小話

様々な会社の重役たちが集まる場での話だ。


「今のままの集団主義的な考えが生活の根本に据えられている日本では、これからの発展なんてありえない、と私は思うんですよね。」

「私も同意見です。もっとほかの経済大国のように個人主義的な考えを持たなくては。」

「私もそう思います。集団で動くことも大事ですが、個人の義務と責任にもっと重きを置くべきですな。」

「気が合いますね。どうです、これからここにいる私たちで日本を個人主義的な国にするために共に働きかけていきませんか。」

「いいですね。集団主義が大事な今の日本において一人で動くということはあまりに無力だ。」

「たしかに。」

「そうだ、これからみんなで親睦会もかねてお酒でも片手に簡単にこれからの方針でもたてますか。」

「おぉ。それは名案ですな。ぜひ行きましょう。結団式だ。」

「お酒、いいですねー。」

「結団式を兼ねるというのもまたおもしろい。」

「行きましょう。」

「行きましょう。」

「私はちょっと遠慮させてもらいます。」

「え、それまた何故です。」

「私はあまりお酒に強くないので。お酒の席の空気も好きじゃありませんし。」

「なんと。せっかくみんな行くんです、行きましょうよ。」

「いやぁ・・・」

「ここで来ないというのも場の空気を損ねてしまいますよ。」

「すみません。やはり遠慮させてもらいます。」

「そうですか。みんな来るのに・・・。あなたがそんな勝手な態度ではこれからの私たちの活動に支障をきたしてしまう。申し訳ありませんが、あなたに私たちの活動に参加してもらうことは難しいと判断せざるを得ませんな。」

「つまり、私は仲間に入れてもらえないと？」

「直接的に言うとそういうことになります。」

「そうですか。それはとても残念です。せっかく皆さんと一緒に個人主義的考えを軸にした国を作っていけるかもと思っていたのに・・・。」




　日本が過度な集団主義から脱却できる日は遠そうだ。

私は彼らが揃って居酒屋へ向かうのを見送りながら思った。