評価4
再読(前回:学生時代)
学生時代に読んで、痛く感動した覚えがあってウン十年ぶりの再読(笑)。
渡辺淳一の作品は札幌医大の和田心臓移植事件を題材にした「小説・心臓移植」以来「無影燈」本作「花埋み」など(他は忘れた・・・)を読んでいたので、ずっ~と社会派作家だとばかり思っていたのですが、知らない間に官能(恋愛?)小説作家になっていてビックリした記憶があります。なんで、あ~なってしまわれたのでしょう!?
さて、本作ですが、明治期に日本での女医第一号となった荻野吟子の伝記小説。
19歳にして夫から業病(淋病)をうつされて絶望の淵に立たされながらも同じ境遇の女性を救うべく世間の偏見をものともせず医学を志した女性の生涯を綴った元整形外科医師である著者による物語。
前半は22歳で埼玉の熊谷から上京した吟子が東京女子師範(今のお茶の水女子大)に1期生3として入学し、34歳で官公認の医術開業試験に女性第一号で合格し医院を開業、女性の社会運動に参加するまで。ここまでは飛ぶ鳥を落とす勢いで明るい未来が予想されたのですが・・・
しかし・・・
このように産婦人科医院を開業し社会的地位も名声も得ていた吟子でしたが、39歳の時に13歳年下の志方之善と周囲の反対を押し切って結婚してしまいます。キリスト教の布教のため北海道開拓に走った志方の許へ4年後に赴きともに苦労を重ねますが、夫の布教の思いは挫折し吟子は北海道の地で婦人科・小児科医院を開業せざるを得なくなり、8年後に夫が病であの世に旅立ってしまいます。吟子も7年後に生涯を終えるのでした。
荻野吟子先生が志方之善と会っていなかったら、この先、どんな人生が待っていたのだろう?と思わずにはいられません。日本にとっても大きな損失ではなかったのではないでしょうか!?
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