みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1216「模倣犯」

2022-03-14 17:50:23 | ブログ短編

 その事件(じけん)は大きなホテルで発生(はっせい)した。警察(けいさつ)は次々(つぎつぎ)に見つかる被害者(ひがいしゃ)に右往左往(うおうさおう)するばかり――。このホテルに有名(ゆうめい)な推理作家(すいりさっか)が宿泊(しゅくはく)していた。捜査(そうさ)に当たっていた刑事(けいじ)は、その推理作家に捜査協力(きょうりょく)を強引(ごういん)に頼(たの)み込んだ。刑事は事件のあらましを伝(つた)えた。
「一人目の被害者は男性で、服毒自殺(ふくどくじさつ)に見せかけて殺害(さつがい)されていました。二人目は、ベッドで下着姿(したぎすがた)の女性が絞殺(こうさつ)されています。三人目は、ハウスキーピングをしていた女性で、リネン室で刺殺体(しさつたい)として発見(はっけん)されました。犯人(はんにん)はどういう人物(じんぶつ)か推理してみて下さい」
 推理作家は呆(あき)れて言った。「そんなこと分かるわけがない。私は、刑事でも探偵(たんてい)でもないんだ。実際(じっさい)に起きた事件を推理すんなんて、私にできるわけないだろ」
「あなたなら分かるはずです。あなたは、多くの人間(にんげん)を殺(ころ)してるじゃないですか」
「それは小説(しょうせつ)の中の話しだ。私の頭の中で作り上げたものでしかない」
「そうです。答(こた)えはあなたの頭の中にあるはずです。思い出して下さい。ホテルで起きる殺人事件を書いたことがあるのでは?」
 推理作家は考え込んでいたが、何かを思い出したようで、
「そういえば、処女作(しょじょさく)でそんな話しを書いたことが…。確(たし)か、推理作家を登場(とうじょう)させて…」
「そうです。その作品(さくひん)です。犯人はどんな人物だったのですか?」
「もう何十年も前の作品だ。はっきりは覚(おぼ)えていないよ。確か、偽(にせ)の刑事で――」
「よかった。これで先に進(すす)めます。では、四人目の被害者は誰(だれ)でしたか?」
<つぶやき>四人目の被害者は推理作家だったのかも。作品では犯人は捕(つか)まったのかな?
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