みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1482「未来人」

2024-12-23 16:38:48 | ブログ短編

 彼は未来(みらい)からやって来た。それも非合法(ひごうほう)なやり方(かた)で…。もし、時空警察(じくうけいさつ)に見つかればただではすまない。ずいぶんとお金(かね)がかかったが致(いた)し方ない。彼には目的(もくてき)があった。それは理想(りそう)の女性(じょせい)と巡(めぐ)り合うこと…。
 彼のいた時代(じだい)は超個人主義(ちょうこじんしゅぎ)が主流(しゅりゅう)だった。誰(だれ)もが自分(じぶん)の意見(いけん)を主張(しゅちょう)し、張(は)り合っていた。それは恋愛関係(れんあいかんけい)にも及(およ)んでいた。どっちが主導権(しゅどうけん)を握(にぎ)るかが重要(じゅうよう)で、愛情(あいじょう)や思いやりなど二の次(つぎ)になってしまった。彼は、そんなことにほとほと嫌気(いやけ)が差(さ)していた。だから、過去(かこ)へ行くことにしたのだ。時代をさかのぼれば謙虚(けんきょ)な女性が必(かなら)ずいるはずだ。
 彼は正(ただ)しかった。この時代へ来てまもなく、彼は理想の女性と出会(であ)うことができた。そして、一緒(いっしょ)に暮(く)らし始めるまでにそれほど時間(じかん)はかからなかった。彼女はいつも優(やさ)しく接(せっ)してくれた。彼のことを気づかって世話(せわ)をやく。彼は彼女との生活(せいかつ)を失(うしな)いたくないと思い始めた。彼女のことを心底(しんそこ)から愛(あい)してしまったのだ。
 だか、そんな幸(しあわ)せも長くは続(つづ)かなかった。ある疑念(ぎねん)が彼を悩(なや)ませたのだ。なぜこんな素晴(すば)らしい女性が自分(じぶん)なんかと一緒にいるのか? 本当(ほんとう)に自分のことを愛しているのか…。もしかしたら、自分は欺(だま)されているのでは…。彼はこの苦(くる)しみから逃(の)れようと彼女に問(と)いただした。すると、彼女は平然(へいぜん)と答(こた)えた。
「あたし、時空警察なんです。あなたを元(もと)の未来へ送還(そうかん)します。――あたし思うんですけど、こんな犯罪(はんざい)を犯(おか)さなくても、あなたを好(す)きになる女性はいたと思いますよ」
<つぶやき>そんなこと言われても…ですよね。でもじっくり周(まわ)りを見回すと、いるかも?
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