能登半島地震の経験を『新聞』で表現…被災した美大生が卒業制作で伝える「カオスな部分 見えない部分」 (2025年2月24日)
金沢美術工芸大学の学生がこれまでの学びの成果を発表する卒業制作展が金沢市内で行われています。能登半島地震の経験をもとにした作品を展示する大学生の思いを取材しました。 金沢21世紀美術館で23日から始まった金沢美術工芸大学の卒業制作展。油絵や彫刻、製品デザインなどを学んだ学生たちの集大成が展示されています。こちらの作品はなんと新聞です。誰でもその場で読むことができます。題材となっているのは… 制作した坂口歩さん: 津波が来て、音がすごくてその時に記憶に残った光景を表現しています 能登半島地震で被災した経験です。 坂口さん: 地元が能登町の白丸というところなんですけど実家が津波にあってニュースとか新聞では書かれていない葛藤とか気持ちとかがたくさんあるなと思ってそれをまとめた新聞を作ることにしました 新聞では地震から1カ月の間の坂口さんの感情がグラフやイラストを使って表現されています。避難所で生活しながらも何度も発生する地震やたくさんのデマに気持ちの整理がつかなかったこと。金沢に戻ってお風呂に入った時、避難所にいる人たちを思って複雑な気持ちになったことも。 坂口さん: 避難所は顔見知りの関係なんですけどみんな余裕がなくなってきたりするので、ちょっとバチバチしたりとかちょっと怖かったりとか人間関係だったり衛生面だったりすごくカオスな部分見えない部分がたくさんある。そういう部分を伝えられたらいいな 能登町白丸にある実家は公費解体することになった坂口さん。実家の柱や衣類を収納する長持は新聞が置かれるテーブルやイスに生まれ変わりました。 新聞を読んだ人: 迫ってくるものがあるなかなか心理的なものってニュースで伝えられないのでじっくり読んでみたい 坂口さん: もっとリアルな感情を知ってほしいというかどうしてもセンシティブな内容でみんな触れられないと感じているかもしれないけど、気軽に話せて、能登についてもっとみんなに考えてもらえたらうれしい 坂口さんの作品が展示されている卒業制作展は3月1日まで金沢21世紀美術館で開かれています。坂口さんの感情を表現したイラストは被災の後、避難所での生活などをリアルタイムで描いてSNSで発信していたものです。このほか、新聞には家の公費解体を決めた両親や珠洲市で自宅を再建している住民を坂口さんが取材した記事も載っています。坂口さんは大学卒業後、東京で就職する予定ですが、これからも年1回、「新聞」を発行し、能登と自分をつながりを持ち続けたいと話していました。