みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0494「待ちぼうけ」

2019-03-22 18:37:59 | ブログ短編

 彼女は待(ま)っていた。同じように待っている娘(こ)たちが、笑顔で手を振(ふ)り恋人(こいびと)の腕(うで)に飛びつく姿(すがた)を横目(よこめ)で見ながら…。彼女は腕時計(うでどけい)を見て溜息(ためいき)をつく。約束(やくそく)の時間を十分も過ぎていた。
「何で来ないのよ。七時って約束したのに…」
 彼女は携帯(けいたい)を取り出してみたが、彼からのメールも着信(ちゃくしん)も入っていない。彼女は不安(ふあん)になった。もしかして、忘(わす)れてる? デートの日を忘れるなんて…。
 彼女は電話をかけてみた。呼び出し音が鳴(な)る。1回、2回、3回…。彼が出た。何だか賑(にぎ)やかな場所(ばしょ)のようだ。彼の声がよく聞きとれない。――どうやら、どこかの居酒屋(いざかや)のようだ。楽しげな笑(わら)い声が聞こえてきた。彼女はカチンときて言った。
「何やってるのよ。あたし、ずっと待ってるんだからね。どこにいるの?」
 彼は静(しず)かな場所へ移動(いどう)しながら、「えっ? なに? なに怒(おこ)ってんだよ。……デート?…忘れてなんかいないよ。明日だろ? 君が言ったんじゃないか。今日はダメだからって」
 彼女は突然(とつぜん)声をはりあげた。そして慌(あわ)てた感じで、「今日って、な、何日?」
 彼は呆(あき)れた声で、「あっ、また間違(まちが)えただろ? ほんと、そそっかしいんだから」
「そんなんじゃないわよ。ちょっと確(たし)かめただけでしょ。じゃあね。明日、遅(おく)れないでよ」
 彼女は電話を切ると、血相(けっそう)を変えて走り出した。
<つぶやき>スケジュール確認(かくにん)は怠(おこた)らないで。でも、何の用(よう)があったんでしょ。気になる。
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