僕(ぼく)には気になっている娘(こ)がいる。その娘(こ)のことがどうやら好(す)きになってしまったようだ。でも、彼女には彼氏(かれし)がいるのか? もしそうなら、告白(こくはく)なんてできない。さり気なく、彼女と親(した)しい同僚(どうりょう)に訊(き)いてみたが、どうもよく分からない。彼女はあまり自分(じぶん)のことを話さないようだ。
そこで、これはいけないことと思いつつ、僕は会社(かいしゃ)を出た彼女をつけてみることにした。今日は金曜日(きんようび)だ。もし、彼氏がいるならデートの約束(やくそく)をしているはずだ。最悪(さいあく)、空振(からぶ)りだとしても、彼女が住(す)んでるところが分かるはずだ。別(べつ)に…、僕はよこしまなことなど考(かんが)えてはいない。彼女のことが知(し)りたいだけだ。
彼女は駅(えき)の方へ向かっているようだ。人通(ひとどお)りが多くなると見失(みうしな)いかねない。僕は彼女との距離(きょり)を縮(ちぢ)めた。彼女が脇道(わきみち)に入った。僕は慌(あわ)てて追(お)いかけた。しかし、脇道に入ってみると彼女はどこにもいない。いったいどこへ消(き)えたのか?
その辺(あた)りにはお店(みせ)などなかった。僕は目の前にある雑居(ざっきょ)ビルのプレートを見た。いくつかある会社名(かいしゃめい)の中に知っているものがあった。それは競合(きょうごう)している会社で、去年(きょねん)からいくつも顧客(こきゃく)を奪(うば)われていた。まさか、こんな近くに支店(してん)があるなんて…。
僕はある考えが頭に浮(う)かんだ。そういえば、顧客が減(へ)り始めたのは彼女が入社(にゅうしゃ)してからだ。まさか、彼女が会社の情報(じょうほう)を流(なが)してたのか? 不意(ふい)に、彼女が僕の腕(うで)を強(つよ)くつかんだ。
「わたしもドジね。あんたにつけられるなんて…。ちょっと来て。話しがあるの」
<つぶやき>これはまずいんじゃないの? いったい彼はどうなってしまうのでしょう。
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