少し時間を戻(もど)して、みんなが襲(おそ)われた日の朝のこと――。
しずくが目を覚(さ)まして起(お)き上がると、涙(なみだ)がひとしずく頬(ほお)をつたってこぼれ落(お)ちた。しずくは夢(ゆめ)をみたのだ。母親の夢…。夢の中で、母親は誰(だれ)かに話しかけていた。何かを選(えら)ばなければいけないと…。何のことなのか、しずくには分からなかった。
突然(とつぜん)、別のイメージが頭に浮(う)かんだ。どこかの山を上空(じょうくう)から俯瞰(ふかん)していた。しずくは、この景色(けしき)をどこかで見たことがある。誰かの声が聞こえた。しずくを呼(よ)んでいるようだ。しずくがそのイメージに集中(しゅうちゅう)すると、あまりの姿(すがた)が浮かび上がった。その顔は、とても苦(くる)しそうだ。助(たす)けを求(もと)めていると、しずくは感じだ。
しずくは手早(てばや)く着替(きが)えをすませると、つくねのところへ向かった。つくねは朝食を食べていた。しずくは普段(ふだん)と変わりなく振(ふ)る舞(ま)った。つくねはそんなしずくを見て、
「昨夜(ゆうべ)、遅(おそ)かったんだから、もう少し寝(ね)ててもいいのよ。今日は、あたしが研究所(けんきゅうしょ)を見張(みは)りに行くから。でも、いつまでこんなことしてるつもり? もう、限界(げんかい)なんだけど…」
しずくは、つくねに向き合うと、「今日は、何か起こるかもしれない。気をつけてて…。先生と協力(きょうりょく)して、みんなを守(まも)ってね。お願(ねが)いよ」
つくねは、真剣(しんけん)な顔つきのしずくを見て思わず、「うん…、分かった」
これが、しずくの最後(さいご)の姿になると、誰が予想(よそう)できただろうか――。
<つぶやき>これから何が起ころうとしているのか…。運命(うんめい)が動き始めようとしています。
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