アジアの指導者の中で、第一世代とも言うべき人物に、私のような若造がお会いしてお話を伺えるのは、光栄なことです。
移民政策、エネルギー、教育からITまであらゆるテーマについて、経験に基づいた持論を明瞭に展開されたのには、驚愕しました。
私には、政策以外で聞いてみたいことが二つありました。
一つは、日本の政治家の中で評価しているのは誰か?
佐藤栄作総理の名前が挙がりました。日米同盟の元で、わが国が進むべき方向を示した指導力に対する評価です。
東南アジアの大国のはざまで、小国・シンガポールを独立・発展させ、今後も中国、インドの経済成長を梃子に発展を模索するリー・クアンユー氏。国の大きな舵取りこそ、政治家の最大の役割ということなのでしょう。
もう一つは、日本社会の現状に対する評価。
リー・クアンユー氏の口をついて出たのは、「過去にとらわれず変らなければならない」というものでした。わが国の教育制度、人事制度などは、制度疲労を起こしているとの指摘がありました。
GDPの3倍もの輸出と、東南アジアのビジネスの拠点として、発展を遂げるシンガポールから見ると、日本は閉ざされた国です。その一方で、わが国には優れた産業基盤が確立しています。EPAの推進や、トップセールスを通じたインフラ輸出など、国を開くことこそ、新たな成長の源泉です。
驚いたのは、リー・クアンユー氏が86歳にして、実によく食べられることです。我々と同じ料理をモリモリと平らげておられました。そう言えば、中曽根康弘元総理や渡辺恒三先生など、生命力のある政治家は、皆さんよく食べられます。やはり、生命力が違います。
いろいろな面で、実に味わい深い懇談でした。