手荷物検査を受ける前、乗務員のグループが前に並んでいたのだが、何やら連絡が入ったようで、全員踵を返して戻っていった。最初に客室乗務員、最後には機長さん達もが戻っていった。
何も知らない私達は、それでもそのまま手荷物検査を受けるため、列にいた。
私の番が回ってきた。
またうっかりしたことに、空港で買った小さなシャンパンの瓶を手荷物バッグに入れてしまっていた。
もちろん、ブザーが鳴り、「こちらへ」と。
こういう時、男性の係員だと、心の中で「ラッキー」と思うのだが、案の定、彼は「これだよ。外に出しておかないとね。」と笑い、「小さい瓶は割高だよ。」とか、「空港で買うと高いんだよ。スーパーで買えばよかったのに。」とか言ってくる。
「わかってるんだけど、スーツケースにいれるのは重量オーバーで無理だったから空港で買ったのよ」と答え、笑いあう。
こういうやり取りができる空港職員がいる余裕が、「ああ、フランスって、フランス人ていいなあ」と思う理由の一つだ。
そして無事通過して、飛行機を待っていた。もう30分前なのに、案内が出ない。
「おかしいね」と、空港で出会ったカップルと話していた。
「何かあったのかしらね」と。
「さっきクルーが引き返したのよ。不思議ね」と私も言っていたら、20分前になってアナウンスがあった。「落雷のため、キャンセル」と。
えー!!!!!落雷って、雷なんかなってないよ、と思いながら。
どうするの!!!!???
係員に、そのまま来た道に向かって戻って行けと言われ、「手荷物検査はどうなるの?」と思いつつ、戻って行った。
手荷物検査のところには、またさっきの係員がいて、「どうしたの?」と、「キャンセルになったの」というと、「えー!?それはかわいそうに。でもまた明日ね」と。
明日はきっとこの係員はいないであろうに、そんなことを言う係員の笑顔に緊張感が緩む。
そして、どんどん戻り、スーツケースを預けたところまで戻ったら、スーツケースを受け取り、指示されたホテルへバスで行くという。
この時はANAを使っていたので、指示が日本語で言ってもらえるため、逆に私がフランス人のカップルに伝えた。
私たちが乗る飛行機は羽田を発った時に落雷を受けたので、無事パリに到着はしたが、安全のため点検をしなければならず、チェックに時間がかかるとのことだった。
(後の話では、樹木希林さんがカンヌ映画祭へ行くためにその飛行機に羽田から乗っていたとか)
機体の点検はANAでは出来ず、その飛行機のメーカーがするので、簡単には行かないらしい。
大きな送迎バスにスーツケースが投げ込まれ、与えられたホテルの、マリオットホテルへと向かう。
この時私は、「ラッキー。もう一日滞在が増える」と思った。帰国日に余裕を持っていたからだ。
でも次の便がいつ出発するか、この時点ではわからないので、できるだけホテル近郊から出ないようにとのことだった。
フランス人で車の手配ができる人は自宅に帰る人もいた。
私も明日パリで誰かひまな人がいたら、「おいで」と言ってくれないかなと甘い考えを持っていたが、残念ながら、何人かに帰国便がキャンセルになったメールを送ったけれど「あら― 残念だったね!」という返事ばかりだった。
多分まだパリに思いを残していたのは、全乗客の内でもただ1人私だけだったに違いない。
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