アルフィンの入院中、二人は結婚し、夫婦になった。
結婚指輪も結婚式もお披露目パーティーも新婚旅行も、華やかなものは何ひとつない、紙切れ一枚だけの結婚だった。
一カ月後、アルフィンは退院し、ミネルバに戻った。
「久しぶりにアルフィンの手料理が食いてえなあ」
タロスとリッキーは、事故の前と全く変わらぬ態度で彼女を出迎えた。変に気を遣うわけではなく、無理して平静を装うでもない彼らの自然さが何より有難く、そして嬉しかった。
ミネルバは、ジョウの指示で完全にバリアフリーにリフォームされていた。ブリッジでさえ車椅子で移動できるように隅々まで改造が施された。
ジョウはアルフィンを籠の中の鳥として囲っておこうなどとは全く考えていなかった。以前のまま、彼女を立体表示スクリーンに着かせた。有事のとき、前のように自分とともにファイターに乗って外に飛び出していくことはもうかなわない。でも彼女のナビゲイトは今やクラッシャーの世界で右に出る者がいないほど抜きん出ており、チームになくてはならないものだと説得した。アルフィン以外の航宙士をミネルバに入れることは、端から頭になかった。
アルフィンはミネルバでの生活が軌道に乗っていくにつれ、次第に笑顔を取り戻していった。声を上げて笑うことが多くなった。タロスとリッキーとじゃれる回数が増えた。そんな彼女を見ていることが、ジョウの何よりの喜びだった。
どうか、アルフィンがいつも笑顔で安らかであるように。
それだけが、彼の願いだった。
でも、チームメイトもジョウもアルフィンがハンディキャップだということを忘れかけた頃。唐突に、ほんとうに何の前触れもなく、アルフィンが精神的な危うさを見せることがあった。
事故のことを思い出すのか、あるいはそれ以上の悪夢でも見るのか、夜中悲鳴を上げて飛び起きたり、何気ない会話の中でふと涙を零して周りをびっくりさせたりした。
自分でも何が原因かはっきり分かっていないようで、それがいっそうアルフィンを不安にさせていた。気持ちをコントロールできないのだと、表情を曇らせた。
そんなアルフィンを見ていると、彼女が事故によって負ったものは、自分には計り知れないほど大きいのかもしれないとジョウは痛感した。笑顔の陰で涙を幾つも飲みんでいるのだろう。自分が気づいていないだけで、あれこれ不自由な思いや気が滅入るような思いを味わっているのかもしれない。
ふとしたこと、ほんのささいなことがきっかけで、またアルフィンの中に決壊ができそうな予感。再び自分を壊してしまいかねない脆さが垣間見え、ジョウは震撼した。一見健やかに見えても、不穏なよどみのようなものを彼女の目の奥に認めずにはいられなかった。
アルフィンを支えたい。心からそう思う。
でも自分には、アルフィンの繊細さをすべて把握するのは難しい。色々手を差し伸べてやれたらと思うがうまくいかない。
だから今夜だってこんな風にアルフィンを塞ぎ込ませてしまう。
ふがいない。
ジョウは、【ブルーレディ】に目をやったきり、自分を見ようとしないアルフィンに向き直る。
「もう聞き飽きていると思うけど、何度でも言う。
君と出逢ったこと、君と一緒になったこと、俺は全く後悔していない。たとえそれが脅迫まがいの結果だったとしても、俺は満足している」
ほんの少しだけ自嘲気味の笑みが浮かぶ。
アルフィンはジョウに目を移した。
「君はそう思ってくれないのか、アルフィン。俺と出逢ったことを後悔してるのか?」
アルフィンの目に涙の膜がうっすらと張られているのをジョウは認める。
美しい瞳。16の頃と何も変わらない。
穢れなき青。ジョウの中でガラスケースの中に佇む【ブルーレディ】とアルフィンの姿がだぶる。
ああそうだ。確かに君はこの花に似ている。
クライアントの言葉を思い出す。この花は母国の魂。高潔な魂と誇りの高さを、この未明の東の空のような青を湛える小さな花が背負っている。
アルフィンと同じだ。純真すぎて、小器用に生きられない。ちいさなことでも誤魔化しがきかない。行く手に待ち構えるあなぼこに必ず足を取られてつまづく。そのたびに傷を負う。同じところで思い悩む。
いくつも涙を生み、頬を濡らす。その繰り返しだ。
不器用に、でも何物にも曲げられずまっすぐにしか歩いていけない。
そんな君にぴったりの花だ、この【ブルーレディ】は。
それを自分たちのチームが運ぶ役目を仰せつかるとは、縁って不思議だな、と彼はしみじみ感じ入った。
「……あたしが後悔なんて、するはずないじゃない」
今にも透明な滴をまつげの先から落っことしそうな表情で、アルフィンが声を震わす。
「あたしはあたしがこんなんで、あなたに悪いと思って、だから」
「アルフィン」
ジョウが強引に遮る。と、アルフィンはぴたりと口を噤む。
「それ以上言わなくていい。分かってる。俺には無理しなくていい。
わざと突っかかって爪を立てなくていい。反応を試すな。俺には君しかいないんだから、今までも、これからも」
「……」
アルフィンは下唇を噛む。
ああこの人は、本当にあたしを丸裸にしてしまう。取り繕えない。
拗ねていじけて八つ当たりして、距離感を取ろうと必死なあたしを見透かしてる。
悔しい。…悔しくて涙が出るほど嬉しい。
この人があたしの夫だなんて。パートナーだなんて。こんな幸せなことがあってもいいの?
アルフィンの表情を読んだように、ジョウがふっと笑みを蓄える。
「そんな顔するのもよせ。笑って。俺たちが出逢わなければなんて仮定の話をするのはやめよう。
だって、俺たちは出逢ってしまったんだ」
魂を求め合うように、奇跡のように俺たちはあのとき出逢い、そして恋に落ちた。俺は運命は信じないが、人と人とのあいだの引力は信じる。誰よりも強く。
君が、自分はここでしか咲けない花だと、ミネルバを降りたら価値がないと嘆くならそれもいい。
降りる必要がないのだから。
俺の側でいつまでも美しく咲いていてくれ。一生。俺と一緒の船に乗って、俺と同じ景色を見てくれ。死ぬまで、俺と同じ時間を過ごしてくれ。
アルフィン、君の弱さも、君の強さと同じだけ、等しく大切にしていきたい。
愛しているよ。
ジョウは夜、寝室に向かうとき、いつもそうしているように、アルフィンを車椅子から抱き上げた。恭しく、丁重な手つきで。
「もう遅い。休もう。出発は、明日だ」
「ん………」
アルフィンは抵抗せずに、ジョウに身体を預ける。
安心する。一日のうちで、彼女が一番好きな瞬間だった。
「なあ、眠る前に言っておきたいことがあるんだが」
? と、アルフィンがジョウの首に回した手を緩め、顔を覗き込んだ。
ジョウは神妙な顔つきで切り出した。歯切れ悪く。
「今の仕事 【ブルーレディ】を運んだら……無事に輸送し終わったらの話、だけどさ」
「なあに?」
「……結婚式をしようか。今更だけど」
アルフィンの目が見開かれる。口も半開きだ。
虚を突かれ、ぼかんと彼を見つめる。
「結婚式って、……あたしたちの?」
「決まってるだろ。他の誰のをやるっていうんだ」
ジョウはわずかに赤くなった。
「きちんと指輪を買って、君はウエディングドレスを着て、どこかの教会で式を挙げよう。タロスやリッキーだけじゃなく、ちゃんとクラッシャー仲間を招待して正式にやろう」
「どうして急に? 今まで一度も言い出さなかったのに、なんで?」
う、と一瞬ジョウは詰まったが、ありのままに打ち明けた。
「プロポーズが脅迫だなんて君に思われてるとは思わなかった。って言ったら笑うか」
アルフィンは笑いはしなかったが、目を瞠った。
「やだ、気にしてたの」
「当たり前だ。結構、ショックだった。
君の結婚の思い出があれだなんて、あれだけなんて、やっぱりよくないだろ」
「……そんなこと、ないよ」
アルフィンはまた鼻の奥がつんとしてきたので、ジョウの肩に顔をうずめて彼に見えないようにした。
あんなに嬉しいプロポーズの言葉をもらった女は、きっとこの広い宇宙でも数える程度だと思うわよ。
そう思ったが、照れくさくて口にしなかった。
「嬉しいわ。実は憧れてたの。結婚式。でも、車椅子にウエディングドレスって似合うかしら」
「君は何を着ても似合うから平気だ」
「……微妙に心がこもってない気がするけど、まあいいわ。有難く受け取っとく。
でもホントにいいのね? あたしがやるからにはお式は派手に、華やかにやるわよ。一生に一度のことだもの。それにあたしがドレスを着るなら、あなただってタキシードを着るのよ。ジョウ」
「え。いや、それは」
「当然でしょ。ジョウのタキシード姿って見たことないから、楽しみだわ」
「俺は別に着なくても……君だけで」
「だめよ。あたしだけじゃ様にならないわ。大丈夫よ。あなたは何を着ても似合う人だから」
「コイツ」
アルフィンは手荒に扱われ声を上げた。きつくジョウにしがみつく。
二人の笑い声が遠のく。ジョウの律動的な足音ともに。
彼らの背後で自動ドアが閉まろうとした。そのとき、ケースに収められた【ブルーレディ】がかすかに震えた。生まれた故郷の風に花弁を揺らすように、気持ちよさげにほんのわずか、その身を震わせたように見えた。
まるで堪えきれず笑みを零してしまった婦人のように。ここにしか咲かない花は、船の片隅で二人の未来をひっそりと祝福していた。
Fin.
昔に書いた連載です。
ジョウがどれだけいい男かを書きたくて、二次をずっと書いている気がします。笑
彼の誕生日の前に。
結婚指輪も結婚式もお披露目パーティーも新婚旅行も、華やかなものは何ひとつない、紙切れ一枚だけの結婚だった。
一カ月後、アルフィンは退院し、ミネルバに戻った。
「久しぶりにアルフィンの手料理が食いてえなあ」
タロスとリッキーは、事故の前と全く変わらぬ態度で彼女を出迎えた。変に気を遣うわけではなく、無理して平静を装うでもない彼らの自然さが何より有難く、そして嬉しかった。
ミネルバは、ジョウの指示で完全にバリアフリーにリフォームされていた。ブリッジでさえ車椅子で移動できるように隅々まで改造が施された。
ジョウはアルフィンを籠の中の鳥として囲っておこうなどとは全く考えていなかった。以前のまま、彼女を立体表示スクリーンに着かせた。有事のとき、前のように自分とともにファイターに乗って外に飛び出していくことはもうかなわない。でも彼女のナビゲイトは今やクラッシャーの世界で右に出る者がいないほど抜きん出ており、チームになくてはならないものだと説得した。アルフィン以外の航宙士をミネルバに入れることは、端から頭になかった。
アルフィンはミネルバでの生活が軌道に乗っていくにつれ、次第に笑顔を取り戻していった。声を上げて笑うことが多くなった。タロスとリッキーとじゃれる回数が増えた。そんな彼女を見ていることが、ジョウの何よりの喜びだった。
どうか、アルフィンがいつも笑顔で安らかであるように。
それだけが、彼の願いだった。
でも、チームメイトもジョウもアルフィンがハンディキャップだということを忘れかけた頃。唐突に、ほんとうに何の前触れもなく、アルフィンが精神的な危うさを見せることがあった。
事故のことを思い出すのか、あるいはそれ以上の悪夢でも見るのか、夜中悲鳴を上げて飛び起きたり、何気ない会話の中でふと涙を零して周りをびっくりさせたりした。
自分でも何が原因かはっきり分かっていないようで、それがいっそうアルフィンを不安にさせていた。気持ちをコントロールできないのだと、表情を曇らせた。
そんなアルフィンを見ていると、彼女が事故によって負ったものは、自分には計り知れないほど大きいのかもしれないとジョウは痛感した。笑顔の陰で涙を幾つも飲みんでいるのだろう。自分が気づいていないだけで、あれこれ不自由な思いや気が滅入るような思いを味わっているのかもしれない。
ふとしたこと、ほんのささいなことがきっかけで、またアルフィンの中に決壊ができそうな予感。再び自分を壊してしまいかねない脆さが垣間見え、ジョウは震撼した。一見健やかに見えても、不穏なよどみのようなものを彼女の目の奥に認めずにはいられなかった。
アルフィンを支えたい。心からそう思う。
でも自分には、アルフィンの繊細さをすべて把握するのは難しい。色々手を差し伸べてやれたらと思うがうまくいかない。
だから今夜だってこんな風にアルフィンを塞ぎ込ませてしまう。
ふがいない。
ジョウは、【ブルーレディ】に目をやったきり、自分を見ようとしないアルフィンに向き直る。
「もう聞き飽きていると思うけど、何度でも言う。
君と出逢ったこと、君と一緒になったこと、俺は全く後悔していない。たとえそれが脅迫まがいの結果だったとしても、俺は満足している」
ほんの少しだけ自嘲気味の笑みが浮かぶ。
アルフィンはジョウに目を移した。
「君はそう思ってくれないのか、アルフィン。俺と出逢ったことを後悔してるのか?」
アルフィンの目に涙の膜がうっすらと張られているのをジョウは認める。
美しい瞳。16の頃と何も変わらない。
穢れなき青。ジョウの中でガラスケースの中に佇む【ブルーレディ】とアルフィンの姿がだぶる。
ああそうだ。確かに君はこの花に似ている。
クライアントの言葉を思い出す。この花は母国の魂。高潔な魂と誇りの高さを、この未明の東の空のような青を湛える小さな花が背負っている。
アルフィンと同じだ。純真すぎて、小器用に生きられない。ちいさなことでも誤魔化しがきかない。行く手に待ち構えるあなぼこに必ず足を取られてつまづく。そのたびに傷を負う。同じところで思い悩む。
いくつも涙を生み、頬を濡らす。その繰り返しだ。
不器用に、でも何物にも曲げられずまっすぐにしか歩いていけない。
そんな君にぴったりの花だ、この【ブルーレディ】は。
それを自分たちのチームが運ぶ役目を仰せつかるとは、縁って不思議だな、と彼はしみじみ感じ入った。
「……あたしが後悔なんて、するはずないじゃない」
今にも透明な滴をまつげの先から落っことしそうな表情で、アルフィンが声を震わす。
「あたしはあたしがこんなんで、あなたに悪いと思って、だから」
「アルフィン」
ジョウが強引に遮る。と、アルフィンはぴたりと口を噤む。
「それ以上言わなくていい。分かってる。俺には無理しなくていい。
わざと突っかかって爪を立てなくていい。反応を試すな。俺には君しかいないんだから、今までも、これからも」
「……」
アルフィンは下唇を噛む。
ああこの人は、本当にあたしを丸裸にしてしまう。取り繕えない。
拗ねていじけて八つ当たりして、距離感を取ろうと必死なあたしを見透かしてる。
悔しい。…悔しくて涙が出るほど嬉しい。
この人があたしの夫だなんて。パートナーだなんて。こんな幸せなことがあってもいいの?
アルフィンの表情を読んだように、ジョウがふっと笑みを蓄える。
「そんな顔するのもよせ。笑って。俺たちが出逢わなければなんて仮定の話をするのはやめよう。
だって、俺たちは出逢ってしまったんだ」
魂を求め合うように、奇跡のように俺たちはあのとき出逢い、そして恋に落ちた。俺は運命は信じないが、人と人とのあいだの引力は信じる。誰よりも強く。
君が、自分はここでしか咲けない花だと、ミネルバを降りたら価値がないと嘆くならそれもいい。
降りる必要がないのだから。
俺の側でいつまでも美しく咲いていてくれ。一生。俺と一緒の船に乗って、俺と同じ景色を見てくれ。死ぬまで、俺と同じ時間を過ごしてくれ。
アルフィン、君の弱さも、君の強さと同じだけ、等しく大切にしていきたい。
愛しているよ。
ジョウは夜、寝室に向かうとき、いつもそうしているように、アルフィンを車椅子から抱き上げた。恭しく、丁重な手つきで。
「もう遅い。休もう。出発は、明日だ」
「ん………」
アルフィンは抵抗せずに、ジョウに身体を預ける。
安心する。一日のうちで、彼女が一番好きな瞬間だった。
「なあ、眠る前に言っておきたいことがあるんだが」
? と、アルフィンがジョウの首に回した手を緩め、顔を覗き込んだ。
ジョウは神妙な顔つきで切り出した。歯切れ悪く。
「今の仕事 【ブルーレディ】を運んだら……無事に輸送し終わったらの話、だけどさ」
「なあに?」
「……結婚式をしようか。今更だけど」
アルフィンの目が見開かれる。口も半開きだ。
虚を突かれ、ぼかんと彼を見つめる。
「結婚式って、……あたしたちの?」
「決まってるだろ。他の誰のをやるっていうんだ」
ジョウはわずかに赤くなった。
「きちんと指輪を買って、君はウエディングドレスを着て、どこかの教会で式を挙げよう。タロスやリッキーだけじゃなく、ちゃんとクラッシャー仲間を招待して正式にやろう」
「どうして急に? 今まで一度も言い出さなかったのに、なんで?」
う、と一瞬ジョウは詰まったが、ありのままに打ち明けた。
「プロポーズが脅迫だなんて君に思われてるとは思わなかった。って言ったら笑うか」
アルフィンは笑いはしなかったが、目を瞠った。
「やだ、気にしてたの」
「当たり前だ。結構、ショックだった。
君の結婚の思い出があれだなんて、あれだけなんて、やっぱりよくないだろ」
「……そんなこと、ないよ」
アルフィンはまた鼻の奥がつんとしてきたので、ジョウの肩に顔をうずめて彼に見えないようにした。
あんなに嬉しいプロポーズの言葉をもらった女は、きっとこの広い宇宙でも数える程度だと思うわよ。
そう思ったが、照れくさくて口にしなかった。
「嬉しいわ。実は憧れてたの。結婚式。でも、車椅子にウエディングドレスって似合うかしら」
「君は何を着ても似合うから平気だ」
「……微妙に心がこもってない気がするけど、まあいいわ。有難く受け取っとく。
でもホントにいいのね? あたしがやるからにはお式は派手に、華やかにやるわよ。一生に一度のことだもの。それにあたしがドレスを着るなら、あなただってタキシードを着るのよ。ジョウ」
「え。いや、それは」
「当然でしょ。ジョウのタキシード姿って見たことないから、楽しみだわ」
「俺は別に着なくても……君だけで」
「だめよ。あたしだけじゃ様にならないわ。大丈夫よ。あなたは何を着ても似合う人だから」
「コイツ」
アルフィンは手荒に扱われ声を上げた。きつくジョウにしがみつく。
二人の笑い声が遠のく。ジョウの律動的な足音ともに。
彼らの背後で自動ドアが閉まろうとした。そのとき、ケースに収められた【ブルーレディ】がかすかに震えた。生まれた故郷の風に花弁を揺らすように、気持ちよさげにほんのわずか、その身を震わせたように見えた。
まるで堪えきれず笑みを零してしまった婦人のように。ここにしか咲かない花は、船の片隅で二人の未来をひっそりと祝福していた。
Fin.
昔に書いた連載です。
ジョウがどれだけいい男かを書きたくて、二次をずっと書いている気がします。笑
彼の誕生日の前に。
⇒pixiv安達 薫
二人とも素敵な花嫁・花婿姿だよね。
下半身不随でも、子供は作れるみたいだよ。
ガンバレ、ジョウ(笑)