前回の「デイリー新潮」の記事では、インフルエンザの感染者数と死者数、コロナのそれらを比較しているが、科学的に比較検討するには、あまりに部分論すぎる。実はそれぞれの感染者数と死者数のカウントの方法が違うという問題もある。
以下の論文を参照すると、以下のようなことが理解できる。
Assessment of Deaths From COVID-19 and From Seasonal Influenza Jeremy Samuel Faust, MD, MS1; Carlos del Rio,MD
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2766121より
この論文から理解できることは、インフルエンザの方は推定値であることだ。これはCDC(米国の疾病対策センター)によるが、コロナの方が実数になる。死者数では、インフルエンザが直接の原因ではないものも含まれる。直接の原因ではないというのが何を意味するのかは、論文上わからなかったが、例えば、インフルエンザで免疫力低下で細菌感染しての死亡などがあるだろうか。
ちなみにインフルエンザでの死亡実数は毎年3,448〜15,620人である。6年間での数字である。当時は新型コロナは存在しないので比較できないが、2020年4月のある1週間で15,455人の死亡。これは死亡者が多かった時期のものだ。あえて比較すると、米国でインフルエンザ大流行の時のその6年間のある1週間で752.4人である。コロナが約20倍である。
ちなみにこの20倍という数字もまた推定中の推定になるから、かなりコロナの方が死亡率は高いという程度は言えるということになる。
この論文では2つの知見が提示されている。
1つは異なる疾患のデータを比較検討するには、全く同じ方法でデータを集めなければならい。これを誤って一般の人や政府が利用すると公衆衛生上大きな問題を引き起こす。
さて、「デイリー新潮」の記事では、この統計データの”質”の違いに気づいてさえいない。またテレビや新聞、ネットでも同様のことが起きているかもしれないとなるだろう。実際に専門家としてメディアに登場する人物はどうだろう。問題があるのはいうまでもない。
2つ目に、新型コロナは新しいインフルエンザという程度の認識は間違いである。
これはアメリカの分析ではあるが、日本に適応して考えてみることはできるだろう。だからこそ、専門家がこのような難解な科学的事実を僕たち一般の人々にもわかりやすく解説しなければならないのだ。そこに政治的意図など入り込む余地はない。残念ながら、そのような科学者は数人しか頭に思い浮かばない。
いや、それだけではない。別に科学リテラシーなんて大そうな知識がなくても、常識で理解できることがある。新型コロナで武漢は閉鎖された。欧米でもロックダウンがある。日本では緊急事態宣言、医療崩壊、毎日コロナの情報が流される。明らかにインフルエンザとは違う。たったこれだけで、こんな大枠で見ただけで違いが理解できるではないか。
科学的知見にもとづいているように見えながら、実に科学的ではないことは非常に多い。疑似科学や陰謀論はすぐそばにあるものだ。