるで」と、言われたが、
「ふぐ?ああ、ふく(山口ではそう呼ぶ)、釣りに行ったら餌取り(草フグ)やし、そんなも
んが旨いんですか?」と聞き返すと、「えっ?ふぐを食べたことがないの?」と先輩。「毒
があるでしょう。そんなもん、誰が食べるんですか」と、俺は本当にそう思った。

まあ、家が貧しいと言うこともあったが、山口県でふぐを食べたことはない。否、そうでは
ない。高級料亭ではいざ知らず、どこの食卓でもふぐが並ぶことはなかった。アフリカ出身
の芸人が、「ライオンやゾウを日本の動物園で初めて見た」という感覚である。大阪でふぐ
文化がこれほど盛んだとは想像もできなかった。

しかし、会社勤めをしていると色々な宴会があり、その中でふぐ屋さんというシーンも普通に
ある。いつの間にか、ふぐ料理は大衆料理として定番化した。今日はぐっと冷え込み、会社の
帰りに思わずてっちりを思い浮かべた。そう、シーズン到来である。今は養殖でもふぐは旨い。
一年中店は営業しているが、この時期から「白子」がメニューに出る。

実は去年、すごく旨いテッチリ屋を見つけたのだ。鍋、テッサ、ふぐ皮、唐揚げ、雑炊といずれ
も文句なし。それでいて、値段は庶民感覚(酒も飲んで七千円ぐらい)である。大阪の高級ふぐ
屋を知っている金満家の友人を連れて行ったら、「ここでええやん!」と、思わず叫んだその店
は、大阪市生野区の「あじ平」である。地下鉄千日前線の北巽駅から徒歩5分、店に着くまでの
この5分がもどかしい。

大阪に来て、ふぐを食べたかったらお薦めです。


馴染みの寿司屋のカウンターはオアシスである!

2016-02-26 22:21:10 | グルメ


俺は、「無駄遣い王」だ。お金を貯めるという認識がなかったし、
「老後を考える」という危機感もなかった。童話のアリとキリギリ
スで言えば、もちろん、キリギリスである。夏場に遊び呆けて、冬
になると家も食べ物もなく、寒さと飢えで死んで行く…。


これは幼少のころ極貧で、お金に苦労したという「反動」だと思って
いる。普通は、お金に苦労したから、お金を大事にし、お金持ちを目
指すと思いがちだが、実際はそうではない。俺の場合は、宵越しのお
金を持たず、贅沢三昧、その日、その日を思い切り楽しむ…という方
向に突き進んで行った。


小学6年の時、お盆に、祖母の親類の人が来て、駅前の食堂に連れて行っ
てもらった。、「なんでも食べてもいいよ」と言われ、そこで選んだメニ
ューが、「ざるそば」だった。ざるそば?なんでざるそば?と思うだろう
が、本当に食べたかったというのもあるが、本音を言うと、他の食べ物を
知らなかったからである。高校を卒業するまで、食堂や、レストランで食
事をした経験はほとんどなかった。


就職して初めて寿司屋に行ったが、昼間のランチで、カウンターではなく、
テーブルで盛り合わせを食べた。その美味しさたるや!「世の中には、こんな
旨いものがあるのか!」と思った。もちろん、刺身は食べたことがあるし、バ
ラ寿司、巻き寿司もお祭りや遠足、運動会などで食べたことはあつた。しかし、
握り寿司は初めてだった(40年前だから)。


さいたま市に住む友人の話は泣けた。田舎(宮城県の地方都市)の両親が東京見物に
来ることになり、なんでも希望を言ってくれと聞くと、「一度でいいから、寿司屋
のカウンターに座り、思う存分寿司を食べてみたい」ということだった。


その友人はしんみりした。「そうか、俺たち兄弟5人を育てるのに、寿司屋も行ってい
なかったのか…」と、思うと、涙が浮かんできたという。もちろん、快諾し、自分の
住まいの近くの、常連にしている寿司屋にその旨を伝えた。


「いいお話ですね。了解いたしました。精一杯、うまい寿司を握らせていただきます」と、
寿司屋の大将が言った。その時は、初めて親孝行ができる…という喜びで一杯だっと言う。

だが、予約した時間に行くと、カウンターは満員で座れなかった。「すみません、急きょ、
お得意さんの予約が入ってしまって…。一応、座敷は開けておりますので、しばらくお待ち
いただけますか?」と、大将は言ったが、「お、お前なあ、うちの両親は宮城から来ている
んだぞ!」と、声を荒げた。


それを見て、両親は、「いいんだよ。美味しそうなお店だし、この席でも構わないよ」と気を
遣ったらしい。でも、友人は我慢できなかった。「いや、これは許すことはできない。あれほ
ど念を押したのに、あれほど両親が楽しみにしていると言ったのに、この店の暖簾は二度とく
ぐらん!」と、両親を連れて外に出た。


それから他の寿司屋に行き、カウンターで一緒に寿司を食べたらしいが、旨さは半減である。
「もちろん、その店は二度と行っていない。ボクは誰にもこの話はしなかったけど、たまたま店
に友人が来ていて、その話が広まったらしい。知り合いもその店に行かなくなって、そのせいだ
けではないだろうが、寿司屋はつぶれたらしいよ」と、言った。


しかし、友人の顔は複雑な表情だった。俺たちが遊びに行くと、いつもその店に招待してくれた。
酒も寿司もうまかった。友人としては、人生のオアシスを一つ失くした気持だったのではないか?


寿司屋のカウンターで旨い酒を飲み、旨い寿司を食べる…今でも一番の贅沢であり、憧れである。



大阪のてっちり(ふぐ)は、安くておいしい!

2016-02-24 23:03:04 | グルメ


最近、静岡の浜松市から月に一度、大阪に出張に来るN嬢。静岡と言えばほぼ関東圏、
最初はナニワ文化に戸惑っていたが、慣れるに従って大阪の魅力に痺れてきたようで
ある。

最初はうどんの出汁。大阪の出汁は薄い…と思っていたらしい。静岡は東京とほぼ同じ
で、醤油黒い。「大阪って、こんなところでも節約してるのね?」と言っていたが、
ずずずって出汁を飲んで、「う、うまい!」と叫んだ。「色はこんなに薄いのに、味に
深みがある」と…。

「ふん、大阪の出汁は、上等の昆布と、上等の鰹節を使ってるんや。自然の旨みがつまっ
ているんやで~」と、俺が言うと、「ほ、本当ですね。これはうまい。癖になる旨さです」
と言って、毎日ランチはきつねうどんや、こぶうどんを食べていた。


夜は食べログなどで評判の店を調べ、たこ焼きや、お好み焼きを食べ歩いていたらしい。
「おでんもおいし~い。うどんと同じで、心地よい出汁が、病みつきになります」と、目
を輝かせていた。

そのN嬢が、「大阪の街を歩いていると、やたらと、「てっちり」の店が目立っていますね」
と言う。「そうや、大阪は全国の70%くらいフグを消費してるんや」、「え~、大阪の皆さん
はそんなお金持ちなんですか?」と、言うから、「あほ、大阪のモットーは安くてうまい、こ
れが最大の売りや。でも、本当にうまいもんなら、金は惜しまんよ!」と、俺は得意げに一席
ぶった。

「N嬢さんはてっちりが好きなんか?」と、聞くと、「それは好きですけど、静岡では高級品だし、
あまり食べたことがないんです」と、苦笑い。「実は俺もフグの本場と言われている山口県の出
身やけど、山口に住んでいたころは一度もフグを食べたことがなかったんや」と、頭を掻いた。


「でも、大阪に住むと、年に何回かは食べる機会ができる。宴会とか、飲み会とかで」と言うと、
「じゃあ、Мさん、おいしいお店を知っていますよね」と言うから、「うん、もちろん知ってるよ。
じゃあ、次の出張の時に食べに行こう。安くてうまいふぐ屋さんがあるんや」と、約束した。その
店は、要予約の店だったから…。

そして訪れた生野区にある「あじ平」というふぐ専門店。食べログにも登録されている人気店だが、
コースはなくて、単品を頼む。たとえば、フグちり2500円、てっさ(ふぐ刺身)1000円、湯引き(フ
グ皮)500円、白子1500円と言う具合にである。

友人二人を紹介しても彼女は上の空だった。いつもぺちゃくちゃ喋るのに、その夜は無口で、無表情だ
った。「何?ふぐを食べるから緊張してるんか?」と言っても反応がなかった。やがて料理が来ると、
彼女は黙々とてっさ(刺身)を食べ、鍋をつつき、その合間にウーロン茶を飲んだ。その顔を見れば、
言葉は要らなかった。終始、にこにこしていたのだ。人間、旨いもんを食べると、自然に顔がほこ
ろぶ。

最後に絶品の「雑炊」を食べた。この店の雑炊は今まで食べたことがないほど美味しいのだ。「うわ~お、
美味しい!」と、N嬢は至福の表情を見せた。そして完食!両手を合わせて、「ごちそうさまでした」と、
言い、ニコッと微笑んだ。

「食べ過ぎて、私がフグになっちゃいました」と、N嬢は初めてジョークを言い、友人たちも笑った。
俺は、「うん、君も完全に関西の乗りになってきたな」と、Vサインを送った。人生、何が楽しいかと
言うと、やっぱり旨いものを食べている時だなと改めて思った。


ふぐ料理専門店 「あじ平」06-6754-4669、地下鉄千日前線、「北巽」から徒歩5分、本当に安くてうまいお店です。お薦め。

牡蠣を一年中食べたい!

2016-02-05 19:31:34 | グルメ


ほとんど毎日酒を飲んでいる。温泉旅行の時は、特に昼飲みがサイコ
ーである。旅をした時のランチは蕎麦屋に入ることが多い。蕎麦と、
蕎麦汁は、ビール、日本酒とサイコーの相性なのだ。この快感を求め
て、旅をすることが多い。


今も酒を飲みながらこの文章を書いているのだけど、本日の肴は牡蠣酢
と、ベーコン、ジャガイモのグラタン(スーパー)、玉ねぎ、トマトのサ
ラダである。牡蠣は、兵庫県の坂越産の牡蠣で、生食用2袋を買った。
俺は無類の牡蠣好きで、居酒屋に入ったら、すぐに牡蠣のメニューを探
す。そこで、牡蠣酢(生牡蠣)がなかったら、テンションが下がる。


牡蠣はもろ刃の剣である。痛んでいれば中毒症状を起こす。これで敬遠
する人が多い。後輩3人が広島の居酒屋で牡蠣を食べ、2~3日のたうち回
ったのを見たが、顔面蒼白、上から下から吐いて、まったく仕事にならな
かった。別に広島だからということではない。たまたま、その店がヤバか
ったのだと思うが、「本場だから大丈夫…」と思ったのも否めない。


要はその店の仕様である。食べたのは牡蠣フライだったそうだが、熱して
も当たったのだから、よほど日にちの経った牡蠣だったのだ。先に書いた、
生牡蠣がなければテンションが下がるというのは、要するにその店の営業
意欲を見たかったわけで、毎日生牡蠣があれば、他のメニューも新鮮…と
判断している。もちろん、生牡蠣を食べたいのが一番ではあるけど…。


でも、長年牡蠣を食べているけど、食あたりになったことはない。以前、
何も知らずに、スーパーで買った牡蠣を洗わず、そのまま食べていたが、
その時も無反応だった。これは体質かな?と思ったりしたが、たまたま
運が良かったのだろう。


いつも「生食用」を買っているせいかも知れない。生食用と、加熱用の
区別は、陸からより遠く離れている方が生食用らしい。牡蠣は、川から
流れ出るプランクトンを餌にしている。だから沿岸近くの牡蠣は餌が豊
富で、身も大きくなる。ただ、雑菌も多く、加熱用になるのだ。


もうすぐ牡蠣のシーズンが終わる。しかし、最近は一年中牡蠣を食べさ
せてくれる店も多く、特に夏の岩牡蠣は絶品である。白ワインと、岩牡
蠣…今からこれを味わうシーンを想像して、ニヤリとしている。